忽那汐里 ハリウッド映画では英語で芝居! 最新出演作『ねこあつめの家』はまったりねこあつめ!?

挑戦しない理由はない。だから先へ進む

 猫からもらった癒しは、あくまできっかけ。

「やっぱり、自分が何をしたいのか、どんな夢を持っているのか、漠然とでも意識していることが大事じゃないかな。一度、立ち止まったとしても、それが頭のどこかにあることで、自然とそちらに向けて自分から行動できるようになると思うんです。結局は自分がやろうと思うか、思わないか。それをミチルもよく分かっていたから、佐久本先生が自分から動き出すのを待っていたんだと思います」

 忽那自身は、女優としてどんな思いで歩んできたのか。

「もともと私は、女優になるなんて夢見たこともなかったんです。ひょんなきっかけで、ある作品のオーディションを勧められて受かったことが始まりでした。それまで、女優になることも、生まれ育ったオーストラリアを離れて日本で暮らすことも、考えもしませんでした。ですけど、受かった瞬間、これから日本で女優をやるんだということにまったくためらいは無かったんです」

 慣れ親しんできた地を離れ、女優という未知の世界に一歩、踏み出す勇気をためらいも無く持つことができた理由とは。

「一つは、そのとき明確に目指していたものが特に無かったということもあると思います。かつ私の場合は、嫌だと思ってないなら挑戦しない理由が見つからない、というか。それで後先考えずに。勢いですね(笑)」

 そのとき踏み出した一歩が、今ではハリウッドにまで届いた。近年、日本とトルコの合作『海難1890』や、ウェイン・ワン監督の『女が眠る時』など国際的な作品にも積極的に挑戦。そして、オスカー俳優のジャレッド・レト主演の映画『ジ・アウトサイダー(原題・2017年全米公開予定)』でハリウッドデビューを果たす。

「海外の作品にも挑戦していきたいとずっと思っていて、ちょうどいいタイミングでオーディションの話があったので、チャレンジしてみよう、と。舞台は50年代の大阪の裏社会で、ジャレッド・レトさん演じる主人公が日本の裏社会に踏み込んでいく物語です。けっこうバイオレンスやアクションも多い作品になっていますね。私はやっていませんけど(笑)」

 忽那にとって日本だけでなく海外作品にも挑むことのメリットとは?

「ほとんど英語で芝居をするということがこれまで無かったので、それも今回は大きな経験になったと思います。英語は話せますけど、英語で芝居をするというのはまた違ってきますし、海外の監督が求める芝居は、日本の作品とはまた違うんです。どちらかというと、ものすごく強い女性像を求めてくる気がします。なので役を作っていく感覚も違いますし、海外作品ならではの現場の雰囲気も、また違う。今思うと、よく無事に演じ終えたと思うほど、別世界な体験をした気がします(笑)」

 苦笑しながら振り返る忽那だが、その別世界での経験こそ“挑戦しない理由はない”ものだったのだろう。

「現状、まだ海外作品でアジア系の女優に与えられる役の幅は限られているとは思うんですけど、それでもやってみたいと思う作品でチャンスがあるなら、これからも挑戦していきたいですね。英語は世界共通言語だから一見、近い感覚でできるように思いますけど、実際は国や文化によってまったく異なったりする。いろいろな表現で芝居できるというのは役者にとってはメリットになると思います。それに、日本ではあまり扱わないようなテーマの作品に参加することもできるかもしれないし、珍しい作品を多くの人に紹介できるかもしれませんし」

 逆に、忽那が出演する日本映画を海外の映画ファンに楽しんでもらえるようになるかもしれない。海外にもユーザーのいるアプリが元になっている本作だけに、海外の猫好き、映画好きも楽しんでくれそう。

「猫好きの方はもちろん、何か新しいことに挑戦したいとか、前に一歩進みたいときに、少し背中を押してくれる作品になっていますので、ぜひ楽しんでください」

 これからの道のり、ときに立ち止まって考えるときがあっても、この映画のように猫の手に背中を押してもらえばいいのだ。

(TOKYO HEADLINE・秋吉布由子)

『ねこあつめの家』

監督:蔵方政俊 出演:伊藤淳史、忽那汐里、木村多江、田口トモロヲ、大久保佳代子他/1時間32分/AMGエンタテインメント配給/4月8日より新宿武蔵野館他にて公開  http://nekoatsume-movie.com/
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