長島昭久のリアリズム 第十回





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「海洋国家日本」の外交・安全保障戦略(その7)



 さて、本シリーズの締めくくりにあたり、我が国の外交・安全保障戦略について3回に分けて論じてみたい。まず第一に、日本独自の努力について明らかにする。冷厳な国際社会の現実は、今も昔も「セルフ・ヘルプ」の一語に尽きる。自助努力なしに、安易に他国(たとえ同盟国といえども)に頼れば、それは「依存」に他ならず、米国とてそんな友人を本気で相手にしまい。

 国家目標も戦略もはっきりしない「顔の見えない」国などと揶揄されることの多い我が国だが、一昨年の暮れ5年ぶりに「防衛計画の大綱」を改定し、防衛計画にとどまらず安全保障戦略について明確な方向性を打ち出したのである。その最大の眼目は、活発化する中国の海洋行動とそれを支える軍事力の拡張に鑑み、中国軍事力のプレッシャーを正面から受ける沖縄をはじめとする我が国の南西方面における「動的防衛力」をいかに整備して行くかだ。

 冷戦以来、防衛力整備の基本構想だった北方重視の「基盤的防衛力」を脱却し、より柔軟で機動性に富む即応性の高い防衛態勢を目指すものだ。予算制約の中で、海空戦力を充実させ、陸上自衛隊の一部に海兵隊的な機能を担わせる方針を打ち出したことは特筆に値する。とくに、平素から警戒監視能力を高め、有事に際し迅速に所要兵力を緊急展開できるよう海空の輸送力を拡充し、島嶼防衛において自律的な能力を整備して行くことが明記された。

 第二の課題である日米同盟の深化をめぐっては、本年2月、日米両政府が普天間飛行場の移設と米海兵隊のグアム移転のペースを切り離す決断をした。これにより、日米協議の正面から普天間問題を取り除き、「アジア太平洋地域に日米共同の動的抑止体制をいかに構築すべきか」という日米両政府が本来取り組まねばならない課題に注力できる環境を整え得たのである。ここで目指す共同の「動的抑止体制」とは、動的防衛力の整備を目指す我が国の新防衛大綱の趣旨と米国の新国防戦略指針で明らかにされた「分散化」の方向性をシンクロさせたものといえる。

 すなわち、日本全国の米軍基地を日米で共同使用したり、有事の際に我が国の民間港湾や空港を米軍に開放することや、場合によっては自衛隊の哨戒機をグアムに常駐させる、あるいはテニアンで米軍との共同訓練をやる、インド洋のディエゴガルシアも日本が米英と共同で使用する、といったダイナミックな運用の可能性をも見据えているのだ。このような日米共同の動的抑止力を、前回までに詳述してきたアジア太平洋の戦略情勢にどのように展開して行くかにつき次回で論じてみたい。