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お芝居は不要不急です ONEOR8『グレーのこと』-2021ver.-

2021.01.12 Vol.737

 本作は2017年に浅草の劇場・九劇のこけら落し公演のラストを飾る作品として上演された。

 それまではありふれた日常的空間を舞台に、そこで暮らす市井の人々のなんてことのない日常を淡々と描く作品が多かった作・演出の田村だったが、この作品では「現世とあの世の間にあるグレーな世界」というこれまでとは趣の違う舞台を設定。そこに集まった裁判官のような者たちが死者が来世に何に生まれ変わるべきかを話し合っていくなかで、根源的でありながら“グレーなこと”があぶりだされていくというお話で、田村にとっても挑戦的な舞台だった。今回は「-2021ver.-」とあるようにブラッシュアップした形での再演となる。

 また新型コロナの感染予防として、客席については全席自由席にし、客同士の間隔が空けられるように配慮。また新たな試みとして公演の配信も実施。初日16日の14時の回が生配信される。

『阿修羅のごとく』へのオマージュ作品 ONEOR8『ゼブラ』

2018.11.28 Vol.712

 舞台芸術学院出身者で1998年に結成されたONEOR8。今年2018年は20周年の年だった。

 最近は作・演出の田村孝裕はもちろん、劇団員も外部で活躍することも多く、年に1〜2本のペースで本公演を行ってきたのだが、今年はここまで本公演はなし。「おやっ?」と思ったファンも多かったかもしれないが、12月にやっと20周年公演が行われる。

 今回上演するのは2005年に初演された『ゼブラ』。 同作は田村が最も敬愛する向田邦子の『阿修羅のごとく』へのオマージュ作品。
 物語は古くからある木造の一軒家で、「母親の死」に向き合う四姉妹の秋の数日の様子を描く。

 母が死期を迎え、久しぶりに家族が集う。幼いころに家を出た父への想いはそれぞれ。時間が経ち、取り巻く環境も代わり、父への想いは四姉妹の中でどんどん乖離していた。時間が経って理解を示す者もいれば、いまだに許せずにいる者もいる。今でも父を許せず姉妹の中で孤立する三女は誰もいない居間で若き日の母の幻影を見るのだった…。

 結成時に「20年目を迎えることができたら旗揚げ公演と同じ2000円でやろう」と劇団内で決めていたことから今回は料金は2000円。

 再演が期待されていた作品ということもあり、前売りはいったん完売。追加チケットを売り出したが、それも初日を迎えるころには完売の可能性が高い。でも全公演当日券は出るとのこと。

これまでにない挑戦的な作品 ONEOR8『グレーのこと』

2017.11.24 Vol.700

 今年、劇団20周年を迎えたONEOR8。4月に『世界は嘘で出来ている』を再演後、沈黙を守っていたが、今年3月にオープンした浅草の新劇場・九劇のこけら落し公演のラストを飾る形で新作『グレーのこと』を上演することとなった。

 作・演出の田村孝裕はありふれた日常的空間を舞台に、そこで暮らす市井の人々のなんてことのない日常を淡々と描く作品が多いのだが、今回はちょっとばかり趣が違う作品となる。

 舞台はどこかの会議室。そこでは裁判員制度で集められた裁判官たちが議論しているように見えるのだが、よくよく話を聞いてみると彼らが話しているのは「死者について」。そこは現世とあの世の間にあるグレーな世界。彼らは閻魔のような存在で死者が来世に何に生まれ変わるべきかを話し合っていた。議論が進むにつれ、根源的でありながら、“グレーなこと”があぶりだされていく。

 舞台設定など、これまでにない挑戦的な作品となるが、根底に流れるONEOR8のテイストは多分変わらない。
 客演の羽田美智子は実に12年ぶりの舞台出演。こちらも大きな話題となっている。

巧みな脚本と物語の裏に隠されたテーマが実は結構ヘビー? ONEOR8『世界は嘘で出来ている』

2017.03.12 Vol.686

 本作は2014年に初演され、岸田戯曲賞、鶴屋南北戯曲賞にノミネートされた、田村孝裕にとっても代表作ともいえる作品。現代の日本でも大きな社会問題となっている「孤独死」を扱ったこともあり、観劇後に深く考えさせられる作品だった。

 日常にある「嘘」をテーマに、バカ正直に生きてきた兄と嘘ばかりついてきた弟の40年に渡る人生を描く。

 舞台は、とある1DKのアパート。ある男が孤独死をした。警察の現場検証、遺体の引き取りも終わり、2人の清掃人がやってきた。これから特殊清掃が行われるのだ。実は死んだのは清掃人のうちの一人、滝口の弟だった。遺品を整理しながら、滝口は弟の人生を思い返すのだった。

 初演時のキャストがほぼ勢ぞろい。甲本雅裕が演じる兄の実直さと恩田隆一の演じる弟のどうしようもなさのコントラストが鮮やか。現代と過去を行ったり来たりする形で物語を進ませることで、2人の人生がなぜこんなにも違ったものになってしまったのかが丁寧に描かれる。そして「嘘」というフィルターを通して見ると、兄弟どちらに肩入れするかは人によって分かれそう。

ふだんとはちょっと違った一面が見られる公演
『ゼブラ』ONEOR8 B面公演

2015.04.12 Vol.640

 本公演をA面とし、本公演とは毛色の違う作品を上演するのがこのB面公演。過去には男性劇団員4人のみの公演、外部から演出家を招いての公演を行ってきた。

 今回は座付き作家で演出家である田村孝裕抜きで、劇団員の伊藤俊輔、山口森広の企画による公演となる。演出を伊藤が担当し、キャスティング、ステージに関わる諸々を2人で行ってきた。

 上演するのは2005年に劇団で初演された『ゼブラ』。2007年に再演後、2009年には田村の演出のもと東宝製作で斉藤由貴、星野真里といったキャストで上演されるなど、内外で評価の高い劇団の代表作だ。

 舞台は古くからある木造の一軒家。母が死期を迎え、家族が集う中、四姉妹の母に対する想いが交錯する。幼いころに家を出た父への愛憎で孤立する三女は、誰もいない居間で若きし日の母の幻影を見る…。「母親の死」に向き合う四姉妹の様子や心の葛藤などが現代と過去を巧みに行き来しながら描かれる。
 特に「死」や「家族」というものに対する距離感は人それぞれ。演出家の感じ方ひとつで作品のイメージも随分変わる。今回初めて演出を手がける伊藤は田村とはバックボーンも全然違う。そんな伊藤がどのような作品に仕上げてくれるのか。

意味深なタイトルの人間ドラマ
ONEOR8『世界は嘘で出来ている』

2014.10.12 Vol.628

 約1年ぶりとなる劇団公演は2年ぶりとなる劇団への新作書き下ろし。 

 舞台は、とある1DKのアパート。ある男が孤独死をした。警察の現場検証、遺体の引き取りも終わり、2人の清掃人がやってきた。これから特殊清掃が行われるのだ。実は死んだのは清掃人のうちの一人、滝口の弟だった。遺品を整理しながら、滝口は弟の人生を思い返す。

 いつもはどこにでも転がっているような、ありふれた日常を舞台に濃厚な人間関係が描かれるのだが、今回は特殊清掃の清掃人が主人公で、それも実弟の遺品整理をするという、なかなかにヘビーな設定。

 描かれるのはバカ正直に生きてきた兄と嘘ばかりついてきた弟の40年に渡る人生。兄は弟のことを内心どう思っていたのか、その死をどう受け止めたのか…なんてことを考えると、タイトルの意味もいろいろと解釈できて面白い。

 滝口役に甲本雅裕。最近では個性派俳優として映像作品にひっぱりだこで、久しぶりの舞台出演。そして田村作品に欠かせない存在となっているカラテカの矢部太郎も客演する。

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