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100年に一度の「戦争と疫病」の危機を乗り越えるために【長島昭久のリアリズム】

2022.05.11 Vol.web Original

 新型コロナ禍はついに3年目を迎え、多くの尊い命が失われると共に、私たちの生活を直撃しました。加えて、2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵略は、戦後の国際秩序を根底から覆し、ロシアに対する経済制裁と相まって世界経済に深刻な打撃を与えています。

 この第二次世界大戦以来の動乱は、ロシアと同じような権威主義的な統治により尖閣の領有や台湾の併合を公言する中国や、核やミサイルを誇示する北朝鮮を刺激することにより、我が国に戦後最大の地政学的な脅威を突き付けることになるでしょう。

ウクライナ戦争の教訓とは何か

 ウクライナ戦争は、第一に「力による一方的な現状変更」が実際に起こり得ること、第二に抑止力を持たなければ、侵略者を止めることができないこと、第三に何よりも自助努力が重要であり、それなしに同盟協力も国際社会の支援も受けられないこと、など我が国にとり多くの教訓を示しています。

 ロシアの侵略以前から「台湾有事」勃発のリスクが高まっていることが懸念されており、戦後の安全保障政策を抜本的に改める必要性を国民の多くが感じ始めています。政府与党では、年末までに『国家安全保障戦略』と『防衛計画の大綱』や『中期防衛力整備計画』を改定するための議論をすでに始めています。

我が国の安全保障で決定的に足りないのは何か?

 私は、党内議論を通じて、現状の防衛力(抑止力と対処力)で決定的に不足している次の3つの点について繰り返し強調してきました。それは、昨夏に行われ(NHKでもたびたび放映され)私も参加した「台湾有事シミュレーション」によって浮き彫りにされた不都合な真実でもあります。

 第一に、サイバー防御態勢が致命的に貧弱であること。すなわち、単に自分たちのネット環境を守るだけではなく、潜在的な攻撃国のサーバーを常時監視する「積極サイバー防護」(ACD)を可能にする法整備が急務です。第二に、我が国を射程に収める2000発を超える弾道・巡航ミサイルに対して、有効な反撃力(抑止力)を持たないこと。日米のミサイル防衛態勢は、中露はもとよりすでに北朝鮮のミサイル攻撃にも太刀打ちできないのが実態です。反撃力の整備なくして、国民の命と平和な暮らしを守り抜くことはできません。

経済や資源エネルギー、食糧安全保障の確立を急げ!

 第三は、中露が仕掛けてくる「ハイブリッド戦」に対応するための態勢がきわめて脆弱です。陸海空という伝統的な戦域に加えて、宇宙、サイバー、電磁波という新たな領域における防衛態勢を確立するには、省庁横断の政府全体の取り組み、官民の連携、軍事・非軍事手段の融合などが不可欠です。安全保障には、軍事だけでなく、金融や経済(サプライチェーン)、資源エネルギー、食糧、社会インフラの強靭性を確立することも求められます。防衛費がGDP比で何%になるかというのは目標ではなく、我が国を守るために必要な経費を積み上げた結果に過ぎません。

 私は、政治を志した約30年前から、日本で憲法学を修め、本場の米国では国際関係や安全保障を学び、外交シンクタンクで政策立案を経験し、帰国後は、与野党の立場を通じて一貫して外交・安全保障政策に取り組んで来ました。まさしく、この時のために準備に準備を重ねて来たと自負しており、党内外の議論を積極的にリードしていく所存です。

将来世代への責任を果たす

 私が安全保障と同じくらいエネルギーを投入しているもう一つの政策分野は、子どもたちの未来保障です。とくに、コロナ禍で追い詰められた困窮する子育て家庭、とりわけ、ひとり親家庭に対する支援に全力を傾けてきました。とくに、昨秋の衆院選直後から、児童の養護と子どもの未来を考える議員連盟の会長として、「児童虐待ゼロ」をめざし児童家庭福祉の現場を抜本的に立て直すための児童福祉法改正案の取りまとめに奔走しました。

 また、「こども家庭庁」の創設や「こども基本法」案の策定、「こども宅食」制度の創設に深くコミットし、超党派の仲間たちと共に、子どもの育ちや学びに暗い影を落とす①虐待、②貧困、③いじめ、④不登校などの抜本解決に政治生命を賭けて取り組んできました。

「未来に誇れる日本」へ、緊縮財政と戦います!

 国の主権や領土を守る安全保障、子どもの未来を守る未来保障のためには、たとえ国債を発行してでも必要な財源を確保する必要があります。国民生活であれ安全保障であれ、必要不可欠な財源は政府の責任で確保するとの信念に基づき、緊縮財政路線とは明確な一線を画してまいります。

 すべては、将来世代のために。

ウクライナ戦争と日本-積極財政で日本をもっと勁く!【長島昭久のリアリズム】

2022.04.13 Vol.web Original

 ウクライナ戦争が終わりません。むしろ、日に日に状況が悪化しています。首都キーウ攻略に失敗し撤退したロシア軍の後に残された侵略の爪痕ー無残にも、おびただしい数の無辜の人々の遺体が路上に放置された映像-に、世界が戦慄しました。

 すでに、総人口の1割を超える400万人ものウクライナの人々が、家を壊され、肉親を失い、国を追われて、近隣諸国への避難を余儀なくされています。我が国もその避難民を400名以上受け入れていますが、これも前例のない措置です。さらに、大規模な経済制裁により、エネルギーや穀物価格が高騰し、私たちの生活を直撃しています。

 私たちは、何としてもこの戦争を一日も早く終わらせるべく全力を尽くすとともに、ウクライナ戦争から得た教訓に基づき、現実的な安全保障、経済、資源エネルギー政策を遂行していかねばなりません。

 教訓の第一は、他国による侵略を許さない確固たる国防努力を怠らないということです。ウクライナ戦争はロシアの弱体化をもたらすことになると考えますが、我が国周辺には、依然として北朝鮮の核とミサイル脅威、強大な軍事力を背景に強硬な対外姿勢を誇示する中国が厳然と存在し、これらに対する適時的確な対応が求められます。とくに、日本全土を射程に収める1900発の地上発射型中距離弾道ミサイル、300発の中距離巡航ミサイル(一部は核弾頭搭載)に対抗しうる同様の中距離ミサイル戦力は、日米にはありません。つまり、有効な反撃手段を持たないということです。反撃できないというのでは、抑止力にはなりません。

 じつは、これは我が国防衛をめぐる課題のほんの氷山の一角なのです。従来型の陸海空のアセットはもとより、サイバー、宇宙、電磁波といった新領域における我が国の対処能力は不十分ですし、燃料や弾薬の備蓄、基地や施設の抗堪性にも様々な課題を抱えています。今回のウクライナ戦争によって文字通り覚醒したドイツ(しかも、左派の社民党と緑の党の連立政権!)が、国防予算をGDP比で1.4から2%に引き上げ、抜本的な国防改革に着手したように、我が国も5年程度で防衛予算をGDP比2%水準まで引き上げて、上述のような積年の課題を克服しなければなりません。

 第二の教訓として、「力による現状変更」を行う可能性のある国への、過度な依存を見直さねばならないと考えます。代表的なのが天然ガスですが、経済産業省は、石油・液化天然ガス、半導体製造に必要なネオンなどの希少なガス、排ガス浄化に使われるパラジウムなど、ロシアやウクライナへの依存度が高く対策が必要な戦略物資が7品目あると公表しています。

 これが中国となるとさらに深刻です。最新の内閣府報告書『世界経済の潮流』によれば、我が国が中国からのシェアが5割以上を占める「集中的供給財」はじつに1000品目を超え、中国からの全輸入品目の23%に上ると算出。これらの物資の供給が滞った場合のリスクは、米独と比較しても莫大なものとなると警鐘を鳴らしています。

 課題解決のためには、サプライチェーンの再編が急務です。具体的には、別の調達先を探したり、使用量を節減する技術開発を推進していくことになりますが、いずれにしても政府が本腰を入れて支援していかねばなりません。

 そのためには、思い切った財政政策が必要です。いうまでもなく、防衛費の増額にもサプライチェーンの再編にも、相応の予算措置が必要となります。しかし、1220兆円もの巨額の財政赤字を抱える日本のどこにそんなカネがあるのか、という懸念の声には根強いものがあります。

 心配はご無用です。我が国財政は、米英独仏と比べても極めて健全なのです。下の図は、IMF(国際通貨基金)が作成した中央政府・地方政府・中央銀行等、政府関係機関を合わせた国全体のバランスシートの国際比較です。

令和4年壬寅。年男、国政への決意新たに(その一)【長島昭久のリアリズム】

2022.02.24 Vol.web Original

 

 年初から猛威を振るうオミクロン株により全国で感染者が拡大しました。2月初旬になってようやく、専門家の間でもピークアウトとの観測が広がってきましたが、まだまだ最前線の病院や保健所機能が切迫する油断できない情勢が続いています。また、外にあっては、ウクライナをめぐる混沌、北朝鮮の度重なるミサイル発射など、世界情勢の混迷は深まるばかりです。

 そのような中で、衆議院における令和4年度予算案の審議は順調に進み、論戦の舞台は参議院に移りました。一日も早く可決成立させ、コロナ禍で苦しむ飲食や旅行業界、さらには子育て世帯に対する必要な支援を的確に届けられるよう全力を挙げてまいります。

 今年は、7月に参院選という政治決戦を控えておりますが、国家の基本政策においてもこれまで積み残されてきた重要な課題を解決すべき大事な年でもあります。私は、少なくとも以下の4つのテーマに全身全霊で取り組んでまいります。

①包括的な経済安全保障法制
②こども家庭庁の創設と児童福祉法の改正
③国家安全保障戦略の改定
④憲法改正と皇室典範の改正

 まず、今国会で成立させねばならない二つの重要法案について、私の考え方を述べたいと思います。第一に、「経済安全保障推進法案」です。大きく4つの経済社会的分野から我が国の安全保障を揺るがす深刻な懸念を払拭しようとするものです。すなわち、(1)サプライチェーンの強靭化、(2)基幹インフラ防護、(3)先端技術の官民協力、(4)特許の非公開です。

(1)サプライチェーンでは、とくにコロナ禍対策で露呈した半導体や医薬品などの経済活動や国民生活に不可欠な戦略物資について、輸入や販売、調達、保管状況などを国が厳重に管理する方針です。(2)基幹インフラの防護は、主として外国勢力によるサイバー攻撃等を念頭に、電気、ガス、水道など14分野の防護体制を立て直します。(3)先端技術をめぐっては、官民協議会を立ち上げて、官民が緊密に連携して研究開発を促進できる環境を醸成しつつ、民間人にも国際標準の罰則付き守秘義務を課して機微技術情報を守り抜く体制を構築します。その上で、(4)特許の一部を非公開にすることにより、安全保障上極めて機微な発明等を保護していきます。

 これまでのような、技術流出や情報漏洩、サイバー攻撃に無防備だった我が国の姿勢を大きく転換する重大な法整備ですので、野党や経済界の一部から出ている「骨抜き論」に屈することなく、心して国会審議に臨んでまいります。

 第二は、私がライフワークで取り組んできた子ども達の未来保障の根幹に関わる児童福祉法の改正です。そして、もう一つのライフワークである外交・安全保障分野においては、まさしく10年に一度の大きな改革の年を迎えました。すなわち、年末までに国家安全保障戦略、防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画の「戦略3文書」同時改定を行わねばなりません。さらに、今年は、国政の根本法である憲法の改正と、日本国(が日本国であるため)の根本法である皇室典範の改正について、真剣に議論を深めるべき重要な年と考えております。衆議院の特別委員長を拝命した北朝鮮による拉致問題の解決に向けた努力とともに真剣に取り組んで参ります。

 以上3つのテーマについては、稿を改めて「令和4年壬寅。年男、国政への決意新たに(その二)」で論じたいと思います。

謹んで新春のお慶びを申し上げます。【長島昭久のリアリズム】

2022.01.10 Vol.749

 昨年は、激闘の選挙戦をお支えいただき、心より感謝申し上げます。

 お蔭さまで、7期目の国政へ送っていただくことができました。

 早速、衆議院拉致問題特別委員長を拝命するとともに、長く自民党の子ども政策を担ってこられた塩崎恭久元厚労相より「児童の養護と子どもの未来を考える議員連盟」の会長を引き継ぐこととなりました。

 今年は、先ず、国政を志した原点である安全保障と、10年来取り組んできた子どもたちの未来保障を基軸として国会活動を展開してまいります。

 安全保障では、現実の危機が差し迫っている台湾有事に的確な対応ができるよう、国家安全保障戦略や防衛計画の大綱の改定プロセスにおいて積極的な役割を果たしてまいります。さらに、未来保障では、痛ましい児童虐待事件を根絶するため、専門性の高い「子ども家庭福祉士」の国家資格化や「子ども基本法」の制定に全力を挙げるとともに、新設される「子ども家庭庁」に十分な予算と権限が確保できるよう党内論議を喚起してまいります。

 また、経済政策では、党内有志の勉強会である「経世済民研究会」を中心に、デフレ脱却を実現するため、金融、財政のあらゆる政策手段を駆使するよう引き続き政府に働きかけてまいります。とくに、米国における短期的なインフレ傾向に引きずられて我が国の金融政策が引き締めに転じぬよう日銀の人事にも目を配りながら、国民の暮らしと雇用を守り、新たな成長の基盤を整えるため、「緊縮派」との政策論争に打ち勝つようしっかり準備してまいります。

 さらに、長年たな晒しとなってきた憲法改正の実現に向けて国民的論議を盛り上げてまいると同時に、安定的な皇位継承の確立に向けた法的・制度的な環境整備に全力を傾けてまいります。憲法改正をめぐっては、昨年末に私の選挙区内(東京18区:府中市、武蔵野市、小金井市)に発足させた「憲法改正国民投票連絡会議」を通じて啓発活動を活発化させてまいります。皇位継承については、安易な「女系容認」論など我が国の歴史と伝統を破壊しかねない議論に対するしっかりとした主張を展開してまいります。

 最後に、衆議院の拉致問題特別委員長として、北朝鮮による拉致被害者の一括全員帰国の早期実現に向け、近年停滞してきた国会における調査活動を活発化させると共に、映画『めぐみへの誓い』の上映会などを通じて、拉致問題を絶対に風化させぬよう、粘り強い国民運動の先頭に立ってまいる所存です。

 以上、激動する内外情勢に立ち向かい、引き続き地域の課題に取り組むと共に、国政を前に進めていくために全力を尽くしてまいることをお誓い申し上げ、年頭のご挨拶とさせていただきます。今年もよろしくお願いします。

 令和4年壬寅 元旦

 衆議院議員 長島昭久拝

米国の急激なアジア・シフトにどう対応するか?【長島昭久のリアリズム】

2021.10.11 Vol.746

 ここ1‐2か月のバイデン政権によるアジア・シフト—より正確には「対中戦略シフト」—が風雲急を告げています。我が国の戦略を考える上でも、現状を正確に把握しなければならないと思い筆を執りました。

 私たちの目に見える形でその戦略シフトが始まったのは、猛烈な批判にさらされた8月のアフガニスタン撤退です。あまりにも性急な米軍撤退(に伴う首都カブールの混乱ぶり)に、欧州はじめ国際社会のみならず米国内でも野党共和党や米軍関係者からも怒りの声が上がりました。しかし、この行動の目的は明確です。20年間に2兆ドルもの国費(1日300億円!)と約6500人に上る犠牲者(米兵約2500人、契約民間人約4000人)を出した途轍もない「重荷」を降ろして、アメリカの持てる国力を今世紀最大のライバルである中国との戦略的競争に振り向けよう、という一点に尽きるのです。

 その後、突然発表されたのが、AUKUSです。豪州のAU、英国のUK、アメリカのUSをつなげた名称が表すように米英豪3か国による新たな安全保障協力です。そこでは、豪州とフランスとの間で進められていた通常駆動型の潜水艦建造計画が破棄され、米英の有する原子力潜水艦技術を豪州に供与することが発表されたのです。当然フランスは猛反発しましたが、後の祭りです。ずいぶん乱暴な進め方ではありますが、それくらい事態は切迫していると見るべきでしょう。

 その動きと前後する形で、英国からは空母「クイーン・エリザベス」を中心とする空母打撃部隊がインド洋を超えて南シナ海から西太平洋海域へやってきて、我が国海上自衛隊の軽空母「いせ」や米海軍の強襲揚陸艦「アメリカ」などと共同訓練を行いました。そこには、米海兵隊と英空軍のF-35Bと航空自衛隊のF-35Aという最新鋭戦闘機も参加しました。その後、日米英豪の海軍合同演習も行われました。

 そして、9月いっぱいで退陣する菅義偉総理が訪米し、ワシントンにおいてQUADと呼ばれる日米豪印4か国の首脳会議が初めてリアルで行われたのです。QUADでは、インドの対外姿勢を慮って軍事面を強調することは避けつつも、4か国の経済、技術、気候変動などにおける幅広い協調と結束を確認する有意義な会議となりました。

 これらの動きに通底する共通目標は、中国との戦略的競争を同盟国・同志国により優位に進めるための足場固めです。(そこに秘められた軍事的な意味合いについては稿を改めて論じます。)

 新たに選出される総理総裁および新内閣は、このような我が国を取り巻く戦略環境の激しい変化を見据えつつ、国民の命と平和な暮らしを守るという崇高な使命を全うしていかねばなりません。

(衆議院議員 長島昭久)※本稿は、9/29自民党総裁選の前に書かれました。

米軍のアフガニスタン撤退の教訓【長島昭久のリアリズム】

2021.09.13 Vol.745

 8月15日、アフガニスタンの首都カブールがタリバンの猛攻を受けて陥落しました。丸20年に及ぶ米国をはじめ有志連合によるアフガニスタン戦争のあっけない幕切れです。

 米国は、2001年以来、2兆ドルの巨費を投じ、ピーク時には13万人の有志連合軍を指揮し、約2500人に上る犠牲者を出しながら、30万人のアフガン政府治安部隊を育成し、精密な最新兵器や空軍力を駆使しましたが、はるかに装備の劣る8万人弱のタリバンを屈服させられませんでした。

 バイデン大統領は、この米国史上「最も長い戦争」を強引に終わらせたのです。手段の巧拙は別として、バイデン政権の意図は明々白々でした。今世紀における米国最大のライバルである中国との戦略的競争を勝ち抜くために、余計な重荷を降ろして全ての国力を東アジア・西太平洋正面へシフトさせようとするものです。

 カブール陥落の翌日、ホワイトハウスから声明を発したバイデン大統領は、「アメリカ軍は、自分たちのために戦おうとしない戦争で、戦って死ぬことはできないし、そうすべきでもない」と述べました。

 これは、直接的には、まともに戦わず四散逃亡したガニ大統領はじめアフガン政府首脳や治安部隊に向けられた言葉であることは間違いないのですが、もう少し広いインプリケーション(含意)があると考えた方がよいのではないでしょうか。

 この言葉は、今後の尖閣諸島にも、台湾にも、朝鮮半島にも、南シナ海情勢にも十分当てはまると思います。すでに米国一強時代は過ぎ去りました。軍事介入によって局面を打開しようと考えても、それを支えるリソース(能力、財源、国民の支持)がなければ諦めざるを得ません。したがって、今後の紛争や危機においては、当事国の意志と米国の支援リソースとのにらみ合いが顕著になると覚悟すべきです。結局、「自分の国は自分で守るべし」というシンプルな教訓、これが第一です。

 第二の教訓は、カブール陥落直後に中国から発せられた「警告」に関連します。17日付の『環球時報』(中国共産党機関紙『人民日報』系列紙)英語版は、「台湾当局がアフガニスタンからくみ取るべき教訓」との社説を掲載。「米国がアフガン政府を見捨てたことに最も衝撃を受けているのは台湾だ」と指摘しました。この意図も明らかです。アフガンから撤退した米国の信頼性をことさら傷つけ、同盟国や友好国との間に疑心暗鬼を起こさせ離反させようとしているのです。我が国はじめ米国の同盟国は、このような中国の意図に引っかからないようにすべきでしょう。

 私たちは、米国の意志と能力の限界をリアルに見据えながら、自助努力を怠らず、かつ、米国への対抗心に燃える中国が喧伝する「東昇西降」(弱体化する米国に代わって中国が覇権を握る)のナラティヴに翻弄されないようにせねばなりません。

(衆議院議員 長島昭久)

台湾海峡は日本防衛の最前線【長島昭久のリアリズム】

2021.08.09 Vol.744

 去る7月29日、衆議院議員会館の国際会議場において、国会最大の超党派議員連盟である「日華議員懇談会」主催の日本・台湾・アメリカ議会議員戦略対話が開催されました。議連の副会長を務める私もフル出席しました。ゲスト・スピーカーとして安倍晋三前総理を迎え、台湾から游錫堃立法院長(国会議長)はじめ超党派議員、アメリカ連邦議会からは駐日大使から転身したウィリアム・ハガティ上院議員はじめ上下両院議員有志がオンラインで参加し、約2時間活発な意見交換が行われました。

 今年に入り、3月の日米外務防衛閣僚会議(通称2+2)を皮切りに4月の日米首脳会談、6月のG7サミットなどで繰り返し「台湾海峡の平和と安定」の重要性が共同声明や合意文書に明記されました。一方、3月には、米議会証言で新旧の米インド太平洋軍総司令官が「台湾有事は大多数が考えているより差し迫っている」との見通しを示すなど、台湾海峡をめぐる緊張が日に日に高まっています。そのような中で、日台米の議会人による戦略対話が行われたことは大変意義深いことです。

 戦略対話は、内外で強硬姿勢を誇示する習近平政権の意図や目的、そしてその及ぼす影響などに議論が集中しました。中国が独自の世界観や価値観に基づく新たなインド太平洋の国際秩序を確立しようとしていることは明らかです。アメリカ主導の対中関与政策が描いていた平和的な台頭の期待は見事に裏切られ、今やより専横的でより覇権的となった中国が、ソフト、ハード、スマート・パワーを駆使して域内の自由や民主主義、法の支配を圧迫している構図が鮮明となっています。

 外交、軍事、経済、技術など領域横断的な中国の攻勢を前に、日台米3か国をはじめ自由民主主義陣営がとり得る選択はたった一つ。私たちが謳歌している自由や民主主義への圧迫を座視することなく、その価値観を守り抜く意志と能力を明確に示すことに他なりません。

 そのせめぎ合い最前線が台湾海峡なのです。その台湾海峡の平和と安定へのコミットメントを繰り返し表明してきた日本は、今度は、言葉だけでなくそれを実現するための具体的な行動を内外に示さねばなりません。そのためには、第一に、中国が過信や誤算に基づいて台湾へ軍事侵攻を試みるようなことのないよう確固とした抑止力を示すことです。第二に重要なのは、抑止が崩れ、台湾海峡で不測の事態が勃発した場合の日台米による共同行動を効果的なものにするための様々な準備です。

 しかし、周知のとおり、日台、米台間に正式な国交はありません。とくに、台湾有事を考えた時、日台間に、日米安全保障条約や米国の台湾関係法のような軍事的な協力を可能にする法的枠組みがない現状は、3か国の共同行動において致命的な障害となるでしょう。そのような現状を放置したままで台湾有事が勃発すれば、台湾に在留する邦人約2万人の生命と財産を守るという国家として最低限の責任を果たすことも覚束ないでしょう。

 私たちに必要なのは、今そこにある危機のリアルを直視し、あらゆる可能性に対応し得る周到な準備を積み重ね、足りないモノやコトを炙り出し手遅れになる前に制度や能力を更新することです。焦眉の急です。                    

(衆議院議員 長島昭久)

改めて皇位継承問題を考える(その四・完)【長島昭久のリアリズム】

2021.07.12 Vol.743

 前回の最後に述べた皇室典範の改正については、私も国政に参画する一人として真剣に取り組む覚悟です。さらにもう一つ大事なことは、「伏見宮」家はつい70年前まで皇位継承資格を持つ皇室の「藩屏」として確かに由緒正しいお血筋には間違いないけれど、その中からどのようにして皇室にふさわしい方をお迎えするか、という問題です。結論から申せば、その際には、皇室典範の規定に従い、三権の長と皇族で構成される皇室会議の議論に委ねるべきでしょう。

 ここで一つ紹介しておきたいのですが、一九四六年に十一宮家が皇籍離脱する際、当時の加藤進宮内府次長が重臣会議の席上、皇籍を離れる旧宮家の方々を前にして、「(今後)万が一にも皇位を継ぐ時が来るかもしれないとのご自覚のもとで、身をお慎みになってご生活いただきたい」と述べたというのです。実際、そのようにお慎みになっている方は、例えば東久邇家や賀陽家などにいらっしゃるようです。

 このような議論をすると、「当人の意向を確認したのか」と言う人がいます。しかし、皇籍取得の制度もできていないのに、いきなり尋ねて、「じゃあ、私がやります」なんて言う方はいないですよね。だからこそ私たちには体制を整備する責務があるのです。いずれにせよ、私たちが培ってきた二千年の歴史を、今後とも引き継いでいく方策は十分にあるのだということを、ぜひこの機会に皆さんと共有したいものです。

 もちろん皇籍を取得されるか否かは、慎重の上にも慎重な意思確認が必要です。この際、傍系としての宮家の役割は極めて重要です。直系が行き詰まった時、皇統を引き継ぐために特別の宮家として「世襲親王家」が創設され、天皇家の歴史はずっと続いてきました。

 たしかに「皇位継承は、男性であろうが女性であろうが、直系であるべき」と言う直系優先の考え方もあります。「男系男子に拘れば、やがて皇統が途絶えてしまう」と。しかし、じつは直系優先のほうが、お妃様にかかる出産のプレッシャーは甚大でしょう。むしろ、三つ四つの傍系が準備されていれば、いずれかの家に男子が生まれる可能性があるわけですから、その意味で直系のお妃様が追い詰められなくて済みます。これこそが、歴史の知恵だと思います。

 率直に申せば、二千年以上も続いてきた歴史と伝統を、私たちの代で安易に放棄してしまうなどということは、まさに畏れ多いと言わねばなりません。百年後に振り返った時、「なんだ、これは正統性がないではないか」という批判に必ずさらされるでしょう。その時にはもはや取返しがつきません。皇統の正統性は破壊され、日本が日本でなくなってしまうのです。

 歴史の関頭に立つ私たちには、国家の大本たる皇統二千年余の歴史を踏まえた謙虚な姿勢こそが求められると考えます。

(衆議院議員 長島昭久)

改めて皇位継承問題を考える(その三)【長島昭久のリアリズム】

2021.06.14 Vol.742

 

 前回までに、我が国古来2000年にわたる皇位継承の歴史的大原則である血統原理に基づく「男系継承」の尊さと、それを貫徹するために幾度もの危機を乗り越える過程で編み出された「直系を補う傍系継承」という知恵について述べさせていただきました。その上で、今日直面する皇位継承の危機を克服するために、約600年遡り「伏見宮」系のご子孫を皇室にお迎えすることを提唱させていただきました。

 ただし、GHQ指令に基づくものとはいえ70年以上も前に皇籍離脱した方々のご子孫を、いきなり皇室に迎えるとなると様々な議論が出てくることでしょう。そこで、成人された方々をいきなり皇籍復帰させるのではなく、例えば、旧宮家に連なる十歳前後の男児の方を現皇室に養子としてお迎えし、その宮家を継承していただくということも考えられるのではないでしょうか。幸い、伏見宮系の旧宮家には、五歳とか七歳とかのお子さんも複数いらっしゃいます。こういう方たちに皇室に入っていただいて、帝王学を学んでいただければ、将来、立派な皇位継承資格者になられると考えます。

 そもそも宮家や親王家というのは、「皇統の藩屏」といって男系男子の血筋を保存する〝フェールセーフ〟の仕組みです。もし天皇にお子様が生まれなかった場合、男系皇統を守るために直系に代わって「傍系」が皇位を継承する。こうして万世一系を貫いてきたのが日本の歴史なのです。

 歴史を紐解けば、「傍系継承」で男系継承を維持した先例が少なくとも10例あります。最初が第22代清寧天皇から6親等を隔て祖父の兄の孫である顕宗天皇への継承です。2例目が、有名な第25代武烈天皇から継体天皇への継承です。当時の大連(最高実力者)大伴金村の叡慮によって、武烈天皇から見て10親等を隔てた高祖父の弟の玄孫たる男大迹王(おおどのみこ)を越前に尋ね求めて継体天皇として即位せしめたのです。最近では、第118代後桃園天皇から光格天皇への継承が、7親等を隔てた傍系継承となります。

 今日、この「傍系」の役割を復活させるためには、皇室典範の改正をしなければなりません。一つは、典範第九条です。同条が禁ずる「皇族の養子」を条件付きで緩和する必要があります。ところで、明治の典範制定時、その中心的役割を担った井上毅は、皇族内の養子は「皇統の紊乱につながる」と考え、これを禁じました(旧典範第四十二条)。しかし、宮家間の養子を禁ずることによって、近代以降、男系男子を当主とする宮家が次々に廃絶に追い込まれてしまいました。紊乱を防ごうとするあまり、皇統の先細りを招いてしまったのでは、それこそ本末転倒です。

 もう一つは、典範十五条の改正です。旧宮家といっても、その子孫の方々には皇籍に復帰するのではなく、新たに取得していただかなければなりません。つまり皇籍を取得する「特例」を設ける必要があります。(つづく)(衆議院議員 長島昭久)

改めて皇位継承問題を考える(その二)【長島昭久のリアリズム】

2021.05.10 Vol.741

 

 歴史上、たしかに10代8方の女性天皇(女帝)がおられます。しかし、歴史的経緯を子細に見てみれば、これらはあくまで例外の「中継ぎ」であることがわかります。しかも、すべて男系であり、即位後に婿も取られず、子も産んでおられません。すなわち、皇位は、男系継承が古来例外なく維持されてきたのであって、女系に道を開くようなことは厳格かつ慎重に避けられてきました。これが揺るぎない皇統の大原則なのです。

 なぜ女系が許されないのか。それは至極簡単な理屈です。女系というのは父が皇統に属さない天皇のことで、これを認めれば別の王朝(易姓革命)となってしまうからです。我が国は建国以来、世界で唯一の単一王朝(万世一系)であって、まさにそのことが“ありがたい”のです。つまり、皇位は血統こそが正統性の源ですから、神話の世界も含めて二千年の時を遡って神武天皇に繋がっていることの“ありがたみ”というものが、天皇の権威の大本になっているのだと私は思います。

 しかし、この大原則が、ただ“ありがたい”ものだと受け身で、何らの努力もなく自然に任せて貫かれてきたわけではありません。皇位継承の歴史を紐解けば、過去に7度、男系断絶(すなわち、皇統断絶)の危機があったといいます。そのつど、先人たちが苦心惨憺し危機を乗り越えてきました。直系の皇子がおられない場合は、傍系を何代にもわたり遡ってでも男系男子を見つけ出し、皇位を引き継いできたのです。200年も遡り、越前にいらっしゃった(男系の)王を探し出して皇位に就いていただいたのが継体天皇ですが、これなどがまさにその典型例です。こうした苦労に苦心を重ねながら、今日に至るまで、万世一系という血統原理を貫いてきたのが、我が国の天皇の歴史です。

 しかし、「守れればいいけれど、男子がお生まれでないのだから、女帝でも女系でも仕方がないではないか」というのが、女性宮家論や、女系天皇容認論です。

 果たして、本当に「仕方がない」のでしょうか。

 じつは、皇位継承資格をお持ちの男系男子は現にいらっしゃるのです。正確には、74年前までいらっしゃいました。それは、戦後、GHQの命令によって皇籍を離脱せざるを得なかった、「伏見宮」系の11家51人の方々です。

 確かに、今の皇室から見て600年前に分かれた伏見宮系の方々では血縁が遠すぎるのではないか、皇籍離脱してもう70年余も一般人として生活しているのだから国民の理解は得られないのではないか、などという声はあります。

 しかし、敢えて私が申し上げたいのは、600年も遡れるお血筋が存在することこそが“ありがたい”のではないか、ということなのです。それが、男系の血統を受け継ぎ、しかも74年前まで皇位継承の資格を持っていた旧宮家の方々なのです。(つづく)

(衆議院議員 長島昭久)

改めて皇位継承問題について考える(その一)【長島昭久のリアリズム】

2021.04.12 Vol.740

 

 政府は3月23日、「安定的な皇位継承策を議論する有識者会議」の初会合を首相官邸で開きました。会議の座長に清家篤・前慶應義塾長を互選で決定。次回以降、法律や歴史などの専門家からヒアリングを行うことを確認しました。皇位継承資格を女性皇族に広げるか、女性皇族が結婚後も皇室に残る「女性宮家」を認めるか、などが主な論点となるとされていますが、戦後に皇室を離れた旧宮家の男系男子孫が復帰する案の是非についても検討するとのことです。

 そもそも上皇陛下のご譲位を実現した皇室典範特例法の付帯決議は、安定的な皇位継承などの検討をご譲位後「速やかに」行うよう政府に求めておりました。政府は、コロナ禍で延期された「立皇嗣の礼」が無事挙行されたことを受け、それまで有識者への非公式ヒヤリングを水面下で重ねてきましたが、ようやく正式な有識者会議の発足に踏み切ったのです。議論の結果は、上記付帯決議に基づき国会に報告されることになります。

 そこで、今回から5回にわたり、安定的な皇位継承をどのように実現するかにつき、改めて私見を整理しておきたいと思います。とくに、令和2年11月8日、秋篠宮文仁親王殿下が皇位継承順位第一位であることを内外に宣言する「立皇嗣の礼」が行われ、お子様である悠仁親王殿下へと皇位が継承されることが確定した今日、皇位継承問題は大きな節目を迎えました。

 たしかに、悠仁親王殿下は14歳ですから、順調にご成長なされば、皇室はあと70年くらいは安泰といえます。しかし、その後の男子皇族が一人もおられない。2000年余「万世一系」の下に継承されてきた皇統の存続が危機に直面しているといっても過言ではありません。このような国家の根本に関わる問題について、今に生きる私たちが何とか道筋をつけなければならず、これ以上の先送りは許されないと考えます。

 最大のポイントは、日本国憲法第2条に明記される「皇位は世襲である」こと、そして皇室典範第1条に定められた「皇統に属する男系の男子がこれを継承する」こと。これが皇位継承の大原則です。私たちに課された責任は、この大原則を守るためにどのような道筋をつけることができるかということに他なりません。

 明治の旧皇室典範を作る際、当時は英国式の「女帝論」が流行っていて、元老院でもそういった案が出ていたそうです。宮内省もそれに沿って研究していました。ところが、明治のスーパー官僚・井上毅が日本の歴史文書を渉猟した上で、「皇室継統ノ事ハ祖宗ノ大憲ノ在ルナリ。決シテ欧羅巴二模擬スヘキ二非ス」と断じて女帝容認を斥けました。「女帝」とは女系天皇のことであり、結局、井上を中心に「男系の男子」原則の皇室典範がまとめられ、戦後の現典範もそれを引き継いでいます。(つづく)

(衆議院議員 長島昭久)

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