巧みな脚本と物語の裏に隠されたテーマが実は結構ヘビー? ONEOR8『世界は嘘で出来ている』

 本作は2014年に初演され、岸田戯曲賞、鶴屋南北戯曲賞にノミネートされた、田村孝裕にとっても代表作ともいえる作品。現代の日本でも大きな社会問題となっている「孤独死」を扱ったこともあり、観劇後に深く考えさせられる作品だった。


 日常にある「嘘」をテーマに、バカ正直に生きてきた兄と嘘ばかりついてきた弟の40年に渡る人生を描く。


 舞台は、とある1DKのアパート。ある男が孤独死をした。警察の現場検証、遺体の引き取りも終わり、2人の清掃人がやってきた。これから特殊清掃が行われるのだ。実は死んだのは清掃人のうちの一人、滝口の弟だった。遺品を整理しながら、滝口は弟の人生を思い返すのだった。


 初演時のキャストがほぼ勢ぞろい。甲本雅裕が演じる兄の実直さと恩田隆一の演じる弟のどうしようもなさのコントラストが鮮やか。現代と過去を行ったり来たりする形で物語を進ませることで、2人の人生がなぜこんなにも違ったものになってしまったのかが丁寧に描かれる。そして「嘘」というフィルターを通して見ると、兄弟どちらに肩入れするかは人によって分かれそう。



【日時】4月2日(日)?9日(日)(開演は2日16時、3・5・7日19時、4・6・8日14時/19時、9日14時。開場は開演30分前。受付開始は開演1時間前)【会場】ザ・スズナリ(下北沢)【料金】全席指定 前売3900円、当日4300円【問い合わせ】ONEOR8(TEL:080-6577-1399 [HP] http://oneor8.net/ )【脚本・演出】田村孝裕【出演】恩田隆一、伊藤俊輔、冨田直美、山口森広、和田ひろこ/古屋治男、守富龍人(ムツキカっ!)、異儀田夏葉(KAKUTA)、浅野千鶴(味わい堂々)/矢部太郎(カラテカ)/甲本雅裕