「川村毅劇作40周年&還暦 三作品」その2作目 ティーファクトリー『クリシェ』

2020.01.21 Vol.726
 劇作家で演出家の川村毅にとって2020年というのは劇団「第三エロチカ」を旗揚げして40年、自身の新作戯曲をプロデュースするカンパニー「ティーファクトリー」を立ち上げてからも20年という節目の年となる。  ということで昨年10月から「川村毅劇作40周年&還暦 三作品」と題して3作品を発表する企画がスタート。今回はその2作目。  この『クリシェ』は第三エロチカ時代の1994年に「ネオ・グラン=ギニョル三部作」の第一弾として上演された作品。映画『何がジェーンに起ったか?』『サンセット大通り』へのオマージュの色濃い、元女優の姉妹が繰り広げる、文字通りクリシェ(紋切型)なサイコサスペンス。今回は大幅にシンプルに改作し「女優をやめられない」姉妹の老いと向き合う姿をコミカルに描いていく。  物語の舞台は社会から断絶した中年姉妹が2人きりで暮らしている館。2人は『何がジェーンに起ったか?』のように元人気女優。老いさらばえた姿にもかかわらず、本人たちの間では時は止まったまま。そしてこの館と2人にはなにやら秘密があるよう。  物語の語り部として登場するのは、この2人の秘密を探ろうと劇作家募集の広告に公募してきた若い劇作家の男。果たして姉妹の秘密とはいったいなんなのか…。  この元女優姉妹を演じるのは花組芝居の座長であり中心役者でもある加納幸和と川村毅。  川村が俳優(女優としても)として舞台に立つのは昨今ほとんどなく、かなり貴重な舞台となりそうだ。また金曜の終演後には還暦祝トークが行われる。

“ふざけた社会派” 劇団チャリT企画『それは秘密です。』

2020.01.16 Vol.726
 チャリT企画は早稲田大学演劇研究会に在籍していた楢原拓を中心に1998年に結成された劇団。結成当初からシニカルな社会批評の視線を持ち、時事ネタや社会問題などのシリアスな題材をテーマに風刺と批評性に富んだ作品を多く発表してきた。その希有なスタイルで「ふざけた社会派」という独特の立ち位置を獲得し、現在も作品を作り続けている。  今回上演するのは2014年に初演された、特定秘密保護法を題材とした劇団の代表作。  主人公の売れないお笑い芸人・コジマはある日突然、逮捕されてしまう。なぜ逮捕されたかは「秘密」らしく、その理由は全く明らかにされないのだが、どうやら何か「秘密」に関わる罪を犯してしまったらしい。芸人仲間や恋人が小島を釈放させるために奔走する中で逮捕の真相や国家の安全保障に関わる重大機密が次第に明らかになっていくのだった…。  特定秘密保護法が成立した時に、みんなが思った危うさを具現化して見せ、笑いはもちろんなのだが、同時に怖さも感じさせた作品。同法は先日、施行から5年が経過し施行令改正と運用基準の見直しが行われたのだが、多分「ああ、そういえば」と思った人も多いだろう。薄れかけて記憶を呼び戻し、5年前の懸念を再検証するためにも見ておきたい一本だ。

「女子」たちの内情にアプローチする2作品 別冊「根本宗子」 第8号

2020.01.13 Vol.726

別冊「根本宗子」 第8号『THE MODERN PLAY FOR GIRLS 女の子のための現代演劇』

 昨年12月に新国立劇場で自らが主宰する劇団、月刊「根本宗子」の本公演を行っていた根本宗子の2020年が1月末から早くも始まる。  別冊「根本宗子」は月刊「根本宗子」の派生ユニットでこれまで本公演とは一味違う実験的な試みを多く行ってきた。  今回は「女子」たちの内情にアプローチする2作品を公演期間中の前半と後半に分けて上演する。  1月22日から26日までは「Whose playing that “ballerina”? そのバレリーナの公演はあの子のものじゃないのです。(English ver.) 」を上演。この作品は2016年6月初演、2018年1月にオリジナルキャストで再演。月刊公演での上演スタイルとは異なるコンテンポラリーなアプローチで、日本の女の子たちの幼少から大人になるまでの友情や葛藤を描いたもので、今回は全編英語(日本語字幕あり)で上演する。  1月29日から2月2日までは新作の『超、Maria』を上演。こちらは根本と姉妹の音楽ユニット「チャラン・ポ・ランタン」のボーカルももの2人による「二人芝居」。チャラン・ポ・ランタンの小春とカンカンバルカン楽団による生演奏とともに「赦し」をテーマに描く「現代女子のためのバイブル演劇」となっている。  この2作品は。女の子たちから絶大な人気を誇るニットブランド『縷縷夢兎』を主宰するアーティスト・東佳苗のガーリィな舞台装飾の中、同一セットで上演される。

タイトルに偽りなし!? ろりえ『いけない先生』

2019.12.19 Vol.725

 ろりえは「早稲田大学演劇倶楽部」を母体に 2007年に結成された、脚本家、演出家、俳優である奥山雄太が主宰を務める演劇ユニット。「女の子に対する絶対的な憧れと、男の子であることへの開き直りを、様々な角度から描き出す。あと、たまに切ない。」をコンセプトに多くの先鋭的な作品を送り出してきた。  今回は意外にも初となる学校を舞台とした作品。奥山自身が20代の頃、演劇の専門学校の講師を担当した経験から「先生」と呼ばれる若者たちの葛藤を、ろりえらしいシニカルな笑いの中で描く。  中間テストが目前に迫ったある日、女生徒たちは試験問題を盗むため真夜中の職員室に忍び込むが、学内最強の女教師軍団がこれを迎え撃ち、計画は失敗に終わった。しかし主犯格の女生徒がやけっぱちで盗んだ書類の中にはセクシー映画のシナリオがあったのだった…。タイトルに偽りなし!?  出演は前回公演『ミセスダイヤモンド』でも主役を務め、さまざまな劇団でも高い評価を得ている女優・岩井七世をはじめとしたろりえに欠かせない常連メンバーたちに、奥山の脚本による横山翔一監督の映画『新橋探偵物語』で主演を務めた長野こうへいと、同じく横山監督作品『はめられて Road to Love』に出演の斉藤結女がろりえに初出演する。

一度見ると病みつきになる種の作品 芸劇eyes plus 12月のワワフラミンゴ『くも行き』

2019.12.14 Vol.725

 ワワフラミンゴは作・演出の鳥山フキを中心に活動する演劇団体。2004年に旗揚げされ、カフェやギャラリーといった小さな空間での公演が多く、その場所の特性を生かした作品づくりを得意としている。  その作品はエビ、カニ、ホッチキス、双子等、独自の興味や関心をもとにシュールな漫画を思わせるような不思議な世界観で構成される。いわば一度見ると病みつきになる種の作品だ。  また鳥山の作風は、特定のストーリーにこだわらず見聞きしたものや感じたもの、俳優たちの話から自身の生活に至るまでを作品に反映するというもの。それはポストドラマ的でありつつも、目を覚ましたときに何となくつながっていたかのように思えてしまう「夢」のようでもある。 そんなオフビートで「脱力系」な物語を女性キャストを中心に紡ぎ出す。  今回は2度目の芸劇登場。2013年に芸劇 eyes番外編「God save the Queen」に招聘され、注目を浴びたのだが、だからといって何が変わるわけでもなくマイペースの創作活動を続けているのもまた彼女たちらしい。  というわけで、彼女たちが大きな舞台で上演することはめったにないことなので、必見。18日の夜、19日の昼夜には終演後にアフタートークもあり。

時代を経てもなお健在 ミュージカル『サタデー・ナイト・フィーバー』

2019.12.13 Vol.725

 ジョン・トラボルタ主演の映画『サタデー・ナイト・フィーバー』。1977年に公開されたこの映画は世界的ディスコブームを巻き起こし、指で天を指すあのポーズは、時代を経てもなお健在だ。  本作はその名作映画を舞台化したもの。労働者階級に置ける厳しい現実から逃げだそうと、主人公のトニーが、唯一の生きがいであるダンスを武器に成功への道へ走り出すというストーリー。行き場のない青春のエネルギーを、“胸アツ”なディスコミュージックとエネルギッシュな振付けで魅せる。ビージーズを思わせるシンガーたちが歌うライブステージスタイルもまた新鮮だ。  主演のトニーを演じるのは、『マシューボーンの白鳥の湖』などで知られるリチャード・ウィンザー。本作といえばまずノリノリのディスコダンスへとのイメージが直結するが、ソロ、デュエットなど、ディスコダンスだけではない、さまざまな種類のダンスが登場し、違いや豊さに圧倒される。2019年はディスコミュージックとともに締めくくろう。

ユーモラスかつスリリング『荒れ野』穂の国とよはし芸術劇場PLATプロデュース東京公演

2019.12.13 Vol.725

「穂の国とよはし芸術劇場PLAT」は2013年に愛知県豊橋市に開館した劇場で、豊橋市ばかりではなく東三河エリアの芸術文化交流に大きな役割を担っている。  初代芸術文化アドバイザーを務めた平田満のもと、穂の国とよはし芸術劇場プロデュース公演『父よ!』(2013年、2015年)を上演した。そして、2017年には劇団KAKUTAの主宰である桑原裕子が作・演出を務め、プロデュース公演第2弾として『荒れ野』を上演。同作は第5回ハヤカワ『悲劇喜劇』賞、第70回読売文学賞を受賞するなど高い評価を得た。  2018年4月、平田に代わり桑原裕子が2代目芸術文化アドバイザーに就任。そして2019年12月に『荒れ野』をオリジナルキャストで再演する。  物語は郊外の古びた団地の一室が舞台。そこには奇妙な共同生活をする疑似家族が暮らしていたのだが、ある日、ニュータウンのショッピングセンターから火災が発生し、近接した一戸建てに住む3人家族がその部屋に避難してくる。偶然にも一つ屋根の下で過ごすこととなった人々の一夜の物語がユーモラスかつスリリングに描かれる。  最初はバラバラに存在していた登場人物たちの関係性や、彼らの抱えている問題が、物語が進むにつれ徐々につながっていき、どんどん物語に引き込まれて行く。

【インタビュー】根本宗子×清 竜人 旗揚げ10周年に代表作『今、出来る、精一杯。』を音楽劇にリメイク

2019.12.09 Vol.725
 劇作家で演出家、そして女優と幅広く活動する根本宗子が主宰を務める月刊「根本宗子」は今年2019年が旗揚げ10周年。最後の最後になってしまったがこのアニバーサリーイヤーを締めくくる記念興行として代表作『今、出来る、精一杯。』を音楽劇にリメイクし12月13日から上演する。同作に俳優として、そして音楽監督として参加するアーティストの清 竜人と根本に話を聞いた。

演劇界の二大コメディエンヌの揃い踏み『あれよとサニーは死んだのさ』月影番外地 その6

2019.11.25 Vol.724

 1995年に「劇団☆新感線」の女優・高田聖子が、劇団公演とは違った新しい試みに挑戦しようということで「月影十番勝負」というユニットを立ち上げた。  公演ごとに気鋭の作家・演出家・俳優を集め、12年かけて2006年の第十番『約束』で区切りを迎えたのだが、高田自身「まだ勝負はついていない。もっと続けたい」という思いが募り、「月影番外地」として復活したのが2008年のこと。  今回は脚本に劇団「はえぎわ」のノゾエ征爾、演出には木野花という布陣。木野は「月影十番勝負」時代の『僕の美しい人だから』以降、演出もしくは役者としてほぼ全作品に参加する最も高田が信頼を寄せる存在で、月影番外地にはなくてはならない人。  物語では孤独な老後を迎えた者たちとそんな老人たちを「看取る」青年を描いていく。舞台はいつしか「孤独に死を迎える者を看取る」という「フリーの介護士」が社会の中で立ち上がり始めた近未来の物語。孤独死する者たちの姿は映像化され、その配信された動画には看取った人数によって看取りポイントなるものがつくようになる。その「フリーの介護士」は「ミトリーマン」と呼ばれ、人気職種となっていた――。  ちなみにノゾエは長く世田谷区内の高齢者施設での巡回公演を続けているのだが、そんなノゾエが奇抜な設定のもと「老後」「孤独死」といったテーマをいかに表現するのかも興味深いところ。  そして今回は『約束』以来13年ぶりに池谷のぶえが出演。高田と池谷という演劇界の二大コメディエンヌの揃い踏みが実現する。

グランドオープンの新生「渋谷PARCO」はカルチャー&エンタメもすごい!

2019.11.22 Vol.Web Original
 3年余りの休業期間を経て、11月22日にいよいよグランドオープンした「渋谷PARCO」。新生「渋谷PARCO」のパルコらしさを感じられる場所をキーワードで見ていこう。

〈ENTERTAINMENNT〉

 館内にはミュージアムだけでなく「PARCO劇場」(8F)、ミニシアター「WHITE CINE QUINTO(ホワイト シネクイント)」(8F)、吉祥寺より移転のミュージックカフェ&バー「QUATTRO LABO(クアトロラボ)」(B1F)、コラボレーションカフェ「TOKYO PARADE goods&cafe」(6F)などエンターテインメント施設が充実。  中でもパルコ文化発信の核と位置づける「PARCO劇場」は客席数を旧劇場の458席から636席に増やし、舞台空間も大きく拡張する。グランドオープンは2020年3月13日だが、こけら落とし公演として2020年1月24日から旧劇場時代より最もチケットの取りにくい公演といわれる「志の輔らくご 〜PARCO劇場 こけら落とし〜」、2月から朗読劇の金字塔「ラヴ・レターズ 〜こけら落としスペシャル〜」。オープニング・シリーズでは1985年に上演された伝説的作品「ピサロ」がウィル・タケット演出、渡辺謙主演で35年ぶりに上演される。

雑誌『青鞜』の編集部を舞台にした青春群像劇『私たちは何も知らない』二兎社公演43

2019.11.22 Vol.724

『ザ・空気』(2017年)、『ザ・空気 ver.2』(2018年)と、観客が「今、日本で起きていること」をリアルに体感する話題作を立て続けに発表してきた永井愛が、一転、明治~大正期に発行された雑誌『青鞜』の編集部を舞台にした青春群像劇を書き下ろす。 『青鞜』は封建的な家族制度が根強く残る時代に女性たちの覚醒を目指して創刊された雑誌。これまでも小説や舞台の題材になってきたが、今回はこれまであまり取り上げられることのなかった「編集部」の活動に焦点を当てる。  平塚らいてうを中心とする「新しい女たち」の手で編集・執筆され、女性の覚醒を目指した『青鞜』は、創刊当初は世の中から歓迎され、らいてうは「スター」のような存在となる。しかし、彼女たちが家父長制的な家制度に反抗し、男性と対等の権利を主張するようになると、逆風やバッシングが激しくなっていく。やがて編集部内部でもさまざまな軋轢が起こっていくのだった。  作品では何が『青鞜』をこれほどまでに特別な雑誌にしたのか、そしてクールな雰囲気を漂わせながらどこかミステリアスならいてうが、本当に目指していたものは何だったのかを独自の視点で探っていく。

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