統計不正問題で問われる原因究明への姿勢

2019.02.08 Vol.715
 昨年末に発覚した厚生労働省の「毎月勤労統計調査」が誤った手法で実施されていた問題は一向に収束の気配を見せていない。  これは従業員500人以上の事業所については、本来は全数調査をしなければいけなかったところを東京都分は約3分の1しか調査していなかったというもの。  毎月勤労統計は労働者の給与や実質賃金の動向を調べる重要統計で、労働者1人当たりの現金給与総額(名目賃金)や、物価変動の影響を差し引いた実質賃金などを公表している。雇用保険や労災保険の給付や国内総生産(GDP)の算出といった場面でも使われる数字で、国の政策決定への指針となるのはもちろん、庶民にとってもその数字の持つ意味は大きい。  年が明けて、この不適切な調査が2004年から行われていたこと、雇用保険や労災保険などについては大企業の調査数が減ったことから2004〜2017年の給与額が平均で0.6%低下。この数字をもとに算出したことから約567.5億円の過少給付となっていることが発覚した。その後、追加給付にはそれに伴う事務経費も含め総額795億円かかることが分かり、政府が予算案を修正する異例の事態となった。  1月15日には厚労省が全数調査から抽出調査に切り替え、それを総務省に報告しなかったことが統計ルールなどを定めた統計法に違反するのではないかという問題も浮上した。  この一連の問題を調べるために弁護士らでつくられた厚生労働省の特別監察委員会は統計の担当者からの聞き取りなどを行い、22日には根本匠厚労相に調査報告書を提出。しかしその後、ヒアリングの一部を厚労省の職員が行っていたことや聞き取りをした人数が発表では69人だったものの実数では37人だったことが発覚。調査をやり直すことになった。  極めつけは課長・局長級の幹部職員に対するヒアリングに、同省の定塚由美子官房長が同席していた問題。定塚氏は涼しい顔で28日、同省内で記者団の取材に応じ、「厚労省としても答えてもらわないと困るという姿勢を示す意味で出席した」と釈明したが幹部職員の同席が証言に影響を与えないわけがなく、この問題に対する同省の姿勢が批判されることとなった。  28日から始まった通常国会でもこの問題は俎上に上がった。アベノミクスは偽装されたものなのではないかなど指摘されるなか、安倍晋三首相は「総雇用者所得は雇用が大幅に増加する中で、名目でも実質でも増加が続いている」と述べるなど雇用所得環境は改善しているとの認識を示した。  この問題の解明のキーマンとなるのが前統計政策担当の大西康之政策統括官。大西氏は2月1日付で官房付に人事異動。一連の統計不正問題の責任を取らせた形で、事実上の更迭となった。野党は再三、大西氏の衆院予算委員会への参考人招致を求めたが、与党は「現職ではない」との理由で拒否し続け、野党は「証人隠し」と激しく批判。7日になってやっと与野党で大西氏の招致に合意した。この一連の流れは国民の目にはどう映っただろうか。

衆院選の争点はアベノミクスを続けるかどうか!!
2014年衆院選12月14日投開票

2014.12.08 Vol.632
 安倍晋三首相は11月21日、来年10月に予定していた消費税率10%への再引き上げを2017年4月まで延期する方針を決め、「税制に重大な変更を行った以上、国民に信を問わなければならない」として、衆議院を解散した。12月2日に公示され、14日に投開票が行われる。  解散にあたり野党からは「大義なき解散」との批判の声が飛んだ。しかし安倍首相は21日に開かれた会見で「アベノミクス解散」と命名したうえで、「『アベノミクス隠し』の指摘は間違っている。この経済政策が正しいのか、他に選択肢はあるのか、国民にうかがいたい」と語った。  野党側の言い分としては、「消費税引き上げ延期については同意しているから争点にはならない」ということなのだが、今回問題となるのは「では、いつ引き上げるのか?」ということ。生活するうえでは増税されないに越したことはないのだが、同時に日本の財政再建はもう待ったなしのところまで来ている、ということも多くの国民が理解するところ。いつかは増税しなければならないのだが、この耳触りのよくない言葉は選挙では決してプラスには働かない。  それを承知で、2017年4月に消費税率を10%へ引き上げる事と、再延期を可能とする景気条項を設けないという事は大きな決断だ。  自民党は21日に開いた選対本部会議で、衆院選のスローガンを「景気回復、この道しかない。」と決定した。  この道とはアベノミクスのこと。  デフレからの脱却を確実にし、日本経済を成長軌道に乗せるためのアベノミクスの「第3の矢」である成長戦略は、4月の5%から8%への消費税増税もあり、まだ十分な成果は上げられないでいる。  しかし「第1の矢」である大胆な金融緩和は円安・株高を演出し、「第2の矢」の機動的な財政運営は景気の下支えに一定の効果を発揮した。  まさにこのままアベノミクスを進めるのか、それとも後戻りをするのか。その場合は、どの政党がどんな政策を打ち出すのか…そこまでを見越した選挙戦となる。  そんな中、自民党は11月25日に衆院選の選挙公約と第1次公認を発表した。安倍晋三首相の経済政策「アベノミクス」を前面に打ち出した政策公約2014では㈰経済再生・財政再建 ㈪地方創生・女性活躍推進 ㈫暮らしの安全・安心、教育再生 ㈬地球儀を俯瞰した積極的平和外交 ㈭政治・行政改革 ㈮憲法改正−の6分野、約300の重点政策が並んだ。 「経済再生・財政再建」においては、2017年4月に消費税率10%へ引き上げる事を明記し、軽減税率制度については、2017 年度からの導入を目指して、対象品目、区分経理、安定財源等について早急に具体的な検討を進めるとした。

小池百合子のMOTTAINAI 「アベノミクスも二年目。正念場が続きます」

2014.01.20 Vol.609
「アベノミクス」も二年目を迎えました。
 期待値を示す為替や株価を見ると、一昨年の総選挙を境に、為替は79円から104円へと大幅な円安、株価は8600円台から1万6000円前後と、東京市場は世界が羨むほどの値上がり率を記録しました。
 1月の日銀・地域経済報告(さくらリポート)でも、景気判断が引き上げられ、平成17年以来「回復」という表現が使われ、景気が確実に戻りつつあることを示しています。
 問題はここからです。
 海外の要因も気になる点が多々ありますが、私が最も心配するのが、貿易統計赤字の行方です。
 昨年11月の経常収支は5928億円の赤字で、2カ月連続過去最大の数字を記録しました。貿易収支は1兆2929億円の赤字。こちらは17カ月連続の赤字続きとなっています。
 私が経済キャスターを務めていた頃の80年〜90年代は、日本の膨大な貿易黒字に、財政と貿易の双子の赤字を抱えるアメリカから睨まれたものですが、いまや様変わり。学校では「日本は貿易立国」と学びましたが、頭を切り替える必要がありそうです。
 貿易赤字の背景には二つの問題点があります。第一に日本企業の国際競争力が低下していること。第二に石油やガスなどの化石燃料の輸入が急増していること。これは、すなわち原発停止による影響に他なりません。
 3・11の東日本大震災以降、電力会社が費やす燃料費は13年度で3兆6000億円も増えることになります。すなわち日本の国富を産油国、産ガス国に垂れ流しているわけです。その分、企業や家庭の負担が増え、国際競争力が低下するという悪循環です。ここでは円高是正、円安傾向がマイナスに働いています。
 中東産油国に流れた大切な日本のカネを還流させる。そのための知恵と工夫が必要です。
 ちなみに、「原発即ゼロ」と元気に元首相が叫んでおられますが、現実に今、原発はゼロです。原発が稼働していようが、していまいが、放射性廃棄物はすでに存在しています。ましてや、東京都内に原発が存在するわけではなく、原発を稼働させるか否かを東京都が決めるわけでもない。
 放射性廃棄物の最終処分場問題を後押しするための都知事選にしたいと二人の元首相が主張するなら、「東京都内に最終処分場を引き受けましょう!」くらいの公約を掲げて戦わねば、整合性がとれません。言いっぱなしになるのではないでしょうか。  都民はけっこう冷静に見ていますよ。

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