あのスタジオジブリに潜入! 『夢と狂気の王国』 監督・砂田麻美


 世界中で愛される作品を生み出すスタジオジブリにカメラが潜入!メガホンをとったのは、ガン宣告を受けた父の日常をカメラでとらえた『エンディングノート』の砂田麻美監督。約1年にもわたってジブリに通いながら、知られざるその日常に迫った話題作だ。

 砂田監督がカメラを向けたのは、宮崎駿の『風立ちぬ』と高畑勲の『かぐや姫の物語』の同年公開に向けて準備を進めている真っ最中。「宮崎監督、高畑監督、鈴木プロデューサーの3人をはじめジブリの人々が夢を追求する姿はときに、狂気にも似た情熱を感じました」。そう振り返る砂田監督だが、そのカメラはあくまで淡々と“ジブリの日常”をとらえ続ける。「作り手たちの日常には、目をこらさなくては見えない何かが日々起きています。でもそれを“事件”としてカメラで追う、という撮影をするつもりは最初から無かったですね。実際に、スタジオジブリの中はとても静かで平和的。私はあくまで“見学を許された者”として、その空気を忠実に切り取りたかったんです」。とはいえこの“淡々さ”の陰には、彼女の映像監督としての鋭い感覚や確固たる意志がある。日常を映しているのに、いつしかジブリの人々に圧倒されるのは、砂田監督が“その瞬間”を逃さないからだ。

「常に撮影していたわけじゃないんです。まったくカメラを回さないときもありました。私はドキュメンタリー監督として、ずっとカメラを回しているのは愚かなことだと思っているんです。それなら定点カメラでも一緒ですから。一番大事なことをとらえてこそ意味がある。ただ一度、妙な気遣いをして自分でカメラを回さなかったときがあって。そのときは鈴木さんに叱られて涙しました。私にとってはまさに“ジブリ道場”。人間的にも映像の作り手としても修練の場でしたね」。ジブリの日常、その新鮮な驚きと感動を共有できるのは砂田監督の“狂気”のおかげだ。


『夢と狂気の王国』
発売元:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン 
発売中 ブルーレイディスク5800円 DVD4700円(各税別)