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ART 写真に、浸る

2013.02.04 Vol.581

 多彩な写真展を行うギャラリー、ペンタックスフォーラム。13日からは、ギャラリー㈵で徳谷ヒデキ「その先にあるパリ」展を、ギャラリー㈼では田部新「MATERIAL WORLD」展を開催する。

 徳谷ヒデキは、パリを題材としたスナップ作品を制作している写真家。パリの街並みという一見、使い古された題材をながらも、“美”を追求する作家の視点によって、見る者に“パリへの憧れ”をかきたてる、叙情豊かな作品となっている。本展では、2003年から2013年までに制作したパリスナップ作品約30点を展示する。

 田部新が映し出すのは、東京の都市のさまざまな景観。スクラップ&ビルドを繰り返す大都市・東京の景観を、作者独自の視点と感性でとらえていく。ビルの壁面や窓といった一見無機質な被写体の中にも、有機的な面白さを感じ取ることができる作品。本展では、スクエアサイズのモノクロプリント約30点を展示。それぞれの味わいを楽しみながら、写真表現の多様性を感じてみよう。

ART ときに絵画のように、ときに彫刻のように

2013.01.28 Vol.580

 テキスタイルアートの先駆者・新井淳一の、60年に及ぶ仕事の全貌を紹介する大規模な個展。
 1932年、織物文化の息づく群馬県桐生市に生まれた新井淳一は、高校卒業後、家業の織物業に従事。伝統的な布作りとともに、早くから新しい染織に加工を施した布の創作に取り組んだ新井は、1970年代から80年代にかけ、三宅一生や川久保玲といった日本を代表するファッションデザイナーとも協働。ファッションの世界でも広く知られた存在となった。

 本展では、新作を含む約60点の作品をダイナミックな構成で展示。パリを拠点に活動する建築家ユニットDGT(ドレル・ゴットメ・田根/アーキテクツ)の田根剛が展示構成を担当し、新井の布をミクロ・マクロで楽しめる空間を出現させる。合わせて、映像と音による空間演出で新井自身の言葉などを紹介。一枚の布に込められた彼の“ものづくり”の思想に触れながら、布が持つ無限の表現力を体感してみてはいかが。

ART 映画と彫刻 –“静”と”動”のコラボ

2013.01.14 Vol.579

「映画」と「彫刻」という異なる表現領域で活躍する2人のポルトガル人アーティストによる異色の展覧会。1人は、一般的な劇映画の文法・話法にとらわれず、ドキュメンタリーとフィクションの境界線に立つユニークな映画監督として知られるペドロ・コスタ。映画館ではなく、美術館で作品を発表するのも、彼の実験的姿勢の表れである。映画館では見ることのできない映像体験も魅力のひとつ。

 もう1人は、主に鉄を素材とする彫刻家として活躍し、ヴェネチアビエンナーレなどにもポルトガル代表として出品しているルイ・シャフェス。鉄という素材にこだわりながら、彫刻的表現のさまざまなイディオムを駆使して、幅広い造形を手がけている。

 一方は映画、一方は彫刻という、一見まったく異なる表現領域で活躍する2人の作家。プライベートでも仲の良いという彼らが、原美術館という空間で、どんな“対話”を繰り広げるのか。ちなみに、本展のタイトルは、2人がともに敬愛する日本映画の巨匠小津安二郎監督の墓碑に刻まれた一文字「無」に触発されて選んだものとのこと。

ART 美術界の明日を担う作家たち

2013.01.07 Vol.578

 文化庁の支援により海外研修を行った作家を紹介する展覧会として、今回で15回目を迎える「DOMANI・明日展」。今回は、平面、立体、写真などさまざまなジャンルから、とくに近年注目を集めている12名の作家の作品を紹介する。
 彼らが参加した文化庁の芸術家在外研修(新進芸術家海外研修制度)は、1967年から実施され、これまで約2900名を派遣している。研修先やジャンル、期間はさまざまだが、海外で作品を制作するという経験が、若い作家たちに刺激を与えることは間違いない。
 今回の展覧会では、ロサンゼルス在住の曽根裕や、カナダ在住の池田学など、現在も海外を拠点に制作活動を続けている作家たちも多数出展。異邦人として、自らのルーツに、そして自らの作品に向き合った彼らならではの、エネルギーあふれる作品が集う。

ヤマハの新グラフィック・コンテストのグランプリ決定

2012.12.17 Vol.576
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 ヤマハとヤマハ発動機が総合的なグラフィック・コンテストとして今年初めて開催した『Graphic Grand Prix by Yamaha』の最終審査・表彰式が14日、都内で開催された。
 このコンテストは「感動」をキーワードとした理念を持つ両社が「今の時代の感動」を広く世の中に伝え、クリエイターやアーティストの発掘・育成を視野に開催したもの。今回は「存在。」をテーマに作品を募集した。6月29日から9月30日までに1585の作品の応募があり、その中から一次審査で30作品に絞り、さらに二次審査を経て最終審査には7作品がノミネートされた。
 この日はコンテストのプロデューサーで審査員長の日比野克彦氏と両社の代表取締役社長およびデザインセレクションメンバーが最終審査を行い、楠陽子さんの『触覚の視覚化』(写真)にグランプリが授与された。また、森未央子さんの『またフランジ』には「日比野克彦賞」が、松田雅史さんの『9,332km遠くの人 15.09.2012~15.08.2012""』には「オーディエンス賞」が送られた。

ART ”銀”の向こうに思いをはせる

2012.12.17 Vol.576

 激動のポーランドを見つめ続けた日本人写真家・塚原琢哉の写真展。1981年に銀座・和光ホールで行った展覧会「銀の日記」に続く“その後”のポーランドを写した、未発表作品を紹介する。
 塚原が初めてポーランドを訪れたのは1972年。社会主義体制下で息づく芸術の数々、苦悩を生き抜いてきた人々の姿を目の当たりした塚原は「戦争のメカニズムをあらゆる角度から見つけ出さなくてはならないと思った」との思いを抱いたと語る。塚原は、戦争の傷跡がまざまざと残る風景の中で、ひたむきに生きる人々の姿をとらえ、「銀の日記」として発表。高い評価を得た。
 その後、ポーランドは1989年の無血革命を経て、EUに加盟。自由社会の風がポーランドを大きく変えていく。そんな中、塚原がカメラを向けたのは豊かさと進歩を享受する人々ではなく、そこに取り残された人々だった。塚原がEU加盟後のポーランドに度々訪れては、カメラにとらえたのは、過疎化した町のたたずまい。しかしそこには、苦難を乗り越えた平穏と、子供たちの笑顔がある。本展では、未発表のシルバープリント作品28点を展示。ノスタルジーとともに、クリスマスキャンドルのような温かく小さな光を感じるはず。

ART その”くに”で、何大臣をやってみる?

2012.12.10 Vol.575

『0円ハウス』や『独立国家のつくりかた』の著者・坂口恭平の作品と構想を、過去編・未来編に分けて紹介。1978年、熊本生まれの坂口は、早稲田大学理工学部建築学科を卒業しながらも“建物を建てない建築家”として、暮らし、生き方を見つめるクリエイター。隅田川で暮らしていた、ある路上生活者との出会いを機に、移動できる家「モバイルハウス」を制作するようになる。3.11後の2011年5月、『新政府』を樹立し自らを『新政府』の総理大臣と称して“独立国家”作りを開始(ちなみに文部大臣は中沢新一、厚生大臣は映画監督の鎌仲ひとみ)。3万円で借りた熊本の土地を解放し、避難所として被災者らを滞在させるなどの活動を行っている。
 未来編では、過去編でも紹介したモバイルハウスなどの一部展示のほか、2012年11月現在の『新政府』の構想を可視化させた構想案をドローイングなどで展示。『新政府』の新しい貨幣や都市計画などユニークなアイデアを繰り広げ“国づくり”のワクワク感に鑑賞者を巻き込んでいく。

ART 境界線上に、溢れ出す「生命」

2012.11.26 Vol.574

 ロボット工学、バイオ・テクノロジー、クローン技術…今、科学の進歩によって、“人”と“テクノロジー”の境界線上で、名付けることのできない“生命”が生まれている。アノニマス(anonymous)とは、匿名の、名前のわからない、個性のないもの、を意味する言葉。本展では、そんな、名付けることのできない“生命”=「アノニマス・ライフ」という言葉を手がかりに、機械と人間の違いであったはずの“生”の意味を問い直すとともに、テクノロジーの進歩が新たな光を当てたセクシュアリティーやアイデンティティーの問題をはじめとする、境界線上の“生”を見つめた作品を紹介する。
 自らの身体を使った美容整形手術をパフォーマンスとするフランスのアーティスト・オルランや、靴デザイナー・串野真也とのコラボレーションで、履いて歩くと菜の花の種が植えられる「菜の花ヒール」を制作したスプツニ子!、落語家・桂米朝をモチーフにした「米朝アンドロイド」を手掛けた石黒浩と映像アーティスト・斎藤達也など、7組が出展。生命とは、人間とは、アイデンティティーとは…そんな問いを新たな視点で見つめることができる展覧会。

ART ついに、初の美術館大規模が開催!

2012.11.19 Vol.573

 エログロやタブー的要素など、刺激的なテーマをはらんだ作品でも知られ、公立の美術館の間では“取り扱い注意作家”とも呼ばれた鬼才・会田誠。今回、美術館では初となる大規模個展が森美術館で開催される。

 会田誠は、今日最も注目されている日本の現代アーティストのひとり。その作品は、グロテスクでエロティックな作風を見せたと思えば、一方では政治的、歴史的な課題への鋭い批評性を見せる。日本の現代社会を投影しながら、同時に伝統的な美術作品や様式を参照することも多い。鋭い視点ゆえか、はたまた偶然か、作品の中には制作から数年後に起こった事象を予言したかのような作品もある。

 本展では、デビュー以来20年以上にわたる現代美術家・会田誠の全貌を、新作を含む約100点を通して明らかにする。“眉をひそめながらも見ずにはいられない”会田ワールドの秘密に触れることができるかも? ちなみに“刺激的な作品”は通称“18禁部屋”に展示されるとのこと。

ART 今再び、世界を見つめて

2012.11.12 Vol.572

渋谷ヒカリエ:11月14日(水)〜11月26日(月)
アートフロントギャラリー:11月16日(金)〜12月2日(日)

ART 表現者デヴィッド・リンチの魅力に迫る

2012.11.05 Vol.571

『エレファント・マン』『マルホランド・ドライブ』など、映画界の鬼才監督として知られるデヴィッド・リンチ。しかし彼の創作活動は多岐に渡っており、近年はアーティストとしての評価も高まっている。カルティエ現代美術財団(フランス)やマックス・エルンスト美術館(ドイツ)でも大型の個展を行い、2010年には美術界において権威ある「Goslar Kaiserring award for 2010」を受賞した。

 デヴィッド・リンチ本人のサポートのもとに開催される本展は、彼の表現活動における横断的精神性を読み取り、彼の表現世界の本質へと迫る大規模企画展となる。出展されるのは、絵画、ドローイング、写真など計71点のアート作品(うち68点が日本初公開)と、実験的な短編映像11本(本展のためにリンチが編集した日本初公開映像)を展示、上映。会場は、展示スペースと仮設シアターを入れ子構造で組み入れるという迷宮のような構成をとっており「映像」「アート」という枠にとらわれずリンチワールドに迫る仕組みとなっている。

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