『さんまのお笑い向上委員会』の陣内さんは、地球防衛軍のような存在〈徳井健太の菩薩目線 第145回〉

“サイコ”の異名を持つ平成ノブシコブシ・徳井健太が、世の中のあらゆる事象を生温かい目で見通す連載企画「徳井健太の菩薩目線」。第145回目は、「5年後の芸人ランキング」について、独自の梵鐘を鳴らす――。

徳井健太

 深夜のテレビ番組は群雄割拠。

 この春から日テレでは、プラチナイト枠で『午前0時の森』というバラエティが、月曜・火曜に放送されている。火曜の回で、恐れ多くも「芸人考察のプロ」なんて形でお呼びいただき、「5年後の芸人ランキング」を紹介させていただいた。5年後、どんな芸人が人気になっているか――。

 1位は霜降り明星、2位はコウテイ。この2組については、『敗北からの芸人論』でも一方的にラブレターを送りつけているくらいなので、もはや「期待」を越えた「願い」みたいなものがある。

 あまり接点のない2組。それにもかかわらず、どういうわけか彼らに熱を上げてしまう。

 すべての芸人は、「自分たち以外のすべての芸人を叩き潰しててっぺんを目指してやる」――そんな気持ちを抱いてお笑いの門を叩いたと思う。自分たちもそうだった。

 でも、入り口早々から化け物だらけ。ちょっと先に進めたと思ったら、一角獣よろしく、見たことがないようなモンスターとエンカウントする。気が付くと、ほとんどの芸人のてっぺんを取ろうなんて野心は、きれいに削ぎ落とされて、自分のポジションを見つけることに精一杯になる。それでも面白いんだから、芸人たちはたくましい生き物だと思う。

 第7世代。そう謳われ、未来を期待された芸人たちも、やっぱりかつての勢いはなくなって、芸人原野でどう生き残るかを考えているように見える。でも、霜降り明星だけは血気が違う。

 本人たちは否定する。だけど、俺にはてっぺんを取りにいっているように見える。ギラついているけど、バレないように虎視眈々。できることなら、そのままギラついた視線を上げたままでいてほしい。

 コウテイは、近い将来 M-1グランプリを獲ると思う。そうなったら芸能界一周旅行が始まるだろうし、冠番組だって一つや二つじゃないかもしれない。そのとき、霜降りとコウテイが共同戦線を張ったらどうなるんだろうと勝手に妄想する。

コウテイのあのやんちゃな感じ。関西特有の面白さがあると同時に、どこがとんねるずさん感を感じるのは気のせいかな。霜降りとスイングすることで、その面白さが爆発したら。今のテレビに必要な、大きな要素を一つ挙げるなら、「とんねるず感」。彼らは、その感覚を令和ならではの時代感にフィットさせて、テレビが持つ面白さを再発見させてくれるのではないか……なんて期待、いや再び妄想する。

今は、テレビ以外でもたくさん人気やお金を稼げる場所がある。「別にテレビにこだわっていない」。そんな芸人がテレビを気にせず、テレビの枠にとらわれずに暴れたら、失いつつあるテレビの魅力を、結果的に伝える格好になるんじゃないかな。

そして、3位に挙げさせていただいたのが陣内智則さん。すでにスーパー芸人だから、俺ごときが言うのもおこがましいけれど、もっとスパークする予感しかない。

『さんまのお笑い向上委員会』を見ていると、陣内さんはさんまさんに対して「もうええわ!」と全力でつっこむ。みんなが、さんまさんのボケにのったり、踊らされたりするなかで、「もうええわ!」と全力でぶつかりにいくのは陣内さんだけ。あれだけの大声を上げて、さんまさんのボケを止めることができるってどうかしている。怖ろしくて真似なんかできない。毎回、お笑い怪獣を制止する陣内さんは地球防衛軍のような存在だ。

失礼ながら一度、陣内さん本人に聞いたことがある。 「どうしてあんな風につっこめるんですか?」。そう尋ねた俺に対して陣内さんは、「最初の頃は思うようにトークが進まなくて大変だったんだけど、あるときから『もうええ!』って思ったときは『もうええ!』って言おうと決めた」と教えてくれた。

陣内さんは、あの番組で、さんまさんと、収拾がつかなくなった現場を相手に、本当の漫才をやっているんだと思った。ブラマヨさんの漫才で、小杉さんが本気で「もうええ!」っていうあの感覚。陣内さんは、そのエネルギーをお笑い怪獣が暴れる番組相手に解き放っている。

陣内さんが心の底から「もうええわ!」と言うことで、『さんまのお笑い向上委員会』を見ている視聴者全員の気持ちを代弁してかのようなカタルシスが訪れる。あのつっこみは、ウルトラガンと変わらない。スーパーヒーロー。そんなすごいことをやってのけてしまう人なんだよということを伝えたいがあまり、恐縮ではあるものの3位とさせていただきました。

覚悟を持って考えた「5年後の芸人ランキング」。来年もあったらいいなぁ。

【プロフィル】
1980年北海道出身。2000年、東京NSC5期生同期の吉村崇とお笑いコンビ「平成ノブシコブシ」結成。「ピカルの定理」などバラエティ番組を中心に活躍。最近では、バラエティ番組や芸人を愛情たっぷりに「分析」することでも注目を集め、22年2月28日に『敗北からの芸人論』を発売。「もっと世間で評価や称賛を受けるべき人や物」を紹介すべく、YouTubeチャンネル「徳井の考察」も開設している。吉本興業所属。
公式ツイッター:https://twitter.com/nagomigozen 
YouTube:https://www.youtube.com/channel/UC-9P1uMojDoe1QM49wmSGmw