ここだけの話にしてほしい、「〇〇ってどう思いますか?」の対策必勝法!〈徳井健太の菩薩目線 第253回〉

平成ノブシコブシ・徳井健太

“サイコ”の異名を持つ平成ノブシコブシ・徳井健太が、世の中のあらゆる事象を生温かい目で見通す連載企画「徳井健太の菩薩目線」。第254回目は、「〇〇ってどう思いますか?」と聞かれたときの対応について、独自の梵鐘を鳴らす――。

 あまり面識のない人から、「万博ってどう思います? 行きましたか?」と言われたとき、皆さんはどう答えますか?

 閉幕まで残り1ヵ月を切ったことで、駆け込みで万博に行く人が増えているという。4月から開催されているわけだから、まだ行っていない人にはそれなりの理由があるのだと思う。自分はまだ万博に行っていない――。そうした状況下で、冒頭の質問をされたとき、どう答えるのか? 

 例えば、「行ってないです。暑いし、子どもいるので混んでいるのは、う~ん、ちょっと行けないかな」と答えたとする。

 文面でも、乗り気ではないことが分かる。会話ともなれば、より乗り気ではない感じが相手に伝わるに決まっている。

 少し雑談をしていると、質問をした人が万博の関係者だということが分かった。「行っていない」「行く気がない」と返したことで、その人はどこか寂しい表情を浮かべている。

 おそらく多くの人が、「あ、やっちまった」と自責の念に駆られるのではないでしょうか? これはワナだったんだ、と。

 僕にも似たような経験がある。

 やはり面識がさほどない人と話していると、突然、「徳井さんは、公文ってどう思いますか?」と聞かれたことがあった。

 僕は、公文を習ったことがないし、そこまで難しく考えなかったから、「別にお金を払ってまで公文に通いたいとか通わせたいとかはないですね」と何気なく返事をした。

 その人は、子どもを公文に通わせていたらしく、僕の好意的とは言えない返答に顔を曇らしていた。

「〇〇ってどう思いますか?」と聞かれる場合、おそらく質問した人は、肯定的な意見を待っていることがかなりの確率で高い。よくよく考えると、「〇〇ってどう思いますか?」は、かなり様子をうかがっている聞き方だ。もし、その人が公文に対して自信を持っているならば、「徳井さん、公文っていいですよ」とか「僕は公文が好きなんですけど、徳井さんはどう思いますか?」といった切り出し方をするはずだ。

 突然の「〇〇ってどう思いますか?」は、聞いている側にも迷いがあるのかもしれない。意見を集めたい、可能なら支持してくれるような意見を求めている。

 だけど、そう聞かれると往々にして僕たちは自分の主張……とても個人的な意見を言ってしまうことが多いだけに、肯定的な意見を求めている人にとっては招かれざる客となる。地雷を踏んだ自分は爆ぜるしかない。結果、溝が生まれて、会話は尻つぼみになる。

 あまりにも危険なワナすぎる。ということは、「〇〇ってどう思いますか?」と言われたときは、肯定的な意見を求めているという視点に立って返答した方が、いろいろと角が立たない。

 会話において、こんなことを考えなければいけない時点で、それもどうかと思うけど、中にはさほど面識がないのに自分の意見を求めて、そう聞いてくる人がいる。であれば、その人に対して、簡単に自分の意見を言うのは危険な行為なのだ。

 先の公文の例で言えば、こういうことだ。

「徳井さんは、公文ってどう思います?」

「公文ですか? いいっすよね。頭が良くなりそうですもんね」

 こんな風に、ひとまず「肯定のワンクッション」を置く。その後に、「本当にそう思いますか?」などと言われたら、相手の顔を見る。

A:疑っている顔

B:うれしそうな顔

 Aであれば自分の率直な意見なども交え真摯に答え、Bであれば肯定の態度は正しいということになるので、そのまま肯定的な態度をとりながら話をした方がいい。

 会話というのは、自分の主義主張を押し付けるのではなく、あくまでバランスを取るもの。相手にお得感を与えることができれば話が弾むのだから、「〇〇ってどう思いますか?」と聞かれたら、ワナが仕掛けられたと思った方がいい。

 もちろん、キャラクターが立っている人であれば、こんなことをする必要はない。どんな意見も、その人の個性として、相手が勝手に咀嚼してくれる。でも、会話に自信がなかったり、あまり面識がない人から突然聞かれたときは、この方法がお得な会話術であることに間違いはないと思う。

 ちょっと頼られているときこそ要注意だ。そういうときこそ、「どう思いますか?」のワナは、いたるところに潜んでいる。

1980年北海道出身。2000年、東京NSC5期生同期の吉村崇とお笑いコンビ「平成ノブシコブシ」結成。「ピカルの定理」などバラエティ番組を中心に活躍。最近では、バラエティ番組や芸人を愛情たっぷりに「分析」することでも注目を集め、22年2月28日に『敗北からの芸人論』を発売。「もっと世間で評価や称賛を受けるべき人や物」を紹介すべく、YouTubeチャンネル「徳井の考察」も開設している。吉本興業所属。
公式ツイッター:https://twitter.com/nagomigozen 
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講演依頼:https://www.speakers.jp/speaker/tokui-kenta/
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