どんどん舞台に活気が戻ってくる予感 ロームシアター京都 レパートリー作品 木ノ下歌舞伎『糸井版 摂州合邦辻』

2020.10.19 Vol.734

 京都を拠点とする木ノ下歌舞伎は歴史的な文脈を踏まえつつ、現代における歌舞伎演目上演の可能性を発信している団体。  本作は京都のロームシアター京都のレパートリー作品で昨年2月から行った初演の際には、公演地によっては追加公演も発生した話題作。当時は東京での公演はなく、東京のファンの中ではかねてから再演を望まれていた作品だ。  木ノ下歌舞伎ではあらゆる視点から歌舞伎にアプローチすることを目的としているため、主宰の木ノ下裕一が指針を示しながら、さまざまな演出家による作品を上演するというスタイルを取っており、本作はFUKAIPRODUCE羽衣の糸井幸之介が演出を務める。 「摂州合邦辻」は運命に翻弄される2人の男女を軸に血族の悲劇を描いた作品なのだが、本作では原典とされる能の「弱法師」や説教節の「しんとく丸」などの要素に改めてスポットを当てて再解釈。“剥き出しの生”を壮大なスケールで描く音楽劇となる。  初演でも喝采を浴びた主役の玉手御前役は内田慈が続投。俊徳丸役には声優としても活躍する期待の若手俳優・土屋神葉が抜擢された。

どんどん舞台に活気が戻ってくる予感 ミュージカル『ローマの休日』

2020.10.18 Vol.734
 土屋太鳳が朝夏まなととのダブルキャストで主演する日本発のオリジナル・ミュージカル『ローマの休日』が上演中だ。オードリー・ヘプバーンが主演した同名の名作映画を世界で初めてミュージカル化した作品で、上演されるのは約20年ぶりとなる。  ヨーロッパ歴訪中だったアン王女が、旅の途中のローマで1日だけ自由な時間を過ごす。髪を切ったり、ジェラードを食べたり、スクーターでローマの街を走ったり、船上パーティーでド派手にやらかしたり……これまで経験したことがない時間を過ごす。そしてそこには忘れられない恋も……。土屋と朝夏演じるアン王女、新聞記者のジョー・ブラッドレー、カメラマンのアーヴィングはWキャスト。公演ごとに異なる組み合わせで上演する。好奇心旺盛な少女から凛とした王女へと変化する土屋、堂々たるパフォーマンスでオーディエンスを圧倒する朝夏、そして加藤和樹と平方元基が演じるちょっとワルだけど純情なブラッドレーのやり取り、恋物語に胸を締め付けられる。

どんどん舞台に活気が戻ってくる予感 座・高円寺レパートリー『男たちの中で~In the Company of Men~』

2020.10.12 Vol.734

 座・高円寺のレパートリー作品として昨秋、日本で初上演された『男たちの中で~In the Company of Men~』が今年も上演される。  同作は“反骨の劇詩人”ともいわれるイギリスの劇作家エドワード・ボンドが1980年代に書いた巨大軍需企業を舞台とした作品。  座・高円寺の芸術監督で本作の演出を務める佐藤信は劇場の演劇学校「劇場創造アカデミー」の研修生の修了上演で、ボンドの8時間に及ぶ長大作『戦争戯曲集 三部作』を上演し続けるなど、かねてからボンドの戯曲に注目してきた一人だ。  物語は軍需企業の買収を巡り、父と息子、部下、敵対企業といった立場の男たちが二重三重の駆け引きを展開していく。シェイクスピアの『オイディプス王』や『ハムレット』的な人間関係の要素はもちろん、権謀術数にたけた6人の男たちによって繰り広げられるドラマはドラマとして単純に見応えのあるものだ。  その一方でボンドはこの戯曲のなかで政治権力の構造や権力が人間性を奪っていくさまをスリリングな言葉と言葉の応酬で見せていくのだが、それはネオ・リベラリズムとグローバリズムに支配されつつある現代の我々にとってはただ楽しいと言ってもいられない切実な問題として提示される。さて、見た後に我々は何を感じ、どのような“気づき”を得ることができるのか…。

【ウィズコロナの演劇シーン】東京芸術祭 2020 芸劇オータムセレクション『ダークマスター VR』

2020.10.01 Vol.733

 タニノクロウが主宰を務める庭劇団ぺニノの代表作『ダークマスター』がVR作品となって上演されることとなった。  これは今秋開催される「東京芸術祭2020」で東京芸術劇場のオータムセレクション作品として上演されるもの。  本作は庭劇団ぺニノが2003年に初演した代表作『ダークマスター』を現在の社会状況を踏まえて新たに構想し直し、今回の上演用に新たに撮影したパフォーマンス映像を特別仕様の演劇的空間で各回20人限定でVRゴーグルをつけて観劇する。  これまで新型コロナウイルスの感染拡大防止については各団体でさまざまな方策が取られてきたのだが、それでも不安を感じる人はいるようだ。  こればかりは個人の感覚の問題でどうしようもないことなのだが、「ならば」とばかりにタニノは俳優をVRの世界に移動させ、1回に収容する観客数も20人までとした。  上演と書いていいのか、上映と書くべきなのか。演劇の概念さえぶち壊すタニノの試み、というかさまざまな投げかけを観客たちがどう受け止めるのか。

【ウィズコロナの演劇シーン】Pityman『みどりの山』

2020.09.25 Vol.733

 今年で21年目を迎えた三鷹市芸術文化センターの名物企画『MITAKA“NEXT”Selection』。「今後の飛躍が期待される劇団」というくくりで劇団をセレクトするこの企画をきっかけに、これまで多くの劇団が飛躍を遂げてきた。  今年の第3弾となるPitymanは劇作家で演出家の山下由の脚本、演出作品を上演する団体。山下は若手演出家コンクールで2013、2014年と2年連続で優秀賞を受賞している。  その作品は日常を繊細に描写し、ドライでありながらさみしさを抱える青年たちを会話劇で描き、モザイク的にシーンを切り取り合わせる。「いちばん大きなものは、いちばん小さなものの中に」を標ぼうし、小さな部屋の片隅の“なんでもなさ”から世界を照らし出そうとしている。  今回は妊婦たちの暮らす山間の代理母父出産施設を舞台に、男も女もみんな妊婦というちょっと不思議な世界の物語。  公演にあたり山下は「世界が大変な状況にあるこの中で、集まることができたなら、誰かに子供を産んでもらい、誰かの子供を産み、遠くにみどりの山が盛り上がるこの作品を作ります」とコメント。いろいろと考えさせられそうな作品のよう。

【ウィズコロナの演劇シーン】asatte FORCE参加作品 ブス会*『女のみち2020~アンダーコロナの女たち~』

2020.09.24 Vol.733

 劇作家で演出家、そしてAV監督でもあるペヤンヌマキは今年7月に「テレ東無観客フェス2020」に参加し自身が主宰する演劇ユニット「ブス会*」の代表作「女のみち」シリーズ新作『女のみち特別編~アンダーコロナの女たち~』を無観客で上演し配信した。今回は劇場に観客を迎えタイトルも「女のみち2020」に改め、本多劇場版の演出で「asatte FORCE参加作品」として上演する。 「女のみち」はもともとAVの撮影現場での女優やスタッフたちの生々しいやり取りを描いたブス会*の代表作。今回は緊急事態宣言が明けた後、久しぶりに行われるAV撮影の控室を舞台に、外出自粛でうっぷんが溜まりまくった女たちが怒涛のようにしゃべりまくる。そしてコロナ厳戒態勢下で行われるAV撮影はいったいどうなるのか--といったお話。  ペヤンヌマキは上演にあたり「『女のみち』に登場するのは、どのような状況でも“それでも生きていくんだよ”の精神でたくましく生きていく女たち。誰もが生命の危険にさらされる毎日を生きている今、この舞台を観た人が、明日もなんとか生きていこうと、ちょっぴり元気になってもらえたらいいなと思っています」とコメントした。  舞台の上演に先駆け、9月20日には阿佐ヶ谷ロフトAでペヤンヌマキ、出演の高野ゆらこ、もたい陽子、そしてテレビ東京の祖父江里奈プロデューサーが出演するトークと『女のみち2012再演』を上映するイベントが開催される。  舞台、トークイベントとも配信も行われる。

【ウィズコロナの演劇シーン】ミュージカル『ビリー・エリオット』

2020.09.16 Vol.733

 待ちわびていたミュージカル『ビリー・エリオット』の幕がいよいよ上がる! 主人公ビリーにも負けないぐらい踊りだしたい気分だ。  本作は、アカデミー賞監督賞にノミネートされた映画『リトルダンサー』をミュージカル化したもの。イギリス北部の貧しい炭鉱町に住む11歳の少年ビリーがバレエとの運命的な出会いを果たし、その世界に没頭していく。映画では成長した姿を人気ダンサーのアダム・クーパーが演じて、話題を集めた。  ビリーは、炭鉱で働く男たちに囲まれ、男として強さやたくましさをより求められる環境で育ち、バレエは女の子のものと父親からも強力な反対にあう。それでも夢に向かってステップを踏み続ける姿に周りは心を熱くし、世界は心を大きく揺さぶられた。  ミュージカルは2005年に初演。日本には2017年に上陸した。その際には16万人を動員する大ヒットミュージカルになった。そして、今年、待望の再演を迎えるにあたり、大規模なオーディションが行われ、4人のビリーが選ばれた。お父さん、先生、兄などもパワフルなキャストが揃っている。万全の対策をしたうえで、劇場でミュージカルを見る幸せを味わってほしい。

上白石萌歌をはじめ実力派の俳優12人が揃ったPARCO劇場オープニング・シリーズ『ゲルニカ』

2020.08.28 Vol.732

 日本のみならず韓国など国外にも活動の幅を広げ、2018年読売演劇大賞及び最優秀演出家賞に輝く演出家、栗山民也。2018年紀伊國屋演劇賞個人賞受賞、鶴屋南北戯曲賞など数々の賞を受賞し、筆力に定評のある劇作家、長田育恵。PARCO劇場のオープニング・シリーズ秋の陣第1弾でこの2人の待望の初顔合わせが実現する。 「ゲルニカ」というのはスペイン北部の町の名前であり、同国の画家であるパブロ・ピカソの絵画の作品名でもある。  スペイン内戦時にこの町は無差別爆撃を受けたのだが、その悲劇に突き動かされピカソが作品化した。本作はそのピカソの絵画「ゲルニカ」に出会った栗山が20年以上にわたり温めてきた構想をもとに長田がゲルニカに生きる市井の人々の生きざまに視点をあてた群像劇に仕立て上げた。  ゲルニカに住む人々はよもや自分たちの町が空爆を受けるとは思っていなかった。戦争は遠くのものと思っていた。空爆、戦争という言葉を「疫病」や「天災」といった置き換えれば…。時勢柄、思わずそんな視点で見てしまいそうな作品。  ヒロイン役の上白石萌歌をはじめ実力派の俳優12人がそろった。

日本に今一番必要な「笑い」をとことんやり切ってくれるはず 劇団献身『知ラン・アンド・ガン!』

2020.08.21 Vol.732
 今後の飛躍が期待される若手劇団を集めて贈る、三鷹市芸術文化センターの名物企画『MITAKA“NEXT”Selection』の第2弾。  劇団献身は早稲田大学演劇倶楽部出身の奥村徹也が、卒業後1年間のサラリーマン生活を経て2014年に旗揚げした劇団。その作品は「ノンストップナンセンスコメディ」と銘打つように“3秒に1度”と評される圧倒的手数のギャグが特徴。このギャグを武器に、ワンシチュエーションはもちろん、ハイスピードかつ複数の時間軸で構成された世界を縦横無尽にふざけ倒す。  今回の作品は、指示を忘れて、勘で動き続ける7人の男たちによる「センチメンタル遊撃軍奮闘記」。「遊撃軍奮闘記って何のこと?」と思ったら、もう奥村の掌の上。とりあえず劇場に確かめに行くことをお勧めする。 『MITAKA“NEXT”Selection』に出る劇団は前年には決定しているのだが、今年、劇団献身が選ばれていたのは、今となってみれば最高のチョイス。なぜなら彼らはきっと、新型コロナウイルスによって閉塞感のある日本に今一番必要な「笑い」をとことんやり切ってくれるはずだから。

繊細で綿密な会話劇と空間演出 東京夜光『BLACK OUT~くらやみで歩きまわる人々とその周辺~』

2020.08.14 Vol.732
 三鷹市芸術文化センターの名物企画である『MITAKA“NEXT”Selection』も今年で21年目を迎える。「今後の飛躍が期待される劇団」というくくりで劇団をセレクトするこの企画をきっかけに、これまで多くの劇団が飛躍を遂げてきた。  今回、第1弾となる「東京夜光」は横内謙介氏に師事したことから劇団扉座の演出助手を務め、また多くの市民劇や研究所公演、映画などに脚本・演出、演出助手とさまざまな形で関わった経験を持つ川名幸宏が作・演出を務めるカンパニー。2018年の「第28回下北沢演劇祭」の若手支援企画「下北ウェーブ2018」に選出されたことから旗揚げした。作品では川名自身の経験や、そこで得た感覚を普遍の物語に昇華し、繊細で綿密な会話劇と、ムーブメントによる空間演出を織り交ぜる試みをしている。  タイトルである「BLACK OUT」には「暗転」という意味があり、本作は演劇の現場が舞台で川名がこれまで務めてきた演出助手という仕事から着想を得たものとなっている。

いしいのりえと岩田光央のユニット「カナタ」 活動10周年記念公演「あぶな絵、あぶり声 ~祭~」再始動

2020.08.13 Vol.732

 イラストレーターのいしいのりえと声優の岩田光央による愛交朗読ユニット「カナタ」。2010年から「大人の女性が楽しむ空間」をコンセプトに、男性声優や俳優がごく普通の男女の恋愛物語を、スクリーンに投影したイラストとキーボードピアノの生演奏をバックに朗読する「あぶな絵、あぶり声」を発表してきた。観覧は18歳以上の女性限定という制限を設けているにもかかわらず、毎回大きな話題と反響を呼んでいる。  今年で10周年を迎えた同ユニットだが、当初4月に予定していた記念公演は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で全公演中止。この秋、ファン待望の記念公演が改めて開催されることが決定した。神奈川公演は横浜ランドマークホール、東京公演は品川グランドホールにて、出演は主宰の岩田光央を始め蒼井翔太、仲村宗悟、佐藤拓也、畠中祐、小野大輔、豊永利行、森川智之という超豪華声優陣が日替わりで登場する。  いしいの絵と文、岩田の演出により絵と声の両サイドから表現した「愛交ストーリー」が人気の舞台。感染対策を万全に濃密な世界を楽しみたい。

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