2015シーズン開幕直前特集 やっぱり、プロ野球は熱い
独占対談 松本秀夫アナ × 江本孟紀氏 前篇

3月27日からプロ野球が開幕する。巨人のセ・リーグ4連覇はなるのか? 工藤新監督を迎えたソフトバンクはどんな野球を見せるのか? 二刀流の大谷は?広島に復帰した黒田はどこまで活躍できるのか? そして“カープ女子”“カープ芸人”といった世間を巻き込んだムーブメントも気になる。開幕を直前に控え、ニッポン放送「ショウアップナイター」の名コンビ、解説者の江本孟紀氏と実況の松本秀夫アナウンサーが今季のプロ野球を語る!
巨人は特に打線がダメ。
今年は去年より下の順位になるかもしれない(江本氏)


——まず注目選手を聞かせてください。

江本「世間的に注目されるのはアメリカ帰りの選手たちですね。僕はアメリカ敗残兵と呼んでいますが(笑)」
松本「黒田も? 完全にボロボロになって帰ってきたわけではないですよね」
江本「完全にボロボロではないけど…。黒田も40歳ですから、良くなることはないですよね。アメリカにいても10勝はできないだろうから最後は花を咲かせようということで帰ってきたんじゃないですか。日本人は美談好きなので、男気とかそういうことをクローズアップしてなんでもそういうふうに結びつける。いや、男気なんて黒田本人は言っていないですよ。勝手にマスコミやファンが言っている。でもキャンプ合流の初日にブルペンに入るというので行きましたよ」
松本「やっぱり行かれたんですね」
江本「たまたま偶然なんだけどね。行ったら江夏、安仁屋、山本和、藪、桧山とかそのへんもいました」
松本「濃いメンバーですね。黒田も帰ってきていきなり、うわって感じですね」
江本「プロ野球はある種、そういう話題がないといけないのは分かるんですよ。それはそれでいい。でも僕としては、実際に日本でプレーしているスターがもっと話題にならなければいけないんじゃないかということを言いたいんです」
松本「将来のある選手ではないですよね」
江本「日本のプロ野球の発展を考えたときには、常に今いるスターが活躍しないといけない。アメリカ帰りの選手が話題を独占するようなプロ野球ではいけないのではないかということをキャンプでは感じました。そういうこともあって、他の球団をいろいろ見たんですが、結局話題になる選手といえば大谷くらいしかいないんですよ」
松本「今年も二刀流で行きますよね」
江本「松本さん、名護の日本ハムのキャンプは行ったんでしょ?」
松本「行きました」
江本「私はハーレーで行きましたけど」

——ハーレーですか?

松本「最近、限定解除を取られたんです」
江本「ええ、2年前に。沖縄は暖かいから、乗らないといけないな、と思って」
——バイクでキャンプ取材に行く人なんていないですよね。
江本「ハーレーに乗りたいがために…」
松本「不良解説者ですから(笑)」
江本「那覇から名護へ。大谷が投げるというので、ハーレーで行ったんですよ」
松本「暴走族解説です(笑)。で、大谷はどうでした?」
江本「まあ順調…ですよね(3月13日時点)」
松本「オープン戦を見ていると、コントロールを乱していましたね」
江本「コントロールが悪いのは無理ないです。ピッチャーの練習を人の半分しかしていないわけですから。専任だったら練習量も足りるんだけど、両方やっているから半分ずつになっている。今は素質だけでやっているから、すごくもったいない」
松本「打つほうもそういうことですよね」

——去年の数字を見るとよくやっているように思えるのですが、江本さんから見るとまだまだということですか。

江本「プロ視点で言うと全然物足りない。10勝するピッチャーって何人いると思います? 腐るほどいますから。それでいいというならいいですよ。打つほうも打撃30傑に入っていないですよね」
松本「だいたい規定打席に達してないですよね」
江本「プロ野球は規定打席を満たして初めて認められるんです。こちらもそれでよければいいですよ。2割7分でホームラン10本くらい打つ選手もゴロゴロいます。それでいいんですか、このスーパースターが。二刀流がいいとか悪いとか言いますが、いいという人は単なる興味だけ。面白いというだけではやし立てている。大谷の選手としての素質は、何十年に一人のもの。すごい才能ですよ。これをファンが並みの選手にしてしまっているわけ。10勝とか2割7分なんて、俺でもできそうだもんね。ホームラン7本打っているし(笑)」
松本「トータルでですよね(笑)。大谷もいずれメジャーに行くじゃないですか。メジャーでは絶対に二刀流なんて許されないですよね」
江本「ありえないです」
松本「どこかで選ばないといけない時が来ますよね」
江本「ひょっとしたら、そろそろ子供から大人に脱皮して、少し悩み始めているんではないでしょうか。去年までは“なんだよ、両方できるじゃん”みたいな感覚だったかもしれない。そろそろ壁にぶち当たるときが来るかな。ちょっとそういう兆候は出ています。でもね、ちゃんとやったらすごいですよ。投手一本だったら20勝、バッターだったら3割3分でホームラン35本くらいは打つんじゃないですか。でも30本くらいはゴロゴロいますからね。僕はそこの差は指摘したいんだけどね」
松本「どっちか絞るんだったらピッチャーがいいと思います?」
江本「選べって言われたらピッチャーのほうがいい。どこに基準を置くかということなんですが、打者だったら最低でも3割以上、ホームランを30本以上打って優勝に貢献できるような成績を残さないといけない。打撃10傑だったら5番以内には入っていないとね」

——最近では打撃30傑といっても30人に満たなかったり、規定投球回数を投げている投手もものすごく少ないですよね。

江本「今は体を大事にする世界になってますから。無理しないです」
松本「中6日で、分業制で6イニングくらいしか投げないじゃないですか。となると1年で26試合くらいしか登板しない。普通にローテーションに入って投げていても届かないんですよね」
江本「去年は規定投球回数が144回。中6日で投げていてもフルシーズン働いた選手なんてほとんどいないですよ。途中からあっちが痛いこっちが痛いって。200回投げたのはメッセンジャーと則本くらいかな」
松本「巨人の菅野はそれをすごく目標にしていたんですけど、ダメでしたね」
江本「そりゃダメですよ、あれじゃ。できるかな、と思ったんですけどね」
——野手では不動のレギュラーが減っているんですか?
江本「これもケガするからですよ。ケガしなきゃ野手はずっと出ますから」
松本「この間のオープン戦でロッテの伊東監督が“今の選手って精神的にも肉体的にも弱くなっていて、ポジションを取ったら絶対に渡さないという体力もなければ責任感もないから、どうしてもレギュラーを固定できない”ということを言っていましたね。だからレギュラーを取っても規定打席に達しないんでしょうね。“昔、僕らのころは一度ポジションを奪ったら絶対に渡さないという体力も責任感もあったけど、今はみんなどんぐりの背比べになっちゃってる”って嘆いていました」
江本「今は日本の球界自体がサバイバルをするシステムではなくなってきているんですよ。アメリカのようにメジャー、3A、2A、1A、ルーキー、独立リーグと全米に300もチームがあれば、そこでのし上がってやろうと思えばサバイバルにならざるを得ないんですけど、日本はプロ野球ができて以来12球団で一軍と二軍が一緒にいて、みんなで保護されながら、年俸だけはどんどん上がっていく。そういう中ではサバイバルは生まれませんよ」

——江本さんの時代からすると、“甘っちょろいことやってんじゃねえ”って感じですか?

江本「僕はそう思うんですけど、今の時代にそれを言ってもしょうがないんですよ。これが我々も悲しいところです。まあ時々は言いますよ」

——投手でいえば昔は4日に1回顔が見られたのに、今では1週間に1回しか見られない。

江本「アメリカは中4日でしょ。あれはなぜかというと、高い契約金や年俸を払った投手を1週間に1回しか投げさせないんじゃ客に失礼だということなんです。だから5日に1回は出さないといけない。でもさすがにそれではきついから100球ぐらいでいいんじゃないかっていうことにしちゃったんです。それを100球が寿命だと日本側が勘違いしちゃった。確かにアメリカは故障する人が多い。ケアも下手だし。なんでも手術すればいいと思っている。そのくせ日本の球界は高校野球から投げすぎだ、とか馬鹿なことを言って責任転嫁をしている。我々もそういうことを防がないといけない立場にいるから、あえてメディアを通じて言うんですけど聞く耳を持たない。私も一応ピッチャーだったんですよ(笑)。中4日とか5日とかで投げていた。投げるときに明日のことなんか考えていないですよ。黒田がいい言葉を残しているんです。“アメリカでやっているときには明日のことなんか考えていなかった”って。だから彼はやれたんですよ。ところが明日のことを考える選手がいるんですよ。“明日、痛くなるんじゃないか”とか、“今日これ以上投げたら壊れるんじゃないか”とか。そんな選手が日本にはいっぱいいるんです。黒田が故障もなくアメリカで長くできたのはそういうこと。ほかのピッチャーはあっちが痛いこっちが痛いって言ってる。 “肩は寿命があるから”とか言って明日のことを考えながら、ちびちびやったらできるかといったら、そういうものでもないんですよ。だから我々の時は明日のことを考えないでガンガンいった。結果的に、私も6年連続200イニング投げていますから。ダルビッシュだってなんだって、そんな選手はいませんよ今は。じゃあ江本のレベルはどうかというと、プロ野球の中では真ん中くらい。投手10傑にはちょろちょろ入っていたんですけど、当時は5位以上になると300イニング投げている人がゴロゴロいたんですよ。そのときにはなんで投げられたんですか?っていうことです。草野球やっていたわけではないですから。体も我々の時のほうがでかいし、劣っているわけではない。ちゃちな野球をしていたわけではないわけですよ。球の速さだってそんなに変わってない。じゃあなぜできたのかということをちょっと勉強したら分かるのにしない。昔のやり方は古いって」
松本「昔はキャンプでも投げて投げて投げて肩を作って行ったんですよね」
江本「そして壊れてダメになった人はやめればいい。健康のためのスポーツではないんだから」
松本「壊れない選手が残っていく」
江本「そう。壊れない選手が残るんです」

——なんでも感動に結びつけると怒られそうですが、昔のほうが悲壮感みたいなものが見えて、熱くさせるものはありましたね。

江本「そう。ピッチャーがね、野球の花なんですよ。僕もそうなんですが、ピッチャーって人を見下げる癖がある(笑)。見下げるというか見下ろす。マウンドって高いですから。ピッチャーが一番偉いんですよ。だからそういうところにひとつの絵ができるわけです。後ろ姿であったりね。それが野球の魅力だと思うんです。バッターがホームランを打つのも魅力ですけど。かつて阪神に村山さんという人がいて、王さん、長嶋さんに対してね、ザトペック投法といって、“明日なんてどうなってもいいよ”って感じで投げるんです。でも1−2とか0−1で負けてしまう。その姿で今の阪神のファンの歴史を作っていったんですよ。僕らはそういう姿を見ながら、“かっこいいな”ってあこがれていた。今の選手の中には多分そんな人はいないと思いますよ」
松本「ちょっとつらくなるとバトンを渡しちゃう」
江本「手柄を立てたみたいに6回とか7回で帰ってくるじゃないですか。それにお客さんが拍手をする。僕、解説のときいつも怒るんですよ。“何に拍手してるの? 途中で降りちゃってんじゃないの”って。美談化されちゃうんだけど、そうじゃないと思うんですよ。ただそういうものが好きなお客さんは増えていますから、そこは難しいところなんですよ」



広島、DeNA、ヤクルトには
そろそろいい思いをさせてあげたいですね(松本アナ)


——実況アナウンサーとしては美談的なものがあったほうが喋りやすい?

江本「この人は美談大好きだからね(笑)」
松本「大げさにはやしたてますね(笑)。でも実況していてホントに自分が乗り移っていくのは、さっき江本さんがおっしゃったような、腕もちぎれんばかりに一人で仁王立ちで打線の援護がなくても頑張っているとか、痛いのかゆいの言わないでプレーし続けている姿。そういうぎりぎりのところまでやっているプレーは、盛り上げようというサービス精神がなくても自然に力が入ってきますので、そこは違いがあるかなって思いますね」
江本「我々も聞いてもらう人に感動してほしいわけですよ。でも感動は、作り物ではダメなんですよ。野球自体は作り物はできないです。だけどそれでも、めったにグッとくるものがない。でも去年も何回かはあったよね。グッときて何も言えなかったとき」
松本「ありましたね」

——今年そういうプレーを見せてくれそうな人は? 

江本「今はファンの気質が変わってきて、選手がひきつける野球をしようと思っても、見る人がそういう感覚じゃなくなってきているんですよね。だから残念というか辛いところなんです。昔は弱いと球場にはお客さんは来なかった。今は強い弱いに関係なくお客さんが来ます。ちょっとでも関心を示したら来てくれるんです。選手自体を見るというよりもどう雰囲気を盛り上げていくか、ということになっている。弱い球団も弱いなりにいろいろなサービスをやっています。例えば“ユニフォームをあげるから来ませんか?”みたいな。もらえるから行く。もらって着るけど、実はそこのファンじゃない。まあいいや、もらえるから(笑)。そういうふうに変わってきているんですよね。去年でいうと広島がいい例。1年くらい良かっただけで、もうすっかり15年間Bクラスだったこと忘れちゃっているからね。でも “カープ女子”という人まで現れて、あれはあれでいいんじゃないかと思うんですよね。そういうふうに今年も何か作られるものが出てくるんじゃないかなって思っています。昔みたいにこの選手が活躍したら盛り上がるよっていうムードじゃなくなっているんです。カープ女子の次として“オリ姫”なんていうのが出てきたりしているじゃないですか。まあ、虎姫はいらないよね(笑)。ちょっと怖そう。そういうことで球場が盛り上がってくるのかな、って思っていますけどね」 

——その後、選手がグラウンドのプレーで引きつけていけばいいんですよね。

江本「そこに選手が乗っていくと、自分の成績も上がっていく。全体としてうまくいくとそうなりますね」

——ちなみに順位予想をお願いできますか。

江本「松本さんはどうですか?」
松本「え!? いきなり僕ですか(笑)」
江本「この人は偏っていますから。多分ロッテが優勝だと思いますよ(笑)」
松本「いやあ、今年はさすがそこまでは言えないですね」
江本「解説者やアナウンサーの中にも特定のチームへの思い入れが強い人はいますからね。どうしてもそれに向いた評論とかしゃべりになってくる」

——それを踏まえて実況を聞くと面白い。

松本「よく聞いていただくとモロに力が入っている時なんかは分かると思います」
江本「松本さんの先輩の胡口さん(胡口和雄アナウンサー)なんかは、僕が巨人の悪口言うと、すぐに話を違うところに振っちゃう(笑)」

——熱が入ってきたらしょうがないですよね。

松本「ディレクターだって隣でガッツポーズしている人もいますからね。お前はお客さんか?って(笑)」

——では松本さんがセ・リーグで思い入れの強い球団はどこですか?
松本「…きついところにきますね(笑)。えー…今年はなんとなく広島とDeNAに頑張ってほしいです。去年はちょっと変わりましたけど、ずっと巨人、阪神、中日がAクラスでDeNA、ヤクルト、広島がBクラスという流れだったじゃないですか。別に好き嫌いではなくて、ずっと冬の時代が長かったので、ヤクルトも含めてこのへんのチームにはそろそろちょっといい思いをさせてあげたいですね」

——DeNAはキャンプでもいい雰囲気だったみたいですね。
松本「戦力が整ってきましたし。中畑監督も今年はそんなに騒がなくても…。地道にやられてもいいのではないですか。弱い時は中畑さんが音頭をとってお客さんを呼ばなきゃいけなかったんですけど」
江本「去年はお客さんも増えたしね」
松本「ホントに勝つ年にできるかどうかですね」

——DeNAはいけそうですか?
江本「DeNAは…なかなかね、抜けることは難しいでしょうね。幸いなことに、CS制度があるので3位狙いでいけばなんとかなるのではないかとは思います。でも3位狙いといったってね、これがまた狙っていけるものでもないんです。基本的には主力選手が働かないとダメですよね。例えばローテーションのピッチャーが2人くらい調子がいいとか、そういう最低の線がないと上にはいけませんよね」

——今年の巨人は危なっかしいんじゃないですか?

江本「特に打線がダメですね。サンスポのコラムにも書いたんですが、打線が危ない。去年は12球団でも最低だったわけですよ。去年はあまり年俸が下げられなかったので、今年悪かったら下げられるから危機感を持ってやるかなって思ったんですけど、去年より下に行くかもしれないですね」
松本「キャンプはどうでした?」
江本「全然ダメです」
松本「ホームランが打てないですよね」
江本「去年も全然打てなかったんですよ。ところが2位以下が巨人を越えられなかった」

——じゃあ、セは混戦ムードですか?

江本「いや、やはりAとBは分かれますね。僕の予想は巨人、広島の順。広島は初めてAクラスに予想しました。今時15年もBクラスを続ける球団はやり方がダメですよね。そこにむかつくところがあって、あまり上げなかったんですけど、今年は1回ご褒美に、2位に予想してあげようと(笑)。絶対無理だと思いますけど。で、3位が阪神。中畑との関係があるので、4位にDeNA」

——関係があっても4位ですか…。

江本「5位はヤクルト。そして6位は中日なんですが、いい材料がひとつもないので、ここは圏外に置いておくしかない」
松本「中日は世代交代がうまくできていないですよね」
江本「吉見と浅尾が帰ってくるとかいうけど、キャンプで見た限りでは、ほどほどは投げられるんですけど全盛期のようにはいかないんじゃないかなって思います」
……後半へ続く
27日の開幕戦 巨人×DeNA戦は
江本孟紀さん×松本秀夫アナで実況生中継!


 27日に開幕するプロ野球。ニッポン放送では開幕シリーズの注目のカード「巨人×DeNA」戦の、27日(金)のナイターと29日(日)のデーゲームの2試合を『ショウアップナイタースペシャル巨人 × DeNA 実況中継』として試合終了まで実況生中継する。開幕戦となる27日は、17時30分から試合終了まで、江本孟紀さんと松本秀夫アナウンサーのコンビで届ける。29日は14時から試合終了まで、今季から新たに『ショウアップナイター』の解説陣に加わった里崎智也さんと師岡正雄アナウンサーが担当する。

 レギュラーの『ニッポン放送 ショウアップナイター』は31日(火)から始まる「中日 × 巨人」の3連戦からスタート。平日(火〜金)と日曜は17時30分から、土曜は17時50分から。ともに試合終了まで中継する。詳細は公式サイト(http://www.1242.com/baseball/)で。