将来世代のために、今なすべきことは何か?【長島昭久のリアリズム】

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 私たちは、こども達にどんな未来を残せるでしょうか。

 こどもの貧困や児童虐待、いじめ、不登校、教育機会の格差、若い世代を追い詰める奨学金の返済など、こども・子育てを取り巻く環境をこのままにしておくわけにはいきません。このままでは、こども達が大切な未来を失ってしまう!

 私は、この10年、焦る思いで、こども子育て政策に取り組んでまいりました。

こども達の「未来保障」に取り組んだ10年

 国内で子育て政策で頑張っている明石市(泉房穂市長=当時)や和光市(松本武洋市長=当時)、福岡市(高島宗一郎市長)などに足を運びました。里親さんとして何人ものこども達を育て上げたご夫妻のお宅にも伺いました。

 児童養護施設のクリスマス会や運動会には毎年お邪魔しています。また、国会でも、塩崎恭久元厚労大臣から引き継いで「児童養護・虐待防止のための超党派議連」の会長として、児童福祉法の改正やこども基本法の制定に取り組みました。

 そして、5年前、“世界で最も子育てしやすい国”フィンランドにも自費で視察に行きました。そこで見学した「ネウボラ」という子育てファミリー・サポート事業は、目から鱗と共に涙が出るほど感動的な制度でした。

 フィンランドの子育て家庭の98%が利用している無償のシステム「ネウボラ」は、昨年で創設100周年を迎えましたが、妊娠から出産を経て子どもが就学するまでの約7年間を、一人の保健師さん(かかりつけ)が健康診断を通じて家族丸ごと(親も兄弟姉妹も一緒に)ケアする仕組みです。7年間も同じ保健師さんが家族と接するわけですから、気軽に愚痴も言えるし、悩みや不安の相談もしやすく、家庭の中で親でも子でもリスクが生じたら、その保健師さんが早期発見、即対応で、責任をもって適切な専門的支援につなげてくれるから安心なのです。

 たしかに、似たような「切れ目のない伴走型」の子育て支援の仕組みを“日本版ネウボラ”と呼んで導入している自治体はありますが、一番の肝である「かかりつけの保健師さん」が一定期間同じ家庭をケアする真のネウボラ制度は、未だこの国にはありません。

リスクを抱えている子育て家庭は、総じて社会から孤立しがち

  たとえば、1歳半と3歳時に行う(法定)乳幼児健診。この健診会場に現れない親子が全国平均で約5%います。それ以外の95%の家庭は大丈夫だから、で済まされる問題ではありませんね。3~5歳で幼稚園にも保育園にも通っていないこどもの数も全体の約5%です。この5%の家庭こそが、リスクを抱えて地域コミュニティから孤立し、もしかしたら児童虐待など厳しい環境に置かれている可能性があり、緊急に支援を必要としているのです。

 就学前の幼児期における教育投資の重要性を訴えるノーベル経済学者ジェームズ・ヘックマン教授の言葉を借りるまでもなく、日本には「三つ子の魂、百まで」という諺があるように、幼児期における成育環境は、こども達の成長に決定的な影響を与えます。この頃の逆境体験が発達障害を引き起こしたり、心に深い傷を残したり、虐待の連鎖につながってしまうとされます。親子の愛着関係がとても大切な(妊娠期から)幼児期においては、どんな境遇に生まれたこどもでも「家庭的な養育を受けられるようにすべし」というのが、平成28年の改正児童福祉法の基本ビジョンで謳われていますが、この理念を制度として徹底せねばなりません。

確実に成果を挙げるフィンランドの「ネウボラ」制度

  そこで、このネウボラ制度なのです。ネウボラ保健師さん(もちろん、保育士さんでも研修を受けた子育て経験豊富な保育ママでもいいと思います)が、親御さんが不安や悩みを抱える妊娠期から0~2歳までの「不安定な3年間」に、効果的なサポートを提供してくれるはずです。じっさい、児童虐待によって失われるこどもの数は、日本では年間60~70件(政府発表。これに対し、小児科学会では年間300件以上あるとしています)ですが、ネウボラの母国フィンランドでは、年間0.3件(つまり、3年に1人!)なのです。

すべては、こども達の未来のために

  今年の4月、こども家庭庁が創設され、こども関連予算が増額されましたが、どちらかというと、これから生まれてくるこどもへの支援メニューに偏った印象です。たしかに、児童手当の所得制限撤廃や、貧困率5割超のひとり親家庭への支援拡充、大学生や専門学校生への給付型奨学金拡大は、こども達の未来を保障するための大事な施策です。

 しかし、私は、すでに生まれて来たこども達を大切に育てることにもっと光を当てるべきだと考えます。増加するゼロ歳児の虐待死、こどもの自殺を未然に防ぐためには、孤独な育児など困難を抱えた親御さんへの手厚い支援が必要です。年末の「こども大綱」策定に向け、こども達の未来のために、真のネウボラ制度を全国に根付かせることができるよう、政府与党の中で全力を傾けて参ります。

 

【長島昭久プロフィル】
自由民主党 衆議院議員7期・東京18区(武蔵野市・府中市・小金井市)。
1962年生まれ。慶應義塾大学で修士号(憲法学)、米ジョンズ・ホプキンス大学SAISで修士号(国際関係論)取得。2003年に衆院選初当選。これまで防衛大臣政務官、総理大臣補佐官、防衛副大臣を歴任。2019年6月に自由民主党に入党。
日本スポーツ協会理事、日本スケート連盟会長。