小池百合子のMOTTAINAI TPPは日本経済に喝!を入れるチャンス 

2015.10.26 Vol.653
 TPP・環太平洋パートナーシップ協定がロングラン交渉を経て、ついに大筋合意に至りました。長年、交渉にあたってきた甘利明担当大臣の髪もいつしか真っ白に。まことにご苦労様でした。  2006年のスタート時点ではシンガポール,ニュージーランド,チリ、ブルネイの4か国(P4)という比較的小規模の経済協定という小舟による船出でしたが、2010年3月に米国、豪州、ペルー、ベトナムの8カ国が参加。加えてマレーシア、メキシコ、カナダ、そして日本が交渉に参加したことで一気に大船団へと大化けしました。  その経済規模は、EUを凌ぐ世界の国内総生産(GDP)の4割を占め、世界経済に与える影響は極めて大です。このところ停滞気味の「アベノミクス」ですが、TPPという強力な援軍を得たといえます。太平洋を挟んだ12か国でモノや人材、サービスのやりとりが盛んになり、国際標準作りも期待できます。  少子化で毎年人口が20万人規模の純減で経済のパイが小さくなる一方の日本の国内市場に「喝!」といったところでしょう。TPPを実施するリスクと参加しないリスクを秤にかければ、不参加のリスクは圧倒的に大きいといえます。  牛肉の関税は現在38.5%ですが、TPP発効1年目に27.5%に、その後も段階的に引き下げられ、16年目には9%に。87tの国内供給量のうち、52万tが豪州、米国、ニュージーランドからの輸入ですが、牛丼などの値下がりが期待されるところです。ただし、デフレ対策には逆行し、プラス・マイナスでしょうか。  しかし、日本の酪農家にとっては現時点でプラス材料を見つけることは正直、困難です。生き物相手だけに、手が抜けず、機械化も限度があります。芸術品の域に達している日本の牛肉をマーケティングの徹底などでブランド化し、高付加価値が享受できるよう、しっかり応援したいと思います。  コメも同様です。中国の某指導者の妻が訪日した際、トン単位で日本のコメを爆買いしたと聞きました。世界のすしブームを背景に、「本格的なすしは日本米でないと…」といった常識を作り、海外への販路も確保することです。イタリア料理店で本場のパスタを売りにしているのと同じです。  TPPが実施されようが、されまいが正念場を迎えている日本の農業を大転換するチャンスでもあります。棚田保全など課題もありますが、産業、保水、景観、福祉など分野別の農業政策を強力に進めたいものです。(自民党衆議院議員)

小池百合子のMOTTAINAI 世界をさまようシリア難民。行き先はみえない。

2015.09.28 Vol.

小池百合子のMOTTAINAI
AIIB「日本は当面Wait & see」

2015.04.26 Vol.641
 このところアジアインフラ投資銀行(AIIB)を巡る論議が盛んです。イギリスが同盟国アメリカに伝えることなく抜け駆け的に参加したこと、ドイツやフランスなど欧州諸国が雪崩を打って参加を表明したり。現段階ではG7の分離作戦に成功した中国の戦略勝ちのように見えます。  AIIBの融資条件は大甘、融資対象も中国の都合で振り回されるのではないか。インフラ投資を優先させ、環境配慮を後回しにするのではないか。そもそも会議はメールで行うそうだが、それでよいのかなど、様々な懸念は山積しています。何よりも、決済は中国・人民元となり、ドルの基軸通貨の座を脅かすのでは。中国の狙いはブレトンウッズ体制そのものの転換を図ることではないか、などなど。  少々古い話になりますが、昨年8月、アブダビに本拠地を置くアラブ通貨基金(AMF)とJICAの間で業務協力協定(MOU)が締結された件についてご紹介しておきます。  AMFは1976年の設立、アラブ諸国22か国が加盟。資本金は42億ドルで職員数は150人という規模です。 アブドゥルラハマン・アル・ハミディ総裁はサウジアラビア中央銀行の副総裁を務めた金融のプロ。私が日本アラブ首長国連邦友好議員連盟の会長としてアブダビを訪問した際、AMF本部を表敬したことをきっかけに、日本とAMF連携の端緒が構築され、具体的な協力へと進みました。  協力の内容は「アラブ諸国の財政・金融分野の協力促進」で、要は日本の精緻な統計の手法をアラブ諸国の中央銀行や関係省庁に伝授。そのための専門家の派遣やセミナーの開催などがその内容となっています。日本の統計の正確さには誇りを持っている私として、進めたかったものです。  さて、アラブ諸国との接点を通じ、私はアラブ諸国のAIIBへの見方に関心を抱きました。それはギリシャ・ショックやリーマン・ショックにはIMFや世銀は即座に対応するが、では「アラブの春」以降の対アラブ諸国への支援はどうだったか。  要はIMF、世銀は結局欧米の支配下にあり、アラブはその下位に位置づけられているといった憤りです。だから別の機関が設けられるならと、サウジアラビアなどのアラブ産油国がAIIBへの参加を決めたのです。キリスト教社会とイスラム社会+その他、の格差ともいえます。  もうひとつ。中国の完全手動の「シルクロード基金」も始動しました。初案件は対パキスタン。こちらはモロに中国の財布となることでしょう。注視していきましょう。 (自民党衆議院議員)

小池百合子のMOTTAINAI
「仙台宣言」防災は事前対策と教育がカギ

2015.03.22 Vol.639
 3月14日から18日まで、宮城県仙台市で開かれた国連防災会議は、防災に関する国際的な行動枠組みと「仙台宣言」を採択して閉幕しました。参加国は190か国に上り、世界のほぼすべての国が参加したことになります。  災害が東西南北共通の課題である証左でしょう。 「仙台宣言」には災害による死亡率、被災者数、経済的な被害を抑えることなど7つの指標が盛り込まれました。ちなみに阪神大震災10周年を機に2005年、神戸で同防災会議が開かれた際にも「兵庫宣言」が採択されています。結局のところ、様々な対策が災害の頻度と激甚度の高まりに追いついていないのが実態なのでしょう。  防災会議の開催直前、南太平洋の島国バヌアツを史上最大級のサイクロン「パム」が直撃しました。   首都ポートビラからは壊滅的な被害が報告されていますが、より甚大な影響を受けた被災地からは被害の報告さえ届かないのが災害です。死者数など、被害の陣容は時とともに増えることが多い。  地図を確かめると、人口24万人のバヌアツはニューへブリディーズ諸島とよばれる83(有人は70)の島々からなりたつ島国です。わが国外務省もさっそく調査団を現地に派遣しましたが、これ以上の被害が拡大しないことを祈ります。  そんな小さな島国のバヌアツも東日本大震災の際には被災地のマグロはえ縄漁業関係者に500万円近い義援金を寄せてくれていました。バヌアツの船主グループが音頭をとったとか。しっかりお返しをしたいものです。  環境大臣当時、気候変動の影響による海水面上昇で国家消滅の危機にあるとされたツバルを訪問したことがあります。ツバルも今回のサイクロン「パム」の影響で約4割の人口が被害を受けたと報告されています。4割といっても、総人口9000人、バチカンの次に小さな国です。太平洋戦争時の連合軍側の滑走路が首都フナフティを縦断するように陣取る島国です。週一便の飛行機の離発着時を除き、滑走路で子供たちはサッカーに興じ、豚の群れがのんびりと歩き回っていたりと、牧歌的な島でした。  村人たちの家屋は高床式ですが、大潮の際にはそれでも床上浸水しました。もともとサンゴ礁の島ですから、いくら堤防を築いても、海水は地中から浸みあがり、なかなか引きもしない。  防災といっても、各国各地の事情がはなはだしく異なり、対策もテーラーメードでなければいけません。地球規模の共通対策と地域別対応の両面が必要です。問題はコストがかさむこと。事前対策費用と事後の措置費用では、前者のほうが有効であると信じましょう。そのための国民教育が不可欠です。 (自民党衆議院議員)

小池百合子のMOTTAINAI ギリシャはなぜあんなに強気に出られるのか

2015.02.23 Vol.637
 平成27年度国家予算の審議が始まりました。私も予算委員会の一人。実況TVカメラの死角のような場所に座っています。わざわざ目立たぬ位置に追いやってくれました。  さて、このごろ世界で最も目立っているのはギリシャの若きリーダー、40歳のアレクシス・チプラス首相でしょう。革ジャン姿のヤニス・バルファキス財務大臣との共通項はクールビズ。一歩間違えば「だらしない」感じですが、そこは二人ともかっこよく決まっており、女性の間でも大人気だとか。  カッコ悪いのは、借金だらけの財政です(日本も同じですが)。借金、赤字財政でにっちもさっちもいかず、仲間のEU諸国から支援を受けねばならないのに、強気に居直っているのがチプラス首相です。  世界の金融危機の震源地となったギリシャは、その後EU諸国からの支援を受ける条件として、緊縮財政を迫られました。しかし、爪に火をともすような生活にはもう耐えられないと、アンチ緊縮財政派のチプラス氏への支持が広まったわけです。だから、首相となったチプラス首相もそう簡単に宗旨替えはできません。 「だって、ユーロ圏から抜ければ、困るのは皆さんでしょう?!」と弱者の恐喝まがいで、ドイツなど他のEU諸国には大迷惑です。  なぜチプラス首相は強気なのか。  彼は革命家チェ・ゲバラを崇拝しており、自分の息子にゲバラの名前から得るネストと名付けるほどの急進左派です。  首相就任後、中国、ロシアから相次いで招待状が舞い込んだといいます。  かたやユーロは、もしギリシャがユーロ圏から抜けるようなことがあれば大激震に見舞われるでしょうから、必死で引き留め策を講じています。  ロシアはウクライナにも地理的に近く、ギリシャを味方につける政治的効果はきわめて高い。中国はすでにピレウス港などの利権を入手するなど、ヨーロッパでの戦略的拠点が確保できれば、よし。  つまり、ギリシャにとって、EUと中露を天秤にかける局面にあるわけです。  アベノミクスも株価、為替などの期待値を反映する数字に頼るだけでなく、これから実態を伴った景気の確保が急がれる段階に入っています。4月には大企業を中心に昇給などが進むものと期待できます。ですから、国内の政策よりも、むしろ外的要因が気になるアベノミクスの三年目。  ギリシャの神々に祈りますか。 (自民党衆議院議員)

小池百合子のMOTTAINAI スポーツの世界でも国家戦略が必要です。

2015.01.26 Vol.635
 新年早々、中東のカタールに飛びました。ドーハでのアジア・ユース・ジュニア大会に日本ウェイトリフティング協会会長として、選手応援とアジア連盟(AWF)の選挙に出席するためです。  大会では日本の高校生男女がメダル多数を獲得してくれました。現在17〜18歳の彼らです。5年後の東京オリンピックでの大活躍が期待できます。  大会の合間にはAWFの役員選挙が行われました。中国、インド、アラブ諸国に中央アジアと、関係国は40か国を上回ります。  会長はアル・マナ氏(カタール)が無投票で再選。ちなみに会長の任命により私は会長補佐に就任しました。直前会長はUAEの王子の一人でした。要はアラブ湾岸諸国のお金持ちです。  重要ポストである事務局長には12年間同職を勤めてきたイラン人に代わり、イラク人のジャルード氏が選ばれました。実は、選任に至るまでの多数派工作が勝負です。国際連盟の副会長を務める夫を補佐してきたタイ人女性が事務局長選に立候補していましたが、直前に辞退し、代わりに副会長職を確保。同様に中国人候補者も辞退した結果、イラ・イラ対決となりました。  日本はこれまで医療部会の理事1名であったのを理事職、技術職で各1名、計3名、私の会長補佐職を加えると4つのポストが確保できました。各国への根回しの成果でもあります。  しかし、国際連盟(IWF)となると、日本はまったく手薄です。会長はハンガリー、事務局長は中国と枢要なポストには誰もいない。他の種目も似たような状況でしょう。  昨年末、韓国がアジア・サッカー連盟(AFC)の年間フェアプレー賞を受賞したとの報道がありました。試合内容やピッチ内外でのマナー、サポーターの行動、警告数、退場数などを総合的に評価してのことだそうです。日本は2位。最優秀女子監督にU-17日本代表の監督、高倉麻子監督が選ばれたのみです。  柔道着が青になり、試合がレスリングもどきになり、水泳のバサロ泳法が禁じられ、スキー・ジャンプの板が縮められ…。  不利なルール変更に日本国内で非難の声が起こります。しかし、問題の本質は、ルール変更に憤る前に、ルール変更の場で堂々と日本の考えを示し、世界の仲間を味方につける作業が必要なのです。  これはすべての分野に言えます。  新ルールをけなげに、器用に守り、また成果を上げる現場の努力に役員などの経営陣、管理陣が甘えていてはいけません。競技の前に重要な国家戦略が必要です。 (自民党衆議院議員)

小池百合子のMOTTAINAI 総選挙。隠れた助演賞は「サウジ、中国、そして労組」

2014.12.22 Vol.633
 第47回衆院選は自民・公明の与党が計326議席を確保し、衆院で3分の2の勢力を維持する結果となりました。  私自身、地元(豊島・練馬)や応援に出向いた全国各地で確かな手ごたえを感じながら、目標の「あずさ2号(8時ちょうどの当確)」を達成することができました。  あえて言えば、相手の姿が見えなかった。政権に挑戦する野党がなかったせいでしょう。  野党側は安倍総理の奇襲作戦に翻弄されつつも、結果的には民主党が11増、維新で1減。次世代の党や生活の党の分が流れた計算になります。「確かな野党」の共産党が8議席から21議席へと躍進し、不満票の受け皿役となりました。  今回の総選挙の主役は安倍晋三総理であることは紛れもない事実ですが、他に隠れた三人のバイプレーヤー、助演役が存在しました。  第一にサウジアラビア王国です。  選挙直前の11月27日、石油価格を決定づけるOPEC(石油輸出国機構)総会が開かれました。注目された原油の生産調整は調整役不在で見送りとなり、さらに油価は続落。スゥイング・プロデューサー役を務めるべきサウジアラビアが協調減産を実施していたなら、石油価格の上昇に加え、円安で拍車がかかり、特に地方での不満に火がついたことでしょう。なつかしい民主党の「ガソリン値下げ隊」が息を吹き返したかもしれません。中長期的にはアベノミクスへの影響もありますが、ここはサウジアラビア様、シュクラン・ジャジーラン(感謝)。  第二に中国。サンゴの密漁で小笠原諸島近海にうじゃうじゃと出現した中国船の集団は安全保障や危機管理に疎い民主党への不信感を改めて思い出させてくれました。96年、台湾総統選挙で李登輝勝利を阻止したい中国軍が基隆沖にミサイルを撃ち込み、逆に李氏の地滑り的勝利へと導いた時と同じです。中国様、多謝。  第三が労働組合です。  アベノミクスの問題点は賃金上昇が消費税アップや物価上昇に追いついていないことです。本来、賃金アップの交渉にあたるのは労働組合ですが、現在の日本の労働組合の委員長は安倍総理自身です。政権奪還後、安倍総理は経済界に対し「賃金アップ」要請をし、最初に応じたのがコンビニのローソンでした。ローソならぬローソンが春闘の主役だったのです。労組のお株を総理が奪ったかたちです。  官公労を激しく批判してきた維新の橋下氏と選挙で労組に依存する民主が突如統一候補を担ぐのも無理がありました。  結果として、安倍総理は「あと4年」の政権運営権を確保しました。毎年のように社長が変わる企業はありません。ここはじっくり日本の国益確保とサステナブルな発展に取り組みたいものです。 (自民党衆議院議員)

小池百合子のMOTTAINAI シリア難民の子どもたちが学ぶ「さくら小学校」ができました 

2014.10.27 Vol.629
 以前、この欄でもご紹介したクラウド・ファンディングの手法による「シリア難民のこどもたちへ学校を!」プロジェクト。わずか3か月のうちに設立に必要な資金を集めることができ、10月10日に開校式を迎えました。  学校名は「さくら小学校」です。  50名近い超党派議員による「シリア難民支援議員連盟」が主催するこのプロジェクトは、3000円から30万円までの支援コースを設け、あっという間に目標の1000万円をクリアしました。  支援額ごとに「ギフト」を選べ、30万円コースを選んでくださった方には「小池百合子とトルコ料理を楽しむ」という特典?も。クラウド・ファンディングに詳しい堀江貴文さん(ホリエモン)のアドバイスによる高額支援コースは思いのほか好評で、これが下支えとなり目標額を達成できたといえます。  議連会長を務める私自身が、昨年はヨルダン、今年5月にはトルコへ飛び、難民の実態を見てまいりました。その結果、トルコへ逃れたものの、難民キャンプにも入れずにちりぢりに暮らしていることで、学校にも行けないシリアの子どもたちへ教育を提供することがよいと判断したのです。  現在、シリア内戦の影響で150万人から200万ともいわれる難民が隣国トルコへ逃れ、多くは老人、女性、そしてこどもたちです。  ちなみにかのスティーブ・ジョブズも父親はシリア人。アメリカ留学中に生まれた子が彼です。難民と化した彼らの中から、ひょっとして第二のスティーブ・ジョブズが生まれてもおかしくないのです。問題は、トルコの言語はトルコ語、シリア難民はアラビア語がベースで、トルコの学校には行けないことです。  無教育のまま大人になっても就職先はそう簡単には見つけられず、結局、一生難民生活を強いられることになります。場合によっては、かのイスラム国なる集団等に加わる恐れも多分にあります。  山の向こう側はシリア国境というトルコのハタイ県に「さくら小学校」は位置します。生徒は小学1年生から8年生までの約300人。教員も同じ難民から教師経験者12名を集めました。教員募集には150名もの応募がありました。  結局、「子供には教育を、大人には雇用を」確保することができました。サッカー議連から贈られたボールには男の子たちが目を輝かせ、女の子たちはくまモンに歓声をあげました。  今後も学校運営に費用がかかります。ぜひともトルコ料理コースでなくともご協力をお願いいたします。 (自民党衆議院議員)

小池百合子のMOTTAINAI 対岸の火事では済まされない中東の問題

2014.09.01 Vol.625
 40年以上中東に関わってきた私だが、これほど荒れた中東を見るのは初めてです。最近特に驚いたのはUAEがリビアのイスラム勢力に対して空爆を実施したというものだ。リビアは3年前にカダフィ政権が崩壊して以降内戦状態にあり、最近イスラム系勢力が力を増してきていた。UAEが近隣国の政治問題に表だって介入することは稀だが、今回の空爆は、イスラム勢力が中東全域で力を増し、自国の体制にまで影響が及ぶことを防ぐのが目的とみられる。  また、「イスラム国」を名乗るイスラム教スンニ派の過激派組織の勢力拡大が止まらないことだ。「イスラム国」はアルカーイダ以上に凶暴と言われ、先日はアメリカ人ジャーナリストの処刑の映像をインターネット上で公開、その残忍さに世界中が大きなショックを受けた。処刑を行った人物がイギリスの若者だったことも衝撃であった。実際に、イギリスからシリアやイラクに渡り戦闘員となった者の数は500人を超えるとも言われる。ロンドンを拠点のひとつとしてイスラム過激派による宣伝活動が展開されており、これも欧米諸国の懸念材料のひとつとなっている。  この二つのニュースの背景には、アメリカの中東におけるプレゼンスの低下が指摘される。内向き志向を強めるオバマ政権は、「アラブの春」後の中東の混乱、シリア内戦において有効な対応をとってこなかった。ところが、そのアメリカが8月に入りイラクへの空爆を開始し、ここにきてシリアへの空爆の可能性も出てきている。しかし、内戦状態に陥ったシリアへの軍事介入は2年前から米国内で出ていた議論であり、”too late”と言わざるを得ない。アメリカが当初より穏健なシリアの反体制派を積極的に支援していれば、「イスラム国」の台頭を阻めていたかもしれないからだ。  その「イスラム国」が目指すのは領土的広がりを持つイスラム世界の統一だが、その根底にあるのは、1916年のサイクス・ピコ協定への激しい反発である。イスラムの世界にはもともと「ウンマ」と呼ばれる共同体の概念があるが、これを無視し、西欧列強がオスマン帝国を一方的に分割、アラブ諸国の国境線は机上で直線によって決められた。先月、「イスラム国」が住民らにパスポートを発行したと伝えられたが、そこからもこうした反発が見て取れる。  先般、シリアに飛び込んだ日本人男性が「イスラム国」に拘束される事件も起こっているが、中東の問題はわが国にとっても対岸の火事では済まされない。この地域を真に理解できるかどうかは、わが国にとって死活的に重要な問題だ。わが国の中東地域の研究者の育成こそが急務である。 (衆議院議員/自民党広報本部長)

小池百合子のMOTTAINAI 国家戦略特区の拡大でアベノミクスを浮揚すべし

2014.08.04 Vol.623
 もう20年にもなりますが、私が最初に担当した行政の仕事は総務庁の政務次官として、でした。  地ビールや携帯電話端末の売り切り制度導入の規制緩和もその頃の成果です。当時は通信兵が担ぐようなショルダーフォンでバカでかく、料金も一通話300円などバカ高かったのを覚えています。  それが今や、子供でさえ携帯する必需品。おまけに小さなコンピューター以上の機能を持つまでに至っています。  地ビールも、それなりに地域おこしに一役買っています。規制緩和が世の中を変えた好例と言えましょう。  地域の発想で、地域による活性化を図るための実験地域としての「パイロット自治体制度」も進めました。  今でいう「特区」にあたります。  こちらの成果はさっぱりでした。  手を挙げた意欲のある自治体が、国の規制や国と市町村の中二階ともいえる都道府県の管理を離れ、街づくりや新たな産業を創造することを期待しての政策です。必要な財源も手当てしましたが、その分、国や都道府県からの交付金を削られ、お仕置きを受けました。  その後も、様々な「特区」が導入されましたが、成功例は、小泉政権時代の「どぶろく特区」くらい。それとて日本経済の構造を大きく変えるほどの効果があったとは到底思われません。  要は、霞が関の「手取り、足取り」の規制が岩盤である証左なのでしょう。「特区」を設けることで、「規制緩和、やってまっせ」とのアリバイ作りに使われています。国家賠償責任を問われた場合のリスクを取りたくない気持ちも理解しますが、日本のガラパゴス化を進めた原因とも言えます。  アベノミクスの三本目の矢である成長戦略をスピーディーに実現するため、安倍政権では新たな「特区」制度として、国家戦略特区を設けました。東京も国家戦略特区とされましたが、23区のうちわずか9区しか対象になっていません。思い切って対象を広げるべきでしょう。  地元の豊島区でも、思い切った少子化対策や景観や防災の観点から無電柱化を進めるなど、全国のモデル地域に挑戦する計画があります。特に、木造密集地域の多い地区だけに、再開発と無電柱化をセットで進める。老朽化したガス管、水道管の更新と合わせて電力線などの直接埋設などを思い切って進めたいものです。  今度こそ、真に実効性ある「特区」でアベノミクスの三本目の矢、成長戦略を本物にしていかねばなりません。想像力と突破力で勝負です。 (衆議院議員/自民党広報本部長)

小池百合子のMOTTAINAI 中東の古くて新しい動き。100年前の地図に戻る?

2014.07.07 Vol.621
 2010年頃から始まった「アラブの春」による砂嵐は、いまだ各地で吹き荒れ、視界不良が続いています。   発端となったチュニジアで、大学を出てもろくな仕事にもありつけない若者の焼身自殺が「ジャスミン革命」へ発展し、23年間続いたベン・アリ政権が崩壊。エジプトでも30年以上続いたムバラク大統領が失脚し、ムスリム同胞団系のムルシー大統領が選出されました。しかし、巻き返しを図る勢力や政権交代に失望した国民とともに軍出身のシーシー大統領による政権が樹立され、安定への挑戦が始まったばかりです。  同じ北アフリカのリビアも独裁者の名をほしいままにしてきたカダフィー大佐の殺害後も、各地の部族勢力やイスラム主義者が内戦時に蔓延した武器で闘いを続けています。  シリアにいたっては、激しい内戦によって総人口の半分が難民化し、隣国のヨルダン、レバノンなどに大量の難民が流出しています。トルコに避難した150万人に上るシリア難民のうち約40万人は就学すべき子どもたち。アラビア語を母国語とするシリアの子どもたちはトルコ語による現地の学校では学べません。このまま教育も受けられず、スキルもなく、ただ歳を重ねるようでは、一生難民生活を送るしかなくなります。  かのスティーブ・ジョブスは父親がシリア人です。留学先のアメリカで知り合った女性との間に生まれました。もし彼がシリアで生まれ、育っていたなら、銃を手に闘っていたかもしれません。  私は5月にシリア難民支援議員連盟の会長としてトルコにおけるシリア難民の状況を視察し、子どもたちのための学校設立を検討しています。クラウド・ファンディングを通じ、皆様のご協力もお願いする予定です。  シリア難民は同じく隣国のイラクにも逃れていますが、そのイラクの情勢も宗派闘争やクルド族の動きが重なり、日に日に悪化しています。 イラクでは過激なスンニ派武装集団による「イスラム国家」の樹立宣言でイラク分割が現実味を帯びてきました。  100年前、イギリスとフランスの密約(サイクス・ピコ協定)によりオスマン・トルコ分割が行われましたが、地図上に直線で無理やり引かれた国境は現地の住民にとっては居心地の悪いものでした。1世紀を経て、世界は逆戻りをし始めたかのようです。   アジアも激動のど真ん中。日本もしっかりとした立ち位置を確保したいものです。 (衆議院議員/自民党広報本部長)

Copyrighted Image