SearchSearch

それだけで、アート。ナチュラルな美を見つめる写真展『ライアン・マッギンレー BODY LOUD !』

2016.05.10 Vol.666

 アメリカの代表的美術館の一つ、ホイットニー美術館において、史上最年少となる25歳の若さで個展を開催するなど、いま最も注目を集めるフォトグラファー、ライアン・マッギンレーの全体像に触れる、注目の展覧会。最初期の〈出会い〉シリーズから、〈ロード・トリップ〉、〈モリッシー〉、〈イヤーブック〉、〈グリッド〉、〈アニマルズ〉、そして最新作の〈秋〉〈冬〉まで、各シリーズから作家自ら厳選した約50点を展示する。

 マッギンレーの作品に登場する人物たちは、そのほとんどがヌードである。広大な草原のなかを疾走し、雪原に横たわる全裸の被写体たち。彼らは皆プロのモデルではない。マッギンレーがとらえるのは、被写体の表面的な美しさというよりも、衣服を脱いだ彼らが垣間見せる一瞬の姿。そこには、日常の制約や束縛から解放された精神の自由があり、見る者はモデルの姿かたちにとらわれず、美を感じる。

 日本国内の美術館での初個展となる本展。500枚のポートレートで構成する大作〈イヤーブック〉を、展示室の壁面約30メートルを使って展示するなど、スケール感あふれる展示にも注目。マッギンレー作品ならではのインパクト、奔放さ、開放感を感じよう。

『ライアン・マッギンレー BODY LOUD !』
東京オペラシティ アートギャラリー 開催中〜 7月10日(日)

【時間】11〜19時(金・土は20時まで。最終入場は閉館30分前まで)
【休】月曜
【料金】一般1200円、大高生800円、中学生以下無料
【問い合わせ】03-5777-8600(ハローダイヤル)
【交通】京王新線 初台駅東口より徒歩5分以内。東京オペラシティビルに直結
【URL】 http://www.operacity.jp/ag/

光と影を描く。『大本幸大 個展「雑景」』

2016.04.27 Vol.665

 MASATAKA CONTEMPORARYディレクターも期待を寄せる若手作家・大本幸大の個展。

 2011年武蔵野美術大学卒業制作展において研究室賞を受賞。同大学修士課程修了後、国内外の展覧会に出展。昨年、同ギャラリーでのグループ展『100号展』に出品し、存在感を放っていた。

「ヒトを描く」という主題の下、制作を続けていると語る大本。しかし彼の作品において、ヒトは必ずしも“人間”の形を保って描かれるわけではない。人工物—廃材のようなものから高層ビルまで—と融合していたりする。その様は、自らが生み出したモノに絡め取られた現代人の閉塞感を表しているようにも、システムの一部となった人間の存在意義を問うているようにも見える。

 大本の作品の根底に横たわる「ヒトがヒトらしく生きるとは、結局どういうことなのか」という問い。作品が放つ迫力を楽しみながら、自分なりに答えを模索してみては。

光と影を描く。「大岩オスカール – 世界は光に満ちている 」

2016.04.26 Vol.665

 ブラジル出身の現代アーティスト、大岩オスカールの、日本では3年半ぶりとなる個展。大岩オスカールは、緻密なタッチや鳥瞰図的な構図を使い、日常に潜む問いや社会問題を静かなまなざしとともに描いた作品が印象的な作家。アトリエで制作に励む一方で、彼はのどかな田園、里山、水のある風景を愛し、旅をする。

 本展は、そんな旅の風景を思わせる、自然の光を感じる新作に注目だ。会場では、瀬戸内の海、隅田川、サンパウロ市内を流れるピニェイロ河を描いた作品を一同に展示。まばゆい光を反射させながら、揺らめく水面。きらめく水面は薄い金箔を使って表されており、青を基調とした光と影のグラデーションと相まって、一層の奥行感を与えている。絵画からあふれ出るような、光の存在感を感じてみては。また今回は、展覧会に合わせて最新の作品集が刊行される予定。

アートに込められたニッポンの美学「国宝 燕子花図屏風 −歌をまとう絵の系譜−」

2016.04.12 Vol.664

 尾形光琳(1658〜1716)によって生みだされた国宝「燕子花図屏風」を公開する特別展。「燕子花図屏風」は『伊勢物語』の中の一節に基づいて描かれたと考えられている。その一節とは、東国に下る途中の主人公が三河国の八橋で燕子花の群生を目にして、「かきつばた」の五文字に合わせ「唐衣きつゝなれにしつましあれば はるばるきぬる旅をしぞ思ふ」と歌を詠んだという場面。総金地の背景に、燕子花の群生が鮮やかに咲き誇るさまは、まさに和歌の幽玄な世界が広がるよう。

 本展では根津美術館が所蔵する国宝「燕子花図屏風」をはじめ、和歌と関わりをもつさまざまな絵画作品を選りすぐって紹介。和歌にもよく詠まれる桜と紅葉、その名所として知られる吉野と龍田川をモチーフにした「吉野龍田図屏風」なども展示。あわせて、室町時代に制作された「伊勢物語絵巻」(個人蔵)3巻も展示される。絵巻や屏風を通して『伊勢物語』の世界に触れる機会だ。

「国宝 燕子花図屏風 −歌をまとう絵の系譜−」

根津美術館 4月13日(水)〜5月15日(日)
【時間】10〜17時 ※夜間開館:5/10〜15は19時まで。(入館は閉館の30分前まで)
【休】月曜(5/2は開館)
【料金】一般1300円、学生(高校生以上)1000円、中学生以下は無料
【問い合わせ】03-3400-2536
【交通】地下鉄 表参道駅 A5出口より徒歩8分
【URL】 http://www.nezu-muse.or.jp/

アートに込められたニッポンの美学「ボストン美術館所蔵 俺たちの国芳 わたしの国貞」

2016.04.10 Vol.664

 世界有数の浮世絵コレクションを誇るボストン美術館が所蔵する1万4000万枚を超える国芳・国貞作品から、選りすぐりの170件(約350枚)がやってくる! 同美術館が両作家のこれだけの作品数を出展するのは1876年の開館以来初めてのこと。しかもこれらの作品は一度貸出しされると5年間は公開されなくなるため、今回は非常に貴重な機会となる。

 テレビやグラビア雑誌がない江戸時代、浮世絵は歌舞伎スターのブロマイドであり、最新のエンターテインメントやファッションを伝える重要なメディアだった。中でも、人気を博したのが2人の天才浮世絵師、歌川国芳と歌川国貞。彼らは兄弟弟子でありながら、その作風は対照的。国芳は豪快な武者絵と大胆な構図で、国貞は粋な美人画や緻密な表現で、江戸の人々を魅了した。現在では日本のみならず世界も魅了する国芳と国貞。その才能とともに、彼らが伝えた華やかな大江戸エンターテインメントも体感しよう。

ファッションデザインとアートが一つになる『MIYAKE ISSEY展: 三宅一生の仕事』

2016.03.29 Vol.663

 世界的デザイナー三宅一生が、活動を開始した1970年から現在に至る約45年間の仕事を紹介する大規模展。初期から最新プロジェクトまでの全仕事を通して、ものづくりに対する三宅の考え方やデザインアプローチを明らかにし、さらなる可能性に迫っていく。

 本展は大きく3つのセクションで構成。デザイナー吉岡徳仁が空間デザインを手がけたSection AとBでは、今回の展覧会のために新たにデザインされた「グリッド・ボディ」を用いての展示。グラフィック・デザイナーの佐藤卓が会場デザインを担当したSection Cでは、ユニークな展示スタイルで三宅の衣服の持つ魅力を再発見できる。

 時代や社会が求めるものを敏感に感じ取り人間を中心に置いた服づくりを行ってきた三宅の姿勢や、伝統や職人技を自身の衣服デザインに生かすとともに新素材や技術を探求してきた三宅の方法論などを通して、デザインの力にも改めて気づくことができるはず。

MIYAKE ISSEY展: 三宅一生の仕事
国立新美術館 開催中〜6月13日(月)

【時間】10〜18時(金曜は20時まで。入場は閉館の30分前まで)
【休】火曜日(5/3は開館)
【料金】一般1300円、大学生800円
【問い合わせ】03-5777-8600(ハローダイヤル)
【交通】地下鉄 乃木坂駅 青山霊園方面改札6出口(美術館直結)
【URL】 http://2016.miyakeissey.org

お出かけ日和にオススメアート『北海道主要樹木図譜展』

2016.03.17 Vol.662

 大正から昭和初期にかけて製作された樹木図鑑〈北海道主要樹木図譜〉の貴重な元版を特別公開。植物図鑑としての重要性はもちろん、アートとしても魅了される奥深い世界を紹介する。

〈北海道主要樹木図譜〉は、東日本に生育する樹木を網羅し、その精緻な観察画とともに高く評価された、世界的にもトップレベルの樹木図鑑。大正2年(1913年)、北海道庁は林業育成の必要性から、東北帝国大学(現在の北海道大学)に図鑑作成を依頼。委託を受けた教授・宮部金吾と、助教授・工藤祐舜は7年間の準備期間の後、大正9年(1920年)に樹木4種を、技手・須崎忠助の作画による美しい石版画とともに発表。以降、昭和6年(1930年)までに樹種85種が紹介され、86枚の石版画が残されている。

 ボタニカルアートのファンは必見。なじみのある日本の植物たちを美しい図画の数々で愛でてみては。

『北海道主要樹木図譜展』
六本木ストライプスペース 3月18日(金)〜27日(日)

【時間】11〜19時
【休】会期中無休
【料金】入場無料
【問い合わせ】03-3405-8108
【交通】地下鉄 六本木駅3番出口より徒歩4分
【URL】 http://striped-house.com/

お出かけ日和にオススメアート『THE TOMATO PROJECT 25TH ANNIVERSARY EXHIBITION “O”』

2016.03.12 Vol.662

 世界的に活躍するデザイン集団Tomatoの結成25周年を記念し、渋谷パルコの2会場を中心に、さまざまな企画でその魅力を紹介する展覧会。これまでの活動を振り返りながら、今後のさらなる展開に期待させる、注目の初のレトロスペクティブ・マルチメディア・エキシビション。 

 展覧会では、結成から25年間に渡り作られてきた商業作品や自身たちの作品、チーム内で実験的に制作された作品など、Tomatoが創作してきた作品を一堂に展示。一般には初公開として、TomatoがUnderworldのために制作したレコードジャケット、グラフィック、映像、アートワークなども展示される。パルコミュージアム、ギャラリーXの2会場だけでなく、渋谷パルコ全館、さらにはストリートでのバーチャルアートや街頭ビジョンなど渋谷の街をも巻き込んで、Tomatoのクリエイティブな世界を伝える。

 アート、デザイン、音楽など、さまざまなクリエイターが所属するTomatoの無限の魅力に迫る機会。

ユニークな才能に夢中!『はしれ、トト!』 조은영(チョ・ウンヨン)の絵本づくり展

2016.02.22 Vol.661

 韓国の絵本画家チョ・ウンヨンがブラティスラヴァ世界絵本原画展でグランプリを獲得したデビュー作『はしれ、トト!』を、その原画約100点と、プロセスで使った写真やスケッチなどを紹介する展覧会。

『はしれ、トト!』は競馬場という珍しい物語の舞台設定と、幼い少女の目を通して展開されていく人間観察が魅力の絵本。最初にフランス、次に作者の母国である韓国、そして日本で出版され、大きな反響を呼んだ作品だ。

 その視点もさることながら、およそ200点ものスケッチから構成されたユニークな創作手法も目を引く点。本展では、そのスケッチの数々も紹介し“この絵本ができるまで”のプロセスを楽しむこともできる。

 同時期開催『ちひろのムーブマン』展では、いわさきちひろが描いた、“子どもたちの動き”の表現に注目して選んだ約120点を展示。

ユニークな才能に夢中!『はしれ、トト!』 조은영(チョ・ウンヨン)の絵本づくり展
ちひろ美術館・東京 3月1日(火)〜5月22日(日)

【時間】10〜17時(入館は閉館の30分前まで)
【休】月曜(祝休日は開館、翌平日休館。GWは無休)
【料金】大人800円、高校生以下無料
【問い合わせ】03-3995-0612
【交通】西武新宿線 上井草駅より徒歩7分
【URL】 http://www.chihiro.jp/

ユニークな才能に夢中!『ビートたけしのアートが100点! アートたけし展 』

2016.02.22 Vol.661

 お笑い芸人ビートたけし、映画監督・北野武に続く第三の“天才たけし”、その名は「アートたけし」!
「オイラの絵とか並べて展示とかしてみたら、見て喜んでもらえたりするかなぁ?」という、ビートたけし自身の発案により開催が決まったという展覧会。会場全体にビートたけしならではのエッセンスを散りばめ、カオスの中にも、たけし独特のウィットに富んだ雰囲気があふれる展示空間を演出。アートに興味のあるなしや世代に関わらず、誰もが思い思いに楽しむことができるアート展だ。

 会場では、それぞれおよそ絵画60点、版画20点の他、ユニークな半立体作品20点、合わせて約100点の作品を展示。さらには、ヴェネツィア国際映画祭で授与された金獅子、銀獅子のトロフィーやフランス芸術文化勲章も公開される。
 本人にとって“絵を描くこと”は無心で没頭できる最高の遊びとのこと。そのクリエイティブな才能の根源に、迫ることができるかも。

ビートたけしのアートが100点! アートたけし展
松屋銀座 8階 イベントスクエア 2月25日(木)〜3月7日(月)

【時間】10〜20時(入場は30分前まで。最終日は17時閉場)
【休】会期中無休
【料金】大人1000円、高大生700円、中学生500円、小学生300円
【問い合わせ】03-3567-1211(松屋銀座 大代表)
【交通】地下鉄 銀座駅A12番出口直結
【URL】 http://art-takeshi.com/

人はなぜ描くのか。『18th DOMANI・明日展 PLUS —ドローイング・レッスンズ in 3331—』

2016.02.11 Vol.660

 文化庁が1967 年度から実施している、若手芸術家の海外研修支援制度「芸術家在外研修(現・新進芸術家海外研修制度)」の発表の場として、1998 年から開催されている展覧会「DOMANI・明日展」。昨年からは「DOMANI・明日展」とは別会場で、「DOMANI・明日展PLUS」もスタート。今年、複数のギャラリーが集うアーツ千代田 3331での開催となった「DOMANI・明日展PLUS」では“ドローイング”をテーマとし、これまでに「在外研修」制度で海外長期滞在経験を持った、幅広い世代の作家の作品を展示する。出品作家は、櫃田伸也(1941年生、絵画:1979年度、パリ)をはじめ、O JUN(1956年生、絵画:2007年度、 アルゼンチン)、日高理恵子(1958年生、絵画:1995年度、ドイツ)ら。会期中には、ドローイングをテーマに出品作家による座談会も開催する予定。

 単なる“下絵”ではなく“発想の生まれる場”として、ドローイングの魅力に触れる展覧会。研修制度の意義も再認識できるはず。

18th DOMANI・明日展 PLUS —ドローイング・レッスンズ in 3331—
アーツ千代田 3331 2月18日(木)〜3月6日(日)
【時間】12〜20時
【休】会期中無休
【料金】入場無料
【交通】地下鉄 銀座線 末広町駅4番出口より徒歩1分
【URL】 http://domani-ten.com/

Copyrighted Image