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いつまでも消えないクリームソーダ『空色のクリームソーダRecipe』

2019.09.23 Vol.722

 本から「素敵」さがあふれ出ている。なにせ「空色」で「クリームソーダ」で「旅する喫茶」の店主なのだ。これでときめかない乙女はいるまい、というくらいの「素敵」のロイヤルストレートフラッシュだ。

 普段は洋服デザイナーをしている著者。友人と作り始めたクリームソーダをきっかけに、オリジナルのクリームソーダを作っては撮影した写真をSNSに投稿し、現在では旅先でクリームソーダを作って振る舞う一期一会の活動も行っているのだという。

 そうしてできた35のクリームソーダをレシピにまとめたのが本書だ。空の色や季節、旅先の思い出などが閉じ込められたクリームソーダは、味わいやそこに込められた物語まで想像させて文字通り「ずっと眺めていたい」気分になる。

 食べ物や飲み物というのは作って食べてしまえば跡形もなく消えてなくなってしまい、それがどんな姿や味だったのかはもはや記憶に頼るしかない儚いものだ。著者のクリームソーダには、そうした儚いものをなんとかこの世につなぎとめておきたいという願いが感じられる。

 もちろん想像の味を現実にするためにも有効なレシピなのだが、いつまでも消えない記憶のように、繰り返し眺められるクリームソーダがあってもいい。

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