街は、女たちが彩ってきた。男は、女たちが知っている。

『娼婦たちから見た日本』著者:八木澤高明

 写真週刊誌フライデーの専属カメラマンを経てフリーライターとして活躍する著者が、10年以上にわたり、日本国内外の売春街と娼婦たちを取材してきた渾身のルポ。プロローグで著者は語る。「娼婦は、常に日陰に生きている。その存在から漂ってくる危うさ故に、私は彼女たちを知りたくなってしまう。旅を続けていくうちに、売春の歴史も辿ることで、日本という国を普段とは違った角度から見られるのではないかと思った」。その言葉通り、日本の各地に色街はあり、決して表の歴史には残らない裏の歴史がそこにはある。例えば、横浜黄金町。今ではアートイベントを開催するなどおしゃれな街へと変貌しているが、以前は「ちょんの間」と呼ばれる売春施設が路地という路地にあった。そこで生きてきた娼婦たちの人生を知ることは、日本という国の別の顔を見せてくれる。また、著者は巨額の金を日本人から貢がせてその名を轟かせたチリ人のアニータへも会いに行っている。そもそもじゃぱゆきさんとして日本に来た彼女は、母国では成功した女、アメリカンドリームならぬジャパニーズドリームの体現者として、憧れの存在だという。彼女の目には日本がどう映っていたのか。売春の根底にあるのはかつて貧困だった。しかし、秋葉原でサラリーマンに簡単に声をかけたり、インターネットで気軽に援助交際を求めたりする女子高生など、売春が日常の中に溶け込むようになった。娼婦はこれからも姿を変え存在し続けるのかも知れない。



【定価】本体1700円(税別)【発行】KADOKAWA