1号機メルトダウンで工程表改訂 実現できるの?

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 東京電力は12日、福島第1原発1号機で、燃料棒(長さ約4メートル)が冷却水から完全に露出して溶け落ち、圧力容器下部に生じた複数の小さな穴から水とともに格納容器に漏れた可能性があると発表した。東電は、この状態を「メルトダウン(炉心溶融)」と初めて認め、格納容器ごと水を満たして冷やす「冠水(水棺)」作業の見直しに着手した。

 そして14日には1号機の原子炉建屋地下(天井までの高さ約11メートル)の半分程度まで水がたまっているのを確認したと発表した。建屋地下の容積は約6000立方メートルのため、たまり水は約3000トンとみられた。15日にはこの漏水が原子炉からのものと判断した。

 また16日には事故対策統合本部事務局長の細野豪志首相補佐官は「1号機で炉心の完全溶融(全炉心溶融)をなかなか認定できなかったのは反省しなければならない。2、3号機でもそういうことがあり得ると考えている」と述べ、両機でもメルトダウンが起きている可能性があるとの認識を示した。

 東電も「1号機同様に、2、3号機でも実際の水位は見かけより低い」として、「最悪のケースでは、炉心の形状を維持せず、落下している」との見方を明らかにした。

 薄々感じてはいたのだが、工程表はやはり絵に描いた餅だったのではないか…と日本中が思っていたところ、17日に東電が工程表の改訂版を公表した。4月17日公表の工程表で示した、事故収束まで6〜9カ月を要するとの見通しは維持したが、1号機でメルトダウンが判明したことを受け、格納容器を水で満たして冷やす「冠水(水棺)」作業を事実上断念。軌道修正を迫られた。

 当初、東電は「炉心の形状は維持している」として全炉心溶融を否定していたが、武藤副社長は「燃料が溶融する可能性は頭の中におきながら対処してきたつもりだ」と弁明。「事故直後に炉心が溶融したことが確認できたことで、(工程表の日程が)変わることはない」との考えを示した。

 改訂版では、原子炉や燃料貯蔵プールの冷却のために注入された冷却水が、高濃度の放射性物質(放射能)を含んだまま汚染水となって漏れ出ていることから、冠水作業に優先して汚染水対策の強化を掲げた。

 当初の工程表では3カ月後の「安定冷却」と、6〜9カ月後の原子炉内の温度を100度未満にする「冷温停止」の達成が掲げられていた。原子炉の冷却に向け、1〜3号機とも格納容器内を水で満たして冷やす冠水が当面の目標だったが、改訂版では「汚染水を処理して原子炉の注水に再利用する『循環注水冷却』を、冠水よりも先に実施する」と見直した。

 2、3号機でも、全炉心溶融や圧力容器の損傷が確実になれば、改訂版の「3カ月後までに原子炉の漏洩箇所の密閉」という目標も、実現性には疑問符がつきまとう。

 一方、17日には政府の原子力災害対策本部(本部長・菅直人首相)が原子力被災者への対応に関する工程表を発表したが、国の責任を明確にしたものの、あくまで東京電力が示した日程に沿ったもので、先行きは不透明。しかも、枝野幸男官房長官が原発事故で東電の賠償を支援する法案提出を臨時国会に先送りする方針を示すなど、被災者支援の“本気度”が問われた。

 これに対し、民主党の事故対策部会は17日、賠償支援策の関連法案を今国会に提出するよう政府に求める意見書をまとめるなど、枝野氏らの先送り姿勢に疑問を示している。海江田万里経済産業相も同日の会見で、賠償支援法案について「できるだけ早くお願いしたい」と繰り返した。