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こんな時代だからこそ演劇が見たい プリエールプロデュース『マミィ!』

2021.07.26 Vol.743

 

 1979年のNHK連続テレビ小説『マー姉ちゃん』で主演を務め一躍脚光を浴びるようになってからドラマ、映画、舞台、そしてバラエティー番組とさまざまなシーンで活躍してきた女優の熊谷真実。その美貌とパワフルなたたずまいは全く年齢を感じさせないものなのだが、実は昨年3月に還暦を迎えた。

 熊谷は個性豊かな家族の中で育ち、小さい頃はいじめられっ子だったという過去があるのだが、この還暦という機会に自分の人生を反映させた物語を作・演出家の田村孝裕の手で作品にしたいと思い、田村にオファー。今回の企画が立ち上がったという。

 今回、熊谷が演じるのは蒸発して15年も帰ってきていない夫を持った還暦を迎えた女。還暦の誕生日に祖母が危篤となってしまったのだが、それを聞きつけた夫が数年ぶりに帰宅。これを機に穏やかだった家族の時間がきしみ始める——という物語。

 熊谷は田村の作・演出による『世襲戦隊カゾクマン』というシリーズ三部作に出演。そちらはコメディー色の強かったのだが、今回はちょっと趣が変わった作品。

 放蕩する夫を演じるのが佐藤B作というのも絶妙なキャスティング。

こんな時代だからこそ演劇が見た 劇団普通『病室』

2021.07.22 Vol.743

 三鷹市芸術文化センターの名物企画「MITAKA“Next”Selection」が22回目を迎える。今年は「劇団普通」と「桃尻犬」の2劇団が参加する。

 7月30日から上演が始まる劇団普通は劇作家・演出家・俳優の石黒麻衣が2013年に旗揚げした団体。所属劇団員という形はとらず、公演ごとに俳優を集め、石黒の作品を上演する。その作品は家族、きょうだい、友人のような間柄の人々の日常の生活を題材とし、独自の会話における間と身体性によって醸し出される緊張感を特徴としたもの。また「言葉」のみならず「身体言語」に着目し、リアリティーを極限まで追求した「会話劇」とは一線を画す「態度劇」とでもいうべき演劇の表現におけるあらたな試みをしている。

 今回の作品は2019年に初演されたもので、石黒の実体験をもとにしたもの。地方の入院病棟の一室を舞台に入院患者たちとその家族、病院関係者らの日々の生活や人間関係、そしてその人たちの人生が全編茨城弁で紡がれる。

こんな時代だからこそ演劇が見たい 音楽劇『GREAT PRETENDER グレートプリテンダー』

2021.07.14 Vol.743

 キスマイことKis-My-Ft2の宮田俊哉が主演する音楽劇。映画『コンフィデンスマンJP』などで知られる古沢良太が脚本・シリーズ構成を手がけた人気アニメ『GREAT PRETENDER』を舞台化、演技、歌、ダンスで届ける、コンフィデンスマン(詐欺師)たちと悪党のコンゲームだ。

 宮田演じる自称日本一のコンフィデンスマンのエダマメは、ひょんなことから詐欺師のローランに出会い、ハリウッドの映画プロデューサーをターゲットにした計画に加わることになる。しかし相手も慣れたもので、さまざまな提案を突き付けられ、窮地に立たされたエダマメは……。

 原作から飛び出してきたような宮田は、休憩を含んで約2時間半、ほぼ出ずっぱり。滝のような汗をかきながら、はったりをかまし、騙す。……そして騙される…?

 宮田のパフォーマンスも去ることながら、美弥演じるローランは、騙されてもいいほどのイケメンっぷり。原作にはない役どころの加藤が担当する面白パートもポイント。

 ドキドキハラハラの展開に、心が締め付けられるパートも。情報マシマシながら物語がスッと入ってくるのは秀逸!

こんな時代だからこそ演劇が見たい『物語なき。この世界』

2021.07.10 Vol.743

 本作は最近では映像の世界でも脚光を浴びる脚本家・演出家の三浦大輔の3年ぶりの書き下ろし作品。三浦はシアターコクーンには2015年にブラジル演劇の巨匠ネルソン・ロドリゲスの『禁断の裸体』の演出で初登場。2018年には自作の『そして僕は途方に暮れる』でエロスや暴力シーンを封印し、精緻なセリフで微妙な人間関係を演出し新境地を開いた。

 その後は映画、テレビドラマと映像の世界での作品が続いたが、今回は満を持しての演劇作品となる。

 今回の舞台は新宿歌舞伎町。10年ぶりに歌舞伎町のうらぶれた風俗店で偶然再開した売れない俳優と売れないミュージシャン。その出会いは「運命」というには間抜けすぎる出来事。自分の人生に「ドラマ」など起こるはずはないと諦めの気持ちを持つ平凡な2人だったが、この出会いをきっかけに2人に突然大きな事件が降りかかる。

 こう書くと「ドラマ」や「事件」を中心に描かれているように見えるが、三浦が描くのは「そもそも『物語』など存在するのか?」ということ。

「都合のいい出来事ばかり並び立てる」ことに違和感を感じる三浦がキレイごとやメッセージなしで、この世界の矛盾を暴く作品となる。

家族をテーマに扱った作品群の中の一作 世田谷パブリックシアター『森 フォレ』

2021.06.28 Vol.742

 世田谷パブリックシアターでは2014年からレバノン出身の気鋭の劇作家ワジディ・ムワワドの“「約束の血」4部作”をシリーズで上演してきた。これまでの『炎 アンサンディ』『岸 リトラル』は数々の演劇賞を受賞した。今回はその待望の第3弾となる。過去2作に引き続き、上村聡史が演出を手掛ける。 

 ムワワドはレバノン生まれで内戦を経験。フランス、次いでカナダに亡命後に再びフランスへ渡り精力的な演劇活動を続けている劇作家。自己の体験から戦争を背景に自らのルーツをたどる作品を多く発表しているのだが、代表作である“「約束の血」4部作”は家族をテーマに扱った作品群で、その中の一作が2006年に創られた『森 フォレ』。

 母の死により自らのルーツをたどることになる少女の成長が、人々が繋げる「血の創生」に着目しながら、6世代と2大陸にまたがる壮大な時空間の中に立ち上がる構成。時は現代からベルリンの壁崩壊、第二次世界大戦、第一次世界大戦、普仏戦争、産業革命後のヨーロッパまでさかのぼり、二つの世紀をまたぎ、娘から母へ、母から祖母へ、祖母からまたその母へと、戦争の世紀に押しつぶされた声なき人たちの声を現代に響かせる。

 140年にもわたる“血”の物語をひも解くフランスの古生物学者役を成河が、母の死をきっかけに自身のルーツをたどる女性を瀧本美織が演じる。

劇団フライングステージの子どもと大人のフライングステージ『アイタクテとナリタクテ/お茶と同情』

2021.06.20 Vol.742

「劇団フライングステージ」は、「ゲイの劇団」であることをカミングアウトしている日本では数少ない劇団の一つ。1992年の旗揚げ以来、作・演出・出演の関根信一を中心に、「ゲイ」であることにこだわった芝居を作り続けている。

 今回上演される作品は、昨今、LGBTQを描いたドラマや映画が多く作られるようになったなかで「子ども向けの演劇作品があってもいいじゃないか」と考えた関根が書き上げたもの。過去に上演された『アイタクテとナリタクテ』と『お茶と同情』の2作品と小学生以下の子供たちに向けた新作短編も上演する。

『アイタクテ——』は小学校を舞台としたお話。学芸会で上演するお芝居の配役を決める時に、男の子が人魚姫の役をやりたいと手を挙げたことからさまざまな問題が提起される。

『お茶と——』は高校の教育実習にやってきた卒業生のゲイの男子が主人公。大学ではカミングアウトしている彼は、生徒たちに自分がゲイであることを話したいのだが…。彼をめぐる教師と生徒たちの物語。

魂を揺さぶる重厚な人間ドラマ TRASHMASTERS vol.34 『黄色い叫び』

2021.06.19 Vol.742

 差別、エネルギー、災害、復興、憲法…トラッシュマスターズが作品の題材とするのはこういった現代社会が抱えるさまざまな問題。それらを見る者の魂を揺さぶる重厚な人間ドラマに仕立て上げる。

 作・演出の中津留章仁は綿密な取材を重ね、資料を読み込み、自分なりの考え方を確立したうえでそれらの問題にアプローチする。当然そこには中津留の思想と思われるものは顔を出すが、物語は決してそういったものを押し付けるものにはならない。それは登場人物たちの人生の一部分を切り取るのではなく、長いスパンで描くという彼らの手法も大きいと思われる。

 多くの作品は物語の端緒となる出来事から、それを経ての数年後の姿も描かれる。長い時間を経ての登場人物たちを取り巻く環境の変化や思想の変遷などを描くことで、前出したような問題は「善と悪」「賛成や反対」という単純な図式ではないことがさらけ出され、観劇後に「それで自分はどう思うのか?」と考えさせられるものとなっている。

 今回は台風による水害に苦しむ地方を舞台とした物語。東日本大震災を受け作・演出の中津留が筆を走らせた作品なのだという。

 東京公演の他に6月18〜20日に長野・上田、6月29〜30日に宮城・仙台でも公演を行う。

東京在住のシニア13人の「個人史」とともに東京を体感する

2021.05.12 Vol.741

『光の速さ −The Speed of Light−』

 5月に上演が予定されている「Tokyo Tokyo FESTIVAL スペシャル13」のひとつである演劇プロジェクト『光の速さ −The Speed of Light−』の映画版が、12日から演劇公演に先駆けて無料オンライン配信される。

「Tokyo Tokyo FESTIVAL」はオリンピック・パラリンピックが開催される東京を文化プログラムによって盛り上げるための取り組み。「スペシャル13」は、その中核を彩る事業として、東京都及び公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京が実施するもので、国内外から応募のあった2436件から13の企画が選定された。

 本作はアルゼンチンの演劇/映像作家マルコ・カナーレが手がけるツアー型演劇。出演者は公募により集まった東京在住の65歳以上の13名。

 その内容は、まず出演者たちの個人史がパフォーマンスを交えて語られ、そして東京でのリサーチをベースにカナーレが書き下ろした、過去・現在・未来の世界が交錯するフィクションの物語を上演するというもの。

 上演スタイルは三軒茶屋駅周辺に集合し、世田谷区太子堂周辺の各所を経由し、最終地点となる太子堂八幡神社 野外特設ステージで公演を行うというものだった。本来なら5月5日に開幕予定だったのだが、新型コロナウイルスの感染拡大防止のための緊急事態宣言が発令されたことから4公演を中止。残る公演の実施はなおも流動的でリアルな上演は限られたものとなってしまった。

 2019年から演劇と並行して制作した映像作品『映画版「光の速さ」』は公演の開幕にあわせて公開予定だったが、先行する形で12日から期間限定で公式サイトで無料オンライン配信される。

「演劇プロジェクト」という観点からはツアーも含めてリアルな舞台を見るに越したことはないが、演劇と同じ台本で撮られた映画版は、東京のシニアと異国の演出家カナーレが協働するという企画意図が十分伝わる内容となっている。

劇作家・横山拓也が2012年に大阪で立ち上げた演劇ユニットiaku『逢いにいくの、雨だけど』

2021.04.15 Vol.740

 

 iakuは劇作家・横山拓也が2012年に大阪で立ち上げた演劇ユニット。

 その作品は暗黙のうちに差別的なものとして扱われる職業や場所、性的なマイノリティーなど正面からは取り上げにくい題材に切り込んだもので、らせん階段を上がるがごとく、緻密な会話をじっくりと重ね、見る者は、いつの間にか登場人物たちの葛藤に立ち会っているような感覚に陥る。

 本作は「許すこと/許されること」をテーマにしたちょっと重いお話。幼少期に大きなケガを負わせてしまった側と負った側が約30年ぶりに再会し、その時に負わせてしまったケガについて語り合う。

 現在、新型コロナの影響で「会いたくても会えない」とか「会わない」といった状況に何となく慣れてしまった時代に「会って会話をする」ということの重みを改めて考えさせられる。

新たな出会いとなる作品『パンドラの鐘』

2021.04.13 Vol.740

 劇作家・演出家の野田秀樹氏が芸術監督に就任後、東京芸術劇場では「RooTS」と題した自主事業で、日本の現代演劇の源流を探るためにアングラ時代の戯曲を掘り起こし、若い演出家がチャレンジする企画を実施している。この「RooTS」の延長戦上にあるのが、野田戯曲を野田氏以外の人が演出することにも積極的に取り組む企画。

 今回は演出家・熊林弘高が『パンドラの鐘』の演出を手掛ける。

 同作は1999年が初演なのだが、野田と故蜷川幸雄氏がほぼ同時期にそれぞれが演出した作品を上演し、大きな話題を集めた。

「現代」と「古代」を行き来する物語なのだが、野田、蜷川演出では別々に演じていた異なる時間軸の登場人物を熊林演出では1人2役で演じる。過去に同作を見たことのある人にも新たな出会いとなる作品となりそう。

ゴヤの激動の半生を描くオリジナルミュージカル『ゴヤ-GOYA-』

2021.04.12 Vol.740

 スペインを代表する画家の一人であるゴヤの激動の半生を描くオリジナルミュージカル。画家人生のみならず、人間ゴヤに焦点を当てて、波乱万丈な生きざまや、どうして芸術家となっていったのかなどをエネルギッシュに描く。

 動乱と戦争の世を生きた人々を歌とダンスで表現する。主人公のフランシスコ・デ・ゴヤを演じるのは今井翼。フラメンコシーンにも注目せざるを得ない。ピアニストの清塚信也が初めてミュージカルの作曲、音楽監督に挑戦するのも注目ポイント。本作にはジャズの要素も入ってくるという。

 ゴヤの生涯の友あるが、実際にはそれ以上ではと思わせる存在のサパテールを演じるのは小西遼生。ゴヤの妻を清水くるみが演じる。

 愛知・御園座でも公演がある。

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