郷州政宜が悲願のベルト奪取【10・1 Krush.81】

郷州(右)は武骨にパンチを放ち続けた(撮影・荒木理臣)

最終ラウンドにダウンを奪い無敗の王者に初黒星つける
「Krush.81」(10月1日、東京・後楽園ホール)のダブルメインイベント第1試合でKrush-60kgタイトルマッチが行われ、王者・安保璃紅に郷州政宜が挑戦した。

 安保は今年2月から行われた第5代王者決定トーナメントに参加。5月には決勝で長くこの階級でトップ戦線で戦ってきたレオナ・ペタスを破り、無敗のまま王者となった。

 2人はトーナメントの準決勝で対戦し、安保が判定勝ち。郷州はその後、並行して行われていた時期挑戦者決定トーナメントに欠場選手が出たことから急きょ参戦。闘士、大沢文也を破り、このチャンスをつかみ取った。

 試合は1Rから郷州がプレッシャーをかけて前に出るものの、安保はローにパンチを合わせ、連打。なおも郷州が前に出ても安保は足を使って郷州に連打を許さない。高速ジャブを放っては距離を取るなど安保の巧みさが目に付く展開となるが、郷州は終盤、ロープに追い詰め右フックをクリーンヒット。足を使ってかわす安保を追ってパンチの連打を打ち込むなど、前半こそ安保のペースだったが、徐々に郷州が盛り返す。

 2Rになっても安保の高速ジャブと軽快なステップは止まらない。郷州もパンチを放ち、連打につなげるものの、的確さでは安保が上回る。しかしこのラウンドも後半になると郷州のパンチが当たり始める。
 ジャッジが難しいラウンドが続く中迎えた3R。郷州は一気に距離を詰めパンチの連打を放つが安保も連打で応戦。左右のフックから左アッパーと的確に当てていく。そして足を使って離れては郷州の反撃を許さない。それでも執念で安保を追い詰める郷州はロープに詰めて連打。しかし安保の足は止まらない。残り30秒、なおも追う郷州は安保の左ヒザ蹴りに左ストレートを合わせると安保は尻もちをつく形で倒れ、ダウンの宣告。スリップを主張した安保だったが認められず、立ち上がったものの、残された時間はもうなくゴング。

 判定は29-27、28-29、29-28の2-1で郷州が勝利を収め、悲願の王座獲得となった。

奥さんをお姫様抱っこする郷州。後ろの梶原代表の目にも光るものが…。(撮影・荒木理臣)

「健常者の世界でも1番になれることを証明できてよかった」
 勝った瞬間、号泣する郷州。その姿を見守る師匠の梶原龍児の目にも光るものがあった。

 ベルト授与後にマイクを持った郷州は「耳の聞こえない子どもたちも来ているので手話通訳者をお願いしたいんですけど」と通訳の人を呼び込むと「私は耳が聞こえません。聞こえない人でチャンピオンになった人は自分が初めてです。聞こえない子どもたちを招待しているんですけど、ちゃんと見ていてくれたかな。自分も小さい時に聞こえないからどうせ無理なんだなって考えることが多かったんですけど、聞こえない子どもたちに自分の姿を見せて、聞こえなくても、健常者の世界でも1番に、チャンピオンになれることを証明できて本当によかったです。聞こえなくてもできるんだなって思って、努力して結果を出してほしい。私はここで終わりじゃありません。これからも夢を追い続けて頑張ります」と同じ境遇の子供たちにメッセージを送る。

 そして自分をサポートしてくれている人々に感謝の言葉を述べると「Krushのベルトの価値を高めることはもちろんですけど、3月の(K-1の)スーパーアリーナでさらに高めた自分をお見せしたい」とK-1参戦をアピール。そして「チャンピオンになったら奥さんをお姫様抱っこしてほしいと言われていたので、よろしいでしょうか」と奥さんを呼び込み、お姫様抱っこで喜びを分かち合った。

横山(左)のハイが闘士を襲う(撮影・荒木理臣)

横山が2度のダウンを奪い世代闘争制する
 この日はこの-60kgの「闘士vs横山巧」「明戸仁志vs山本直樹」の2試合が行われた。

 闘士と横山は挑戦者決定トーナメントの準決勝で敗れた同士。そして34歳の闘士と19歳の横山という世代闘争の側面もあり、より一層サバイバルマッチの様相が強い戦いとなった。

 横山は1Rから手数で上回る。2Rも横山は距離を詰めパンチを放っていくが、闘士はカウンターのフックで横山の突進を止め、パンチで反撃。横山は鼻血を吹き出しながらの戦いとなるが、それでも距離を詰めパンチの連打で闘士を追い込んでいく。

 3Rも横山の勢いは止まらない。前蹴りで闘士を吹っ飛ばすと、打ち合いからスリップダウンした闘士にパンチを放ってしまうなど、闘争本能むき出しの戦いを見せる。再開後、横山の右ストレートで闘士が膝をついてしまいダウンの宣告。立ち上がった闘士が反撃に出るが、横山は下がりながらも右フックからの左フックで2度目のダウンを奪い、30-26、30-26、30-25の3-0の判定で勝利を収めた

山本の左ミドルで明戸の右わき腹はミミズばれに(撮影・荒木理臣)

山本が非情な左ミドルで明戸を粉砕
 明戸vs山本は4連敗中の明戸と3連勝中の山本の勢いの差がそのまま出る試合となった。

 山本は1Rから多彩な蹴りとパンチで明戸を追い込んでいく。山本の左の三日月蹴り、ミドルキックが決まりだすと明戸の右わき腹はみるみるうちにはれ上がり、体をくの字にして、山本の攻撃をしのぐので精いっぱい。2R以降、間合いを詰め、パンチに活路を見出す明戸だったが、山本が左のミドルを蹴ると、またも明戸は体をくの字にして攻撃の手が止まってしまう。

 結局判定となったがジャッジ3者とも30-27の3-0で山本が4連勝を飾った。