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男と女の事件簿『思い出のマーニー』

2015.03.21 Vol.639

 2010年に日本映画で最高の観客動員数を記録した『借りぐらしのアリエッティ』の米林宏昌監督が贈る、勇気と感動の物語。幼いころに両親を亡くし、あることがきっかけで心を閉ざしてしまった12歳の杏奈。ある夏、喘息の療養のためやってきた海辺の村で見つけた古い屋敷に心ひかれた杏奈は、そこで謎の少女・マーニーと出会う。やがて杏奈にとってマーニーは唯一心の内を明かせる存在となるが、彼女にはある秘密が…。ジブリ初のWヒロインのキャスティングは、杏奈役に高月彩良、マーニー役に有村架純。米林監督たっての希望でオーディションから選ばれた2人の声が、杏奈とマーニーの心の動きを繊細に、いきいきと表現している。

マエストロたちの表現力に圧倒『風立ちぬ』

2014.06.08 Vol.619

 2013年、日本の興業収入100億円を超える大ヒットを巻き起こした、宮崎駿監督、5年ぶりの監督作。ゼロ戦の設計者・堀越二郎と作家の堀辰雄をモデルに、1930年代の日本で飛行機作りに情熱を注いだ青年の姿を描く感動のアニメーション。『エヴァンゲリオン』シリーズなどを手掛けた庵野秀明が主人公・二郎の声に抜擢されたことも、大きな話題となった。二郎と恋に落ちる美しいヒロイン・菜穂子の声を『てっぱん』の瀧本美織。他、二郎の親友役で西島秀俊、二郎に大きな影響を与えるイタリア人飛行機製作者・カプローニ役に野村萬斎。主題歌には『魔女の宅急便』以来24年ぶりのタッグとなる松任谷由実の『ひこうき雲』。切なくも爽やかな歌声とメロディーが映画の余韻を広げてくれる。大正から昭和へ。不景気、大震災、そして戦争…。生きるのに辛い時代を、当時の若者たちはどう生きたのか。巨匠・宮崎駿、渾身にして“最後”の作品。

あのスタジオジブリに潜入! 『夢と狂気の王国』 監督・砂田麻美

2014.05.24 Vol.618

 世界中で愛される作品を生み出すスタジオジブリにカメラが潜入!メガホンをとったのは、ガン宣告を受けた父の日常をカメラでとらえた『エンディングノート』の砂田麻美監督。約1年にもわたってジブリに通いながら、知られざるその日常に迫った話題作だ。

 砂田監督がカメラを向けたのは、宮崎駿の『風立ちぬ』と高畑勲の『かぐや姫の物語』の同年公開に向けて準備を進めている真っ最中。「宮崎監督、高畑監督、鈴木プロデューサーの3人をはじめジブリの人々が夢を追求する姿はときに、狂気にも似た情熱を感じました」。そう振り返る砂田監督だが、そのカメラはあくまで淡々と“ジブリの日常”をとらえ続ける。「作り手たちの日常には、目をこらさなくては見えない何かが日々起きています。でもそれを“事件”としてカメラで追う、という撮影をするつもりは最初から無かったですね。実際に、スタジオジブリの中はとても静かで平和的。私はあくまで“見学を許された者”として、その空気を忠実に切り取りたかったんです」。とはいえこの“淡々さ”の陰には、彼女の映像監督としての鋭い感覚や確固たる意志がある。日常を映しているのに、いつしかジブリの人々に圧倒されるのは、砂田監督が“その瞬間”を逃さないからだ。

「常に撮影していたわけじゃないんです。まったくカメラを回さないときもありました。私はドキュメンタリー監督として、ずっとカメラを回しているのは愚かなことだと思っているんです。それなら定点カメラでも一緒ですから。一番大事なことをとらえてこそ意味がある。ただ一度、妙な気遣いをして自分でカメラを回さなかったときがあって。そのときは鈴木さんに叱られて涙しました。私にとってはまさに“ジブリ道場”。人間的にも映像の作り手としても修練の場でしたね」。ジブリの日常、その新鮮な驚きと感動を共有できるのは砂田監督の“狂気”のおかげだ。

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