【年末年始海外旅行のススメ】海外旅行なんて大いなる暇つぶしです

海外旅行なんて大いなる暇つぶしです 『週末バックパッカー』著者 我妻弘崇さん
 昨年実施された「自分への投資」について尋ねたアンケートではどの世代においても3人に1人が「旅行」と答えています。みんな旅行に行きたがっているのにもかかわらず、旅行離れが起きている。それは旅行に行くきっかけが変わったということが大きい。

 80年代くらい、いまアラフィフより上の世代の人たちが海外旅行に出かけていたのは好奇心と探究心からでした。でも現在はいつの間にか純粋にリフレッシュを目的とする人が多いようです。リフレッシュが目的だったら国内旅行のほうがいいかもしれません。つまり若者の海外旅行に行く動機づけがない、というかどういう理由で行けばいいのか分からない人が多いんです。

 ただ一つだけそれらしきものとして考えられるのは「実利」。学生に人気がある旅行って「カンボジアで学校を作ろうプロジェクト」的な、就活のときに有利になりそうなものだったり、プラスアルファがあるものなんです。

 だから『週末バックパッカー』という本では、実利という面から海外旅行について書いてみました。

 例えば、「海外旅行の計画は2~3カ月前から立てるという意識を持とう」というのは、それによって計画性が生まれ、より旅行先への理解が深まるからです。早めに予約を取れれば、LCCはもちろん大手航空会社のチケットも比較的安価に取れることもできますので、コストも抑えることができるし、比較ができるようになります。それに有給休暇も直前に言っては取れないかもしれませんが、きちんと2~3カ月前に言えば取れる職場は比較的増えています。こういった計画を日常的に立てることによって旅が豊かになることはもちろん、そういうスキルは日常の仕事や生活に反映されてきます。先に目標があることで、身辺や仕事の整理も旅行の一部として計画的にすることができるようになる、といった具合ですね。

 先ほど書いたようにリフレッシュが目的となったことで、海外旅行はお金に余裕がある人、時間に余裕のある人のものという先入観が生まれてしまいました。またある時期、パック旅行とかスケルトンツアーというものが流行り出してから、自分の足で探して自分で計画するということがなくなってしまい、旅行離れに拍車をかけました。億劫になってしまったんですね。

 でも今ようやくそういった状況が、LCCの台頭、浸透により変わりつつあります。LCCのお陰でスケルトンツアー並みの価格の旅行を自分でも計画することができるようになりました。もともとスケルトンツアーはベタな所しか行けなかったので、まるで旅行感がなかった。それにパッケージツアーだと現地の人とコンタクトを取る機会なんてなかなかない。でも個人旅行だったら、自分でなんでも交渉しなければいけない。となると自然とコミュニケーション能力が磨かれます。知らない国で日本語以外の言葉を使って、初対面の人に交渉する。それを体験して日本に戻って仕事をする。仕事におけるコミュニケーションの手札が増えることを実感できると思います。「俺、あの時どうやって交渉したっけ?」ということをフィードバックして仕事に生かせばいい。要するに旅行をとにかく利用するという発想を持ってほしいんです。

 じゃあどこに行くのがいいのか?といえば、最近は「安・近・短」な海外旅行が非常に注目を集めています。安い価格で近い距離の場所に短期間で旅行をする。この形の海外旅行が増えています。休暇の長短に応じて、自分で簡単にカスタマイズできる時代になったんですね。

 一度旅行に行って「人生観が変わった」なんて言って、会社を辞めて世界一周しちゃう人がけっこう多いんですが、それは海外旅行を特別視しすぎです。極論してしまえば、海外旅行なんて大いなる暇つぶしです。それくらいの気持ちでいい。

 実利という言葉を用いていろいろお話しましたが、重く受け止めなくていいです。それはトリガーにしかすぎません。軽い気持ちで行ってほしい。ただの暇つぶし。でもどうせなら自分の生活とか仕事に反映されたほうがいいじゃないかということ。旅はそういう要素にあふれている。

 宮本常一さんという民俗学者の方が、「風のように旅をしろ」と言っています。その土地においては、しょせん旅行者なんて吹き抜ける風でしかないということ。それは例えば気持ちのいい言動だったり、態度だったり。そういう気持ちを持って旅行をすれば、現地で必ずいい体験ができるはずだと思います。(談)
『週末バックパッカー』

【著者】我妻 弘崇
【定価】本体840円(税別)【発行】星海社