落語も熱いぜ! フジオロックフェスティバル

 赤塚不二夫の没後10周年を偲び、8月1日、2日、恵比寿ガーデンプレイスで「フジオロックフェスティバル2018」が開催。大物アーティストによるライブや盆踊り、屋台の出店などとにかくにぎやかでご陽気なフェスティバルだ。
 1日には昼席、夜席と2回の落語会が行われ、赤塚不二夫をリスペクトする落語家や芸人たちが集結、イベントを盛り上げた。

 昼席は、柳家喬太郎、寒空はだか、林家彦いち、三遊亭白鳥、清水宏、立川吉笑という豪華な顔ぶれ。夜席も、春風亭昇太、寒空はだか、桃月庵白酒、立川生志、水道橋博士、柳家わさびといったこれまた人気者が集まった。

 17時から始まった夜席の開口一番は柳家わさび。ネタのチョイスに悩んだと言いながら、フジオロックフェスティバルにふさわしい、自身の新作落語「うなぎねこ」を披露。これは毎月やっている三題噺(3つの言葉やお題を客席からもらい、その言葉や内容を使って即席で噺を作り演じること)をやる会で作ったもので、その時与えられたキーワードは「エリザベスカラー」「鬼ごっこ」「じれったい」の3つ。野良猫の恩返しのような、ハートフル(?)な噺に会場は大盛り上がり。トップバッター、最年少(と言っても38歳とか!)、そして「趣旨が良く分からない」(わさび)という不安の中、野良猫を見事に演じきった。

 続いては水道橋博士。赤塚不二夫と言えばタモリという事で、お忍びで来て一番後ろに座っていたタモリをサプライズで紹介。客席が一斉に後ろを見たところで「バカは見る~」とまさかのウソ?! おちゃめなボケは赤塚へのリスペクトを感じる。そこからは、水道橋ならではのひねりの効いたしゃべくり。決してテレビや雑誌では見せる事のできない写真や動画を惜しげもなく披露。その場にいた人たちだけが共有できる笑いは、会場に一体感をもたらす。一期一会、出演者と客席が共犯者となって作る舞台は蜜の味。これだから生(ライブ)はやめられない。

 大分客席が温まったところで、マキタスポーツが高座返しとして登場。マイクをセットし、めくりをやってそそくさと退場。入れ替わりに、立川生志が高座に上がる。師匠・談志のパーティーで赤塚本人に一度だけ会った事があるという生志が、その時のエピソードを披露。なんだかほっこりする話…からの落語。実はこの日、昼席もすべて新作で、これまで古典はやっていなかったという。そこにこの時期ぴったりの「青菜」で客席を古典の世界へ。導入の涼し気な噺はどんどん暑苦しい噺になるのだが…。ここへきて、落語会だった事を思い出した。

 休憩を挟み、後半戦のトップは桃月庵白酒。ふくよかでえびす顔の悪魔が今日も元気に毒を吐く。本家(?)のフジロックを軽くディすると、トランプ大統領、ほかの落語家の弟子をボロクソに。ニコニコ笑いながら出るのは悪口ばかり(笑)。と、そこからのこちらも古典落語「粗忽長屋」へ。粗忽者(そそっかしい者)2人の間抜けな会話をよどみなく、思いっきりおバカに演じる。お見事な粗忽っぷりは愛おしさすら感じさせ、芸のうまさが光る。毎度のことながら外さないくすぐりもお見事。最後のサゲは鮮やかにさりげなく、きれいな落語。

 ここで、スタンドアップコメディの寒空はだかにバトンタッチ。音楽ネタで盛り上げる。中トロ当てクイズ(イントロでもアウトロでもなく。曲の途中を歌って当てるゲーム)では、微妙なところを切り取り、見事な出題。感心するやら、面白いやら。知的でシニカル、そしてバカバカしさの加減がいい(良い)加減のベテランの芸を堪能した。大ヒットナンバー(?)「東京タワーの歌」から、ラストソング「バカの壁」に。応援歌風の歌に乗せられ客席からは大きな手拍子が起こり、大きなうねりとなったが、最後は静かに収束させスマートに舞台を降りた。

 お次はトリの春風亭昇太!という期待をいい意味で裏切り、飛び入りでラサール石井が舞台へ。元祖(?)インテリ芸人の面目躍如で、政治などの時事ネタをかなり際どい角度からぶっこむ。その後、春風亭昇太も現れ2人で替え歌メドレーを披露。ユーミンの「恋人はサンタクロース」のメロディーで歌った日大アメフト部の歌は、今年いっぱい使えそう。宴会用にぜひ覚えたい一曲。

 そして、そしてお待ちかねの春風亭昇太の高座。笑点というオバケ番組の司会者という、落語家としては上がりのような立場にもかかわらず、攻めの姿勢と活舌の悪さは健在。先日亡くなった桂歌丸の追悼コメント会見の様子を爆笑に変えて話す。落語家の生きざまというか、死にざまは粋であるとつくづく感じる次第。すると突然、すくっと立ち上がり「ずーっと来ていない着物があって…。今日出がけに思い出して来てみたら、ほら、バカボンの着物の柄!」と得意顔。どうせならと帯を胸まで上げ、そのままの姿で落語に突入。着物の袂を持ちパタパタさせて、唇をとがらせて“チュンチュン”と雀の真似をすると、会場にいた子どもが大爆笑。その後も昇太が何かをするたびに笑い転げるその声に、大人たちもつられて笑い出すという笑いの連鎖で、会場は異様な雰囲気に。昇太節炸裂に、「鷺とり」という古典落語はこんなんだっけ? という疑問が…。そのまま最後まで爆笑で突っ張り落語会は終了。

 最後は水道橋博士をのぞく出演者全員が舞台にあがり、みんなで締めの一言。

「これでいいのだ!」