[吉村崇×Violet Eva Special対談]「我々のショーで日本の働き方すら変えてやりますよ!」

「女性が楽しめるコンテンツが日本の平日には少ない」と語るのは、先に紹介した『Buttefly東京〜ボーイレスクショー〜』のT.YOSHIMURAこと吉村崇(平成ノブシコブシ)と、演出・監修を担うViolet EVA。IR・カジノ誕生へのカウントダウンが始まり、日本のステージパフォーマンスも新たな局面に向かう今、異色のコラボを実現させた二人に、ショー・パフォーマンスの可能性を聞いた。
吉村崇

ステージパフォーマンスは新たな時代に突入


エヴァ(以下・E)「歴史の古いバーレスクと違って、ボーイレスクというジャンルは、比較的新しいんですね。2006年のBurlesque Hall of Fame(ラスベガスのバーレスク世界大会)で初めて「ボーイレスク部門」が新設され、2010年頃からボーイレスク・パフォーマーが急速に増え始めた。ですから、『Buttefly東京』はとても伸びしろのあるイベントだと思います」

吉村(以下・Y)「偶然にもボーイレスクと出会ったときに、“これは自分にとっての新大陸発見になるのでは?”と思ったくらい。エヴァ先生からそういった話を聞かされて、この巡り合わせに感謝しかないですよ!」

E「ただ……吉村さん、あまり練習しませんよね!?」

Y「運と勘だけで生きてきた男ですから! 頑張っているつもりなんですけど、いやはやレベルが高くて。正直、軽い気持ちで始めたので、ここまでテクニカルでハードだと思わなかったんですよ」
Violet Eva
E「バーレスク・ボーイレスクは、色んなジャンルのダンスを基軸に、『ティーズ(じらし)』という表現を使って魅せるもの。ただ踊るだけでなく、衣服を脱ぐという技術も必要です」

Y「でも、ものすごく自由ですよね? 僕も1年間やらせていただいていますけど、いまだにボーイレスクの定義がよく分からない。さすがにアキラ100%は、ボーイレスクじゃないですよね?」

E「う〜ん、私の中では一応、ボーイレスクかな」

Y「いやいや、どう見ても宴会芸でしょ! 僕が言うのも変ですけど、ボーイレスクはもっと妖しさがありますよ!」

E「それでいったらショーの中で演じている吉村さんのパフォーマンスのほうがボーイレスク的には異端ですね。あんなボーイレスク、ほとんど見たことがない(笑)」

Y「えッ? お盆で局部を隠すよりも、僕のほうが異端なんですか!?」

E「バーレスクは、主に「クラシック」と「ネオ」の2種類に分けられますが、もしかしたらネオとしてバカ受けするかもしれない。吉村さんは華もあるし」

Y「自分の運の強さに……軽く引きますね。完全に意図していないのに、もしかしたらボーイレスク界の革命児になれるかもしれないなんて」

E「でも! 練習はしてくださいね。吉村さんたちのような違うジャンルの方がボーイレスクをすることで、より多くの魅力と面白さが伝わると思っているんですから」

Y「たしかに、ストリップと混同している人もいますし、バーレスク・ボイーレスクとしての魅力を伝える懸け橋になれればという責任は感じています。それが芸人である僕たちが、ボーイレスクに挑戦する醍醐味でもある」


E「日本は、もともと演芸や寄席といったステージパフォーマンスが一般的だったのに、テレビが登場して以降、低迷してしまった。でも、今再び落語が注目を浴び、マッチョ29などのユニットが人気を博しているということは、その揺り戻しが訪れているんじゃないかしら? だからこそ、ボーイレスクのような接したことがあまりないジャンルも、大きな可能性を秘めていると思う」

Y「やってやりますよ! あと、魅力を知ってもらうことも大事ですけど、自分でやってみて分かったのですが、“どう見ていいか分からない”って人も少なくないですよね?」

E「うん。これって人目を気にしてしまう日本人ならではの問題でもあると思う」

Y「せっかく会場に来ても、“楽しみ方が分からない”のはもったいないですよ。最初の頃は服を脱いでも反応がいまいちだったから、“スベってんのかな?”って思ったほどです」

E「そのときは、(ショーで使用する疑似の)チップの渡し方もぎこちなくてね。ところが、回を重ねるごとにお客さんも盛り上がり方が分かってきて、今ではとても雰囲気が良いと感じます」

Y「すごいうれしいですよ。どんどん楽しんでほしいし、こういう場所で自分なりの楽しみ方を見つけてほしい。僕は、海外に行くと、クラブの隅っこでモジモジしている日本人や、カジノでおどおどしている日本人を見ると寂しくなるんですよ。“ここは日本じゃないんだぜ”って。でもその一方で、そもそも日本にはそういう場が少ないし、行けても一部の免疫がある人ばかりが盛り上がるから、引いてしまうというか」

E「私の友人でもある海外のバーレスク・ダンサーが、“日本には平日に楽しめるイベントが少ない。特に女性が楽しめる場所が少ないように思う”って言っていたんだけど、日本はイベントが土日に集中するがあまり、人気コンテンツに集中し、他の良いものが発見されづらい傾向がある」

Y「なるほど。たしかに、キャバクラをはじめ男性が楽しめるスポットやイベントは多いけど、女性が楽しめる場所やイベントはあまりないですね」

E「これってけっこう根深い問題だと思う。土日にイベントがあるのが当たり前になれば、“土日しか遊べない”“土日まで羽を広げるのを我慢する”という発想になるでしょ?」

Y「平日に楽しむことに罪悪感を覚えてしまう人もいそうですね(苦笑)。そして、習慣がないから楽しみ方が分からない……」


E「欧米では、ウィークデイに息を抜くことが当たり前。『Sex and the City』に登場するような女性たちがたくさんいる。私は、水曜日にバーレスクイベントを開催しているのですが、少しでも日本の習慣に一石を投じられたらと思っています。働き方の前に、休み方を知らないと!」

Y「今は僕たちのイベントも週末が多いですが、その話を聞いて、俄然、平日に開催してみたくなった。仕事でクタクタの人が、僕たちのイベントに来ると人が変わったように楽しめたら、パフォーマー冥利に尽きますよ。我々のパフォーマンスによって、日本の働き方改革を実現させたいですね!」

E「ホント、そうなってほしいなぁ。吉村さんたちには、その種を撒いてほしいですね」

Y「日本にもIR・カジノができることが決定しましたからね。今後は、さまざまなステージパフォーマンスがもっとフィーチャーされると思うんです。そのときにパフォーマンスする側だけが盛り上がっても仕方ない。僕は、このイベントを通じて、楽しみ方を教える伝道師でもありたいですね」

E「やっぱり大いに楽しく盛り上がって、見てくださるお客さんあってのステージですからね」

Y「分かります。僕らも初めてルミネの舞台に立ったとき、10分間、ひとっつも笑いが起きず、途中から空調の音がこだましていたくらいです。そんな地獄があってはならない」

E「バーレスク・ボーイレスクだけじゃなくて、日本には“この人を見てほしい!”というパフォーマーがたくさんいる。『Buttefly東京』では、ジャンルを超えたパフォーマーをゲストに迎えて、自由な空間を演出していることも大きな魅力だと思う。まぁ、私が紹介したいから、というのもある(笑)」

Y「いえいえ! 実際、僕らもすごい影響を受けています。“こんなすげぇ人がいるのか”って。テレビ以外にも、ネットやショーステージなど娯楽が多様化しつつある今だからこそ、こういう場で学ぶものがたくさんある。それはきっとお客さんも同じだと思う。紋切型の楽しみ方じゃなくて、もっと自由に、自己流に楽しめるってことを、『Buttefly東京』で体感してほしい」

E「そのためにも練習はしてくださいね」

Y「ははは……先生! 僕は“練習”の価値観すらも変えてやりますよ!」
吉村崇よしむら・ たかし
1980年北海道生まれ。2000年、東京NSC5期生同期・徳井健太と平成ノブシコブシを結成。“破天荒”を自称するキャラクターで注目を集め、テレビ、ラジオ、コラム執筆など、多岐にわたって活躍中。2017年から『Buttefly東京〜ボーイレスクショー〜』の座長を務める。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。
Violet EVA
「愛」をテーマに踊る、ポップでキッチュなバーレスクパフォーマンス集団『紫ベビードール』の紫頭。バーレスクパフォーマー、振付、指導など多方面で活躍中。 「EXOTIC WORLD WEEKEND 2007」(現:Burlesque Hall of Fame Weekend)@Las Vegas, USA「Best Debut」(新人賞)優勝など。