小池百合子のMOTTAINAI TPPは日本経済に喝!を入れるチャンス 

 TPP・環太平洋パートナーシップ協定がロングラン交渉を経て、ついに大筋合意に至りました。長年、交渉にあたってきた甘利明担当大臣の髪もいつしか真っ白に。まことにご苦労様でした。

 2006年のスタート時点ではシンガポール,ニュージーランド,チリ、ブルネイの4か国(P4)という比較的小規模の経済協定という小舟による船出でしたが、2010年3月に米国、豪州、ペルー、ベトナムの8カ国が参加。加えてマレーシア、メキシコ、カナダ、そして日本が交渉に参加したことで一気に大船団へと大化けしました。

 その経済規模は、EUを凌ぐ世界の国内総生産(GDP)の4割を占め、世界経済に与える影響は極めて大です。このところ停滞気味の「アベノミクス」ですが、TPPという強力な援軍を得たといえます。太平洋を挟んだ12か国でモノや人材、サービスのやりとりが盛んになり、国際標準作りも期待できます。

 少子化で毎年人口が20万人規模の純減で経済のパイが小さくなる一方の日本の国内市場に「喝!」といったところでしょう。TPPを実施するリスクと参加しないリスクを秤にかければ、不参加のリスクは圧倒的に大きいといえます。

 牛肉の関税は現在38.5%ですが、TPP発効1年目に27.5%に、その後も段階的に引き下げられ、16年目には9%に。87tの国内供給量のうち、52万tが豪州、米国、ニュージーランドからの輸入ですが、牛丼などの値下がりが期待されるところです。ただし、デフレ対策には逆行し、プラス・マイナスでしょうか。

 しかし、日本の酪農家にとっては現時点でプラス材料を見つけることは正直、困難です。生き物相手だけに、手が抜けず、機械化も限度があります。芸術品の域に達している日本の牛肉をマーケティングの徹底などでブランド化し、高付加価値が享受できるよう、しっかり応援したいと思います。

 コメも同様です。中国の某指導者の妻が訪日した際、トン単位で日本のコメを爆買いしたと聞きました。世界のすしブームを背景に、「本格的なすしは日本米でないと…」といった常識を作り、海外への販路も確保することです。イタリア料理店で本場のパスタを売りにしているのと同じです。

 TPPが実施されようが、されまいが正念場を迎えている日本の農業を大転換するチャンスでもあります。棚田保全など課題もありますが、産業、保水、景観、福祉など分野別の農業政策を強力に進めたいものです。(自民党衆議院議員)