“サイコ”の異名を持つ平成ノブシコブシ・徳井健太が、世の中のあらゆる事象を生温かい目で見通す連載企画「徳井健太の菩薩目線」。第256回目は、「板橋こども動物園」について、独自の梵鐘を鳴らす――。
首都圏に暮らす家族連れが楽しめるスポットを探す。それが、僕のライフワークになりつつある昨今。またまた素晴らしい場所を見つけてしまいました。
その日は、「菩薩目線」ではおなじみになりつつあるクリアソン新宿の試合を観戦するために、東京は北区にある「味の素フィールド西が丘」へ行く――その前に、子どもと遊べる場所を探そうということになったのです。
いくつかある候補地の中から、僕らが選んだ場所は「板橋こども動物園」なる場所。なんでも、板橋区の東板橋公園内に、1975年(昭和50年)に設立された歴史ある動物園らしく、地域の子どもたちや家族に親しまれてきた施設らしい。
東板橋公園全体は、25,000㎡とおおよそ東京ドーム半分くらいの大きさを誇る。その中にある、板橋こども動物園は2,000㎡。25mプール、6~7個分ほどの規模の中に、ポニー、ヤギ、ウサギ、モルモットなど約10種の動物が放たれる、なんともかわいらしい動物園。
ちょうど週末ということもあって、板橋中の子どもが来ているのかというくらい公園と動物園は大盛況だった。あふれんばかりの家族連れを見て、僕はなんだかコロナ禍を思い出してしまった。4年ほど前は、この公園は閑古鳥が鳴いていて、ひっそりとしたものだったんだろうな。こうして大勢の家族や子どもがいることは本来の姿であって、人がいない公園というのは、おかずのない幕の内弁当みたいなものなのかもしれない。
動物園の解放感は独特で、誰かの家のでっかい犬小屋が開放されているような雰囲気があった。動物園なんだけど、こじんまりしているから犬小屋のような手作り感がある。無料ということもあり、そのアットホームな雰囲気に魅せられて、多くの人が通っていることが想像できた。
子どもが乗れるポニーの乗馬体験があるということで、僕らはその列に並ぶことにした。ポニーの前と後に、職員さんがいて誘導する。おじいちゃんといった方が的確だろう年齢の男性が、ぶっきらぼうだけど温和な口調で先導する。
板橋こども動物園は、「ポニー乗馬」「モルモット抱っこ体験」など子ども向け体験が充実していた。無料で動物とふれ合えるため、地域住民を中心にとても高い人気を誇るスポットだという。設立から50周年を迎え、今なおこれだけの家族を包容しているのだから、なんだか頭が下がる思いだった。
公園にはキッチンカーもあったのだけど、その日は1台しかなく、クレープとかき氷を販売する車に、長蛇の列ができていた。女性一人で手際よくクレープとかき氷を作る。よくこれだけの数を一人でさばけるなと感心していると、自分たちの番がめぐってきた。リーズナブルなクレープを買って、ぼーっとしていると、いろいろな人が支えることで、こうした公園が憩いの場になっているのだと再認識した。
子どもが、噴水の方へ走っていった。「子どものときってああいうのが一番楽しいんだよな」なんて思いながら、後姿を見守る。大人になると、噴水の水がたまる広場に、どういうわけか足を踏み入れることに抵抗を覚える。いい歳して入りたくないとか、服が汚れるかもしれないとか、いろいろな理由を盾に、噴水へ飛び込まなくなる。あれは、子ども特有のエモーショナルだったのかもしれない。
板橋の子どもたちが、服のまんま水のカーテンに飛び込んでいく。おむつが取れている子もいる。突然、下から水が吹き上がるから、驚いて転んでしまう子どももいる。それを教育ととらえるかとらえないか。教育にできるかできないか。公園はいろんなことを教えてくれる。
子どもたちが沐浴する。親は、水辺の外からみつめる。小宇宙があった。
東板橋公園は、僕らが知っている昔の公園が、そのまま残っていた。きっと夜になったら、地元の不良たちのたまり場に様変わりするんだろうな。でも、それが地域の個性ってもんだろう。
ロープで作られた高さのある遊具に、チャレンジャーと化した子どもたちが、上へ上へと登っていく。僕らはその姿を見て想像するしかない。
世代を超えて親しまれる、地元住民の「思い出の原点」。そんな場所にお邪魔させていただく。なんて贅沢な休日の使い方だろう。