SPECIAL INTERVIEW 蒼井優

約8年ぶりのタッグ作! 岩井俊二監督最新作『ヴァンパイア』

『リリイ・シュシュのすべて』『花とアリス』に続く蒼井優×岩井俊二監督の最新タッグ作が公開。カナダを舞台に全編英語で撮りおろされた、岩井ワールドの“ヴァンパイア”物語に、ミューズ・蒼井の存在感が光る!

 病身の母親と暮らす高校教師・サイモンはwebサイトに集まる“死にたい少女たち”の血を求める。しかしそれはピュアな愛へと昇華して…。岩井ファン待望の長編劇場映画となる本作は蒼井優にとっても久しぶりのタッグ作。

「台詞の面白さは相変わらずだなと思いました。台詞は英語だし、外国の俳優さんが出ているところは新鮮ですけど(笑)、どこに行っても岩井さんの世界観は独自なものなんだな、と」

 ヴァンパイアと聞けば、超自然的なキャラクターと物語を思い浮かべるが…。

「サイモンは、ヴァンパイアというか…変質者(笑)? ボトルで血を飲んでいるシーンとか、クスッと笑っちゃいました。サイモンが“君は僕の中で生き続ける”と言いながら後で吐いちゃうとか、ブラックジョークも岩井監督らしい。監督が考える現代の“ヴァンパイア”なんでしょうね。リアルとファンタジーのバランスも、監督らしいと思いました」

 蒼井が本作で演じるのは自殺願望のある留学生・ミナ。サイモンと、あるつながりを持つことになる重要な役どころ。

「実は3、4年ほど前、ロスの岩井監督を訪ねた際、台本を読ませて頂いたんです。まさか自分が出るとは思っていなくて“岩井さん、変態度が増しましたね”なんて返したんですけど(笑)」

 今回、撮影前日にロケ地・カナダに入り台詞の練習をしたところ…。

「現場で“留学生の英語に聞こえない”と言われてしまって。結局、カナダ人から日本人的な発音を教えられました。“ウオント・トゥー”って(笑)」

 少女期の不安定さを繊細な表情で演じた蒼井。そんな蒼井の“永遠の少女性”を見出したのが岩井監督だ。

「『リリイ—』の後、東京で仕事が続くようになって、監督に“岩井さんのせいでクニに帰れなくなりました”とメールしたら“俺が責任とるから”と(笑)。それを覚えていてくださっているのかな」

 撮影以外でも連絡を取り合うという2人。普段はどんな会話を?

「監督がこの作品を書いているころ“最近、胃が面白くてしようがない”という話をよく聞きました(笑)。“胃という臓器がいかに面白いかということを知っているか、胃液は食べものと同時に胃も溶かしていて…”という話を、3〜4回は聞きました(笑)。監督は好奇心旺盛な方で、会う度にそういう面白い話をしてくれるんです。何かにハマるとその話を熱心にするところはうちの父に似てるんですよ」

 監督も、娘のように思ってくださっているのかな、と蒼井。

「私にとって監督は、お芝居の世界の扉を開けてくれた人。そして人生の分岐点に立っていてくれる人なんです」

 女優・蒼井優に魅了されたのは岩井監督だけではない。公開中の映画『るろうに剣心』も大河ドラマ「龍馬伝」に続く大友啓史監督との再タッグ。

「それは、たまたまだと思います(笑)。私にとって同じ監督とまた仕事できるのは光栄ですけど、怖さもあるんです。人と会うときって2回目のほうが緊張したりしません? 少し時間が空いてからもう1回会うとき前回の楽しさを再現できるかな、とか考えてしまって。例えば李相日監督とご一緒させて頂いた『フラガール』は本当にいろいろな人に楽しんで頂いて、素晴らしい関係性を築くこともできた。次も同じようにできるだろうかとか。岩井監督のときも、最初は私が何も知らないところから演出してくださったんですが、次の『花とアリス』で監督の前で芝居するときには、本当に緊張しました。色がついたなと思われるんじゃないかとか考えてしまって。今回は台詞が英語だったせいか、そんなことは思わなかったですけど(笑)」

 英語の台詞でナチュラルな演技を見せた蒼井だが「基本的には日本映画が好き」とのこと。これからも岩井監督の、そして日本映画のミューズとして輝き続けてくれそうだ。   
(本紙・秋吉布由子)

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『ヴァンパイア』

脚本・監督・撮影監督・音楽・プロデュース:岩井俊二 出演:ケヴィン・ゼガーズ、ケイシャ・キャッスル=ヒューズ、蒼井優他/1時間59分/ポニーキャニオン配給/9月15日よりシネマライズ他にて公開 http://vampire-web.comhttp://vampire-web.com