清水 宏「下北沢演芸祭2017」で本紙イチオシの男

2月1日から下北沢で「第27回下北沢演劇祭'17」と春風亭昇太プロデュースによる「下北沢演芸祭2017」が開催される。さまざまな作品、演目が並ぶなか、本紙がイチオシするのが演芸祭の「爆笑!スタンダップコメディ寄席!」に出演する清水宏だ。
(撮影・上岸卓史)
スタンダップコメディは波風を立てる笑いで民主
主義の芸能。やっぱりいま日本にあったほうがいい


 清水は早稲田大学演劇研究会の劇団山の手事情社で俳優として活動していたが、退団後、俳優と並行してコメディアンとしての活動もスタート。シンバル漫談など数々の独自の芸を持ち、ライブを見た人の多くは「とにかく凄い。しかし説明はできない」と口にする。最近はスタンダップコメディアンとしても活躍中。

 まず自己紹介なんかをするときはどう名乗っている?

「スタンダップコメディアン/俳優って言っています。昨年末に一人芝居の演劇公演もやっていますので、俳優としても活動しています。スタンダップコメディについては、2年ほど前からぜんじろう君と2人で一緒にやっているんですが、形にしようということになって僕が会長になってスタンダップコメディ協会というものを設立しました」

 なぜ協会を?

「まず“名乗る”ということと“ここにスタンダップコメディをやる場所があるよ”ということを示しておきたかった。そうしないとジャンルというものが始まらないんじゃないかという思いもあったし、そうなることでようやく認める人もいる。そして新しく始める人が“ここにいけばやれるんだ”というように始めやすくなるんです」
 今回の「爆笑!スタンダップコメディ寄席!」についてはキャスティングや中身の構成などは清水が仕切っている。

「前回(昨年)はこういうものがスタンダップコメディだ!ということをみなさんに分かってもらうようなイベントでした。今回は落語家さんにも出ていただくんですが、落語家さんは見かけじゃ分からない力を持っている人がいらっしゃいます。ふだん抜かない刀を持っている方もいる。ちょっと前までは落語の場に僕らが出向いて争っていた。競合相手とも思っていたんですが、最近は落語家さんにもスタンダップコメディをやってもらったほうがいいなって思うようになってきました。共存していきたいという思いもあります。ということでテーマは落語家さんが立って、着物を脱いで落語をせずにマイク一本で喋る。それを僕らが受けて立つ。今回はそういうイベントになります」

 そもそもスタンダップコメディとは?

「いまの日本の笑いって、できるだけ波風を立てることを言わない笑い、ご機嫌をうかがうような罪のないあるある、切っても怒られない人をみんなで切るとか叩く、ということが主流だと思うんです。スタンダップコメディはもうちょっと波風を立てる笑い。あとはとにかく一人で立ってやる。スタンダップコメディは成り立ちの中で黒人の公民権運動と交流があって、ユダヤ人やマイノリティーの人が出てきて、そこでとにかく世間に向けて一人で意見を言うという伝統があった。 “I think”って。ささいなことです。“I think コーヒーはもうミルクとか入れるもんじゃない”とか、“I think 俺は黒人なんだけど、学校で逆に黒人をこういう会に呼ぶべきじゃない”とふざけて言ったりとか。ベトナム戦争に対してもそう。トランプ大統領に対しても“I think トランプは正直、喋るウンコだと思う”といったことを、全部“I think”で言う。僕はそれはいいことだと思うんです。そうすると“誰かがなんか言っていた”とか “こういう流れなんで”といった目に見えない談合なんかなくなって、いろいろな人が自分の責任で意見を言う。そしてそれを聞く。また日本だと、僕もあるんですが、二十歳前後の奴がなんか言ってきたら“お前が言うんじゃないよ”“何にも分かってないくせに”とか“名前もないくせに”とか思うことがある。芸能界でも同じことを切っていても、誰でも知っている大御所ならともかく、知らない奴が言ったら“お前誰だよ?”っていう空気になる。スタンダップコメディのルールとしては、そういう奴がいても一応は最後まで話を聞く。聞いて面白かったら“おお”ってなる。スタンダップコメディは民主主義の芸能なんです。一人一人が何かを言うということを信じている。僕はそれは非常に美しいし、やっぱり今、日本にあったほうがいいと思う。みんなが自由に物事を喋っていいんだということになれば、よく分からない空気で人がスポイルされていくこととか、風通しが悪くて気持ち悪いということはなくなっていくんじゃないかなっていうふうに希望は持っています」

 もともとスタンダップコメディをやるような志向があった?

「すべては最初に選んだ劇団が山の手事情社だったということが今思うと大きかった。他の劇団だったらスタンダップコメディはやっていなかったかもしれない。18歳で山の手事情社に入ったら、主宰で演出家の安田雅弘さんから“お前の情念とか感情とか、そういう個人的なものはどうでもいいから、まず30分間面白がらせてくれよ”という要求があったんです。エチュードというやつなんですけど、即興でやらなければいけない。それが最初だった。あとはとにかく“既存のものじゃない面白さを持ってこい”とも言われました。それはすべてにおいてで、演劇の役作りにおいてもです。なにかやると“それ、見たことあるよ。よくいるよ、そんな奴”って言われる。今の演劇では演出家は “そんな奴いないだろ”という演出をする。いつの間にかそうなっている。山の手事情社をはじめ80年代に至るまでは“そんな奴いるだろう”というダメだしだった。僕は今でもそっちのほうが面白いなって思っています。演劇もスタンダップコメディもなんですが、いま自分が生きているルールと同じルールをただ見せられて誰が希望が持てるんだろうって思うんです。無理でも、その裂け目というか、向こう側を見せるべき。だから、今回のイベントもそうですが、普段のライブでもそういうものが欲しい人に来てほしい。だから、あるあるとか、これ知っていると合コンとか会社の現場でちょっと褒められるというようなことをやる気は全然なくて、びっくりさせるようなことをやる」

 清水の面白さは言葉ではなかなか伝えられない。もちろん文章でも。このインタビューでもあの芸やネタの裏にここまで考えられたものがあったのかという驚きは伝えられたかもしれないが、真の面白さはとにかく生でライブを見るしかない。「最近は多い時は月に15本はライブをしている。少ないですけど」とのことなのでぜひ足を運んでほしい。ということで最後に今年の予定を聞いてみる。

「今年は日比谷野外大音楽堂(日比谷野音)で演劇祭をやろうと思っています。まず抽選で場所が取れないとダメなんですが、いくつかの劇団に声をかけて8月にやろうと思っています。台風もありますけど、やっちゃう。とにかくいろんな劇団に出てもらって、演劇をやる。清水宏の炎の演劇部主催の大演劇祭」

 どうなるか想像もつかない。

「僕も全然想像できないです(笑)。そしてひとり芝居も全国に持っていきたい。スタンダップコメディーはとにかくひとつの流れを作りたい。去年はいけなかったので、今年は海外にも行きたいんです。今年は中国に行きたいなと思っています」

 中国語でやる?

「ええ。あと英語圏のどこかにも。ロシアもいい。計画のブレブレ具合がすごいです(笑)。日本で広めるのが先決なんですが、やっているということを証明していかないといけないのと、海外は長く行かなくなっちゃうとそのままになっちゃう。やり続けないとダメ。このところ英語コメディーをあまりやっていないので、やらないとダメだと思っています」

 じゃあ今年は中国語とロシア語を覚えなきゃいけない。

「…ロシアを…後回しにします(笑)。時間がもっと欲しいです」

 相変わらず考えることが破天荒! (THL・本吉英人)
爆笑!スタンダップコメディ寄席! 
【日時】2月5日(日)17時開場、18時開演【会場】本多劇場(下北沢)【料金】全席指定 前売り3500円、当日3800円【問い合わせ】下北沢演芸祭実行委員会事務局(ティルト内)(TEL:03-3462-5606=月?金11?18時  http://www.shunputeishota.com/event/2017/02/event-1902.html )【出演】清水宏、ぜんじろう、ラサール石井、立川談慶、春風亭一之輔、林家彦いち