林健太が卜部功也を破り涙の初戴冠【3・10 K-1】

林は子供への思いが爆発(撮影・蔦野裕)

林健太が延長にもつれ込む熱戦制す
「K-1 WORLD GP 2019 JAPAN ~K’FESTA.2~」(3月10日、埼玉・さいたまスーパーアリーナ・メインアリーナ)で4つのタイトル戦が行われた。

 ライト級タイトルマッチは王者・卜部功也に林健太が挑戦。林は昨年12月の大阪大会で行われた「ライト級世界最強決定トーナメント」を制し、今回の挑戦にこぎつけた。2人はSAGAMI-ONO KREST所属で同門対決となるのだが、林は家族を養うために仕事を持っていることからジムのプロ練習にはほぼ参加することはなく、他のジムで練習する日々を送っている。

 1R、功也は左ミドルで試合を組み立てる。林はパンチで反撃も功也はその打ち終わりにパンチの連打を合わせる。そして左のミドルとストレートを打ち分け林を翻弄する。2Rになると林がプレッシャーをかけ距離を詰めてパンチで攻め込んでいく。カウンターのミドルやストレートで林の突進を止めにかかる功也だったが、林のプレッシャーは止まらない。一進一退の攻防が続く中、功也の左ミドルがローブローとなり試合が中断。気遣って駆け寄る功也だったが、以降、左のミドルの軌道がやや上に。

 3Rも林の突進は止まらず。功也のカウンターの左ストレートをもらっても林はパンチを出し続ける。終盤には林の右フックが炸裂し功也が大きくバランスを崩す。この最大の勝負どころで林は連打を繰り出すも確実性に欠け、倒すまでには至らない。しかしこの一発が効いて、判定は3者ともイーブンとなり試合は延長へ。

 延長ラウンドになっても林の前進は止まらない。コーナーに詰めパンチの連打で追い込む林に対し、功也はカウンターのストレートで反撃する。しかし3Rのダメージが残る功也は手数も少なく、残り30秒、林がパンチの連打で一方的に攻め込む展開に。功也は王者の意地で最後まで立ち続けることしかできなかった。

 判定は3者が10-9で林を支持。林が涙の初戴冠を果たした。

距離を詰めての打ち合いに活路を見出した林(左)(撮影・蔦野裕)

子供への「塩対応」をわびる
 試合後のリングで林は「まさか自分がこうやってチャンピオンベルトを巻けるとは思っていなかった。毎日、練習とか減量とかタイトルマッチのプレッシャーの中で、練習で家にはほとんどいないんですが、いざいるとなっても、いろいろ考えることがあって、減量もつらくて子供たちにむっちゃ塩対応になってしまって。チャンピオンになったんやから、ファイトマネーとか入るんで、行きたいところ全部行こう…。本当に頑張りました。これからも応援よろしくお願いします」と涙ながらに話した。

 林は試合後の会見では「功也くんはK-1ファイター、立ち技の中で一番強いと思っていたし、見本にしていた選手。試合が決まった時は、いけるかなと迷いがあったけど、自分が今どれだけできるか楽しみだと思うぐらい練習してきて、しっかりベルトを巻くことができて良かった。警戒していたストレートが速くていっぱいもらってしまった。この前のトーナメントでも結構パンチをもらったので、パンチをよけることを意識して練習してきた事ができたかなと思う。今後は盛り上がる試合、みんなが興奮してワーッとなるような打ち合いをしていきたい。世界中から打ち合いができるファイターを呼んでもらって、リング上でバチバチ打ち合いたい」と話した。

 試合ではプレッシャーをかけ、距離をつぶす作戦を取ったのだが「自分の持ち味ってプレスをかけてしんどくさせるというか距離をつぶすこと。あれで距離を潰してなかったら、たぶんもっと蹴られてたかなと思う。だから距離を潰して蹴られなくして、ストレートとかのパンチをよけてという練習の成果が出た。功也くんは、最強だと思っているので、パンチやキック、どれかはもらうと思っていた。肉を切らせて骨を断つみたいな作戦で行った」と話した。

 また試合後には功也と何やら会話を交わしていたのだが、これについては「記者会見のときに“あんまり同門という感じはしない”とは言ったんですけど、今回は相手が功也君やからKRESTには行ってなかったですけど、普段はKRESTでスパーリングもけっこうしてるんで、やっぱ仲間ですし、先輩ですし、功也君も後輩やって言ってくれるから“これからも練習でもよろしくね”って言ってくれました。いい先輩です、ホンマに」などと話した。

カリミアン(右)の重いパンチが加藤を襲う(撮影・蔦野裕)

カリミアンが因縁に決着
 クルーザー級タイトルマッチでは王者シナ・カリミアンに加藤久輝が挑戦した。2人は前日の公開計量であわや乱闘という場面もあり、一気に遺恨を深めていた。

 1Rゴング早々から間を取ることなく打ち合う2人。加藤の左ローにカリミアンがパンチを合わせるなどカリミアンが主導権を握るがラウンド終盤、加藤の左フックが炸裂しカリミアンはぐらり。ここからカリミアンはなかなか前に出られなくなる。2Rも間を取ることなく打ち合う2人。加藤もカリミアンのパンチやヒザの打ち終わりに左フックを放っていくが、攻撃が単調となり、カリミアンのガードを崩すには至らない。徐々にスタミナが切れてきた加藤だったが、それでも総合格闘家特有の体幹の強さでダウンは許さない。3R終了間際には左フックからパンチの連打を放ち、会場を沸かせたが時すでに遅し。ゴングとなり試合は判定へ。ジャッジ3者とも終始、先手を取って攻め続けたカリミアンを支持。3-0の判定でカリミアンが初防衛に成功した。

 カリミアンは試合後の会見で「自分の試合には満足してない。もっとできたと思うけど、できなかった。でも幸いにこの試合に勝つ事ができた。彼は試合前にかなり私を挑発してきたので、もっといい選手だと思っていたけど、期待はずれだった」と試合を振り返った。そして「これからは今まで以上にこの道で主張していきたいと思うし、この業界で名前が知られている大きい選手とチャレンジしたい」と話し、グローリーで活躍するアーテム・バキトフの名を上げた。

村越(右)の三日月蹴り(撮影・蔦野裕)

村越が初防衛に成功
 フェザー級タイトルマッチでは王者・村越優汰に卜部弘嵩が挑戦した。

 村越の左のミドル、ハイに弘嵩はパンチで応戦。弘嵩が徐々にプレッシャーをかけ前に。村越の左ミドルに合わせ、左フックをヒットさせる。2Rに入ると村越の左ミドル、ハイ、そしてボディーへのヒザが決まり始め、弘嵩はなかなか前に出られない。3Rも村越の左のキックが冴えわたり、試合は判定となったものの、ジャッジ3者が30-28で村越を支持。村越が初防衛を果たした。

 村越は試合後のマイクで「卜部選手は昔から尊敬している選手。そんな選手と戦うことができてうれしかったし、やっている最中も楽しかった。これまでK-1に来てなかなか強さを見せられなかった。全部ではないが今日は少しは強さを出せたと思う。K-1フェザー級チャンピオン村越優汰のことを忘れないでください」とアピールした。

 弘嵩は試合後の会見で「うまく作戦にはめられちゃった感はあった。気持ちが先にいき過ぎちゃったかな。(村越は)いいファイターだし、今日やってみて、またさらにいいファイターだと思いました。率直な気持ちでいうと、僕は村越選手より弱くて負けたわけじゃないと思っている。今すぐにでもやりたい。どうしたら最短でフェザー級のタイトルマッチに挑戦できるか考えている。バレラとかいい選手とやって結果出すことが最短かなと思っている」とタイトルへのあくなき執念を見せた。

 この日、林健太に敗れ、タイトルを失った弟の功也がタイトル戦線から一歩引く意向を表明したのだが、弘嵩は「影響はなかったが驚きはあった。逆に自分が勝ってやろうと思った。ここでやめちゃったら、後輩とか下の選手に何も伝えられない。ここでもう一回登りつめたらいろいろな人にパワー与えられる。僕は根っからのファイターなので、何度でも立ち上がってやろうという気持ち」と話した。

久保(右)が必死の形相で城戸に向かう(撮影・蔦野裕)

久保が防衛。城戸は悲願達成ならず
 ウェルター級タイトルマッチでは王者・久保優太に城戸康裕が挑戦した。

 このカードは昨年、行われる予定だったのだがその時は久保の交通事故で流れたという経緯がある。その後も、タイトル戦を希望していた城戸を尻目にジョーダン・ピケオーが階級を変え、挑戦を表明するなど、城戸にはご難続きだったが、やっとこの日挑戦が実現した。

 試合は1Rからローでの探り合いからスタート。2R以降も派手さこそないものの、着実に相手にダメージを与える攻撃を出し合う2人。いつしか久保の右目の上は大きくはれ上がった。とはいえ目立った攻撃を繰り出せない2人は3R残り30秒、激しく打ち合うがこの2人がたったの30秒で倒れるわけもなく試合は判定へ。1人が30-29で久保を支持したものの、残る2人が30-30で試合は延長へ。延長ラウンドでは城戸の左のスネが割れ激しい出血が見られたものの、ドクターチェックの後、試合は続行。城戸はその左足でキックを放つなどタイトルへ向けてのどん欲な姿勢を見せたが、ここでも決着はつかず、再度判定へ。1-1で迎えた3人目のジャッジが久保を支持した瞬間、城戸はその場で崩れ落ちた。

 久保は試合後のマイクで「宣言通りの塩試合になってしまってすいません。3R終了時点で勝ったと思って集中が切れてしまった。城戸選手はベルトへの執念が強かった。K-1ファンには嫌われていると思うが、一戦一戦大事に一生懸命戦う姿を見てください」とアピールした。

 試合後の会見では「ベルトが返ってきてとりあえず良かった。3Rで勝ったと思って気を抜いていたところがあって、延長は城戸のベルトに対する執念感じて、負けられないと思って頑張った。どっかのタイミングで、目を骨折しているので、とりあえず家に帰って休みたい」などと試合を振り返った。今後については「今日のところは疲れすぎてて次のことは考えられない。ピケオーと野杁選手の試合は見れなかったので、見たら燃えるんじゃないかなと思う。ただ体重もきつかった部分もあって、その辺の体調管理をどうしようかとも思う。とりあえず怪我を治すことに専念しようかな」などと話した。

 一方、城戸は「面白い試合だろうが、面白くない試合だろうが、ベルト取ることが目標だったので、そういう意味では全然ダメだったなとしか思えない。うまいですね。僕もキャリアが長いし久保くんも長いし、ほぼどっこいですが、うまいなと思った。格闘家みんな思うと思うが、負けた時犯罪者みたいに周りが見てるメンタルになったりするけど、休まなかったら終わらないとも思っているので、ベルト取るまで頑張ろうかなと思っています。まだまだ頑張ります。まだまだ頑張ります、ホントに」とタイトルを逃し無念の表情を見せた。

「K-1 WORLD GP 2019 JAPAN ~K'FESTA.2~」(3月10日、埼玉・さいたまスーパーアリーナ・メインアリーナ)

◆プレリミナリーファイト第1試合/-53kg契約/3分3R
〇(日本/K-1ジム総本部チームペガサス)璃明武(判定2-0=29-28、29-29、30-29)吏羅(日本/K-1 GYM SAGAMI-ONO KREST)●

◆プレリミナリーファイト第2試合/K-1スーパー・バンタム級/3分3R
〇(日本/エスジム)森坂陸(判定3-0=29-28、29-28、30-28)黒田勇斗(日本/隆拳塾)●

◆プレリミナリーファイト第3試合/K-1スーパー・フェザー級/3分3R
〇(日本/TEAM K)友尊(3R0分0秒、KO)川口拓真(日本/K-1ジム総本部チームペガサス)●

◆プレリミナリーファイト第4試合/K-1スーパー・ライト級/3分3R
●(日本/ポゴナ・クラブジム)FUMIYA(3R1分47秒、KO)中野滉太(日本/POWER OF DREAM)


◆第1試合/スーパーファイト/K-1フェザー級/3分3R・延長1R
〇(日本/K-1ジム三軒茶屋シルバーウルフ)小澤海斗(延長判定3-0=10-8、10-8、10-8 ※本戦0-0=29-29、29-29、30-30)覇家斗(日本/K-1ジム・ウルフ TEAM ASTER)●

◆第2試合/スーパーファイト/K-1ウェルター級/3分3R・延長1R
〇(日本/大成会館)近藤魁成(2R2分23秒、KO)瑠久(日本/K-1 GYM横浜infinity)●

◆第3試合/スーパーファイト/K-1ライト級/3分3R・延長1R
〇(タイ/ウィラサクレック・フェアテックスジム)ゴンナパー・ウィラサクレック(判定3-0=30-29、30-29、30-29)リュウ・ウェイ(中国/深?争途格闘クラブ/CFP)●

◆第4試合/スーパーファイト/K-1ライト級/3分3R・延長1R
●(日本/TANG TANG FIGHT CLUB)大沢文也(延長判定0-3=9-10、9-10、9-10 ※本戦判定0-0=29-29、30-30、29-29)篠原悠人(日本/DURGA)〇

◆第5試合/K-1 WORLD GPクルーザー級タイトルマッチ/3分3R・延長1R
〇(王者/イラン/WSRフェアテックス・イラン)シナ・カリミアン(判定3-0=30-29、29-28、30-28)加藤久輝(挑戦者/日本/ALIVE)●

◆第6試合/K-1 WORLD GPライト級タイトルマッチ/3分3R・延長1R
●(王者/日本/K-1 GYM SAGAMI-ONO KREST)卜部功也(延長判定0-3=9-10、9-10、9-10 ※本戦判定0-0=29-29、29-29、29-29)林健太(挑戦者/日本/K-1 GYM SAGAMI-ONO KREST/FSG)〇

◆第7試合/スーパーファイト/K-1スーパー・バンタム級/3分3R・延長1R
〇(日本/K-1ジム三軒茶屋シルバーウルフ)金子晃大(延長判定3-0=10-9、10-9、10-9 ※本戦判定=)玖村修平(日本/K-1ジム五反田チームキングス)●

◆第8試合/スーパーファイト/K-1スーパー・フェザー級/3分3R・延長1R
(日本/K-1ジム北斗会館)小宮山工介 VS 郷州征宜(日本/K-1ジム総本部チームペガサス)

◆第9試合/スーパーファイト/K-1スーパー・ライト級/3分3R・延長1R
〇(日本/K-1ジム三軒茶屋シルバーウルフ)左右田泰臣(判定3-0=30-29、30-29、30-29)松花征也(日本/リバーサルジム横浜グランドスラム)●

◆第10試合/スーパーファイト/K-1スーパー・ライト級/3分3R・延長1R
●(日本/K-1 GYM SAGAMI-ONO KREST)佐々木大蔵(判定0-3=28-29、27-30、27-30)安保瑠輝也(日本/team ALL-WIN)〇

◆第11試合/K-1 WORLD GPフェザー級タイトルマッチ/3分3R・延長1R
〇(王者/日本/湘南格闘クラブ)村越優汰(判定3-0=30-28、30-28,30-28)卜部弘嵩(挑戦者/日本/K-1 GYM SAGAMI-ONO KREST)●

◆第12試合/【DIVINER Presents】 K-1 WORLD GPウェルター級タイトルマッチ/3分3R・延長1R
(王者/日本/K-1ジム五反田チームキングス)久保優太(延長判定2-1=10-9、9-10、10-9 ※本戦判定1-0=30-29、30-30、30-30)城戸康裕(挑戦者/日本/谷山ジム)

◆第13試合/日本vs世界・7対7/K-1スーパー・バンタム級/3分3R・延長1R
〇(日本/POWER OF DREAM)武居由樹(1R2分54秒、KO)サンドロ・マーティン(スペイン/THAIDRAGON C A DIZ)●

◆第14試合/日本vs世界・7対7/K-1ウェルター級/3分3R・延長1R
●(日本/K-1 GYM SAGAMI-ONO KREST)野杁正明(判定1-2=29-29、29-30、29-30)ジョーダン・ピケオー(オランダ/Mike's Gym)〇

◆第15試合/【株式会社 武州鳶 Presents】日本vs世界・7対7/K-1フェザー級/3分3R・延長1R
●(日本/K-1ジム総本部チームペガサス)芦澤竜誠(1R2分41秒、KO)ホルヘ・バレラ(スペイン/Team Jesus Cabello) 〇

◆第16試合/日本vs世界・7対7/K-1女子-51kg契約/3分3R・延長1R
●(日本/K-1ジム三軒茶屋シルバーウルフ)KANA(判定0-2=28-30、29-29、29-30)ヨセフィン・ノットソン(スウェーデン/Allstars training center)〇

◆第17試合/日本vs世界・7対7/-68kg契約/3分3R・延長1R
●(日本/月心会チーム侍)和島大海(1R2分21秒、KO)木村“フィリップ”ミノル(ブラジル/K-1ジム五反田チームキングス)〇

◆第18試合/日本vs世界・7対7/K-1スーパー・フェザー級/3分3R・延長1R
〇(日本/TEAM ONE)皇治(判定3-0=30-29、30-28、30-28)ヤン・サイコ(ドイツ/Kickboxtempel)●

◆第19試合/日本vs世界・7対7/-59kg契約/3分3R・延長1R
〇(日本/K-1 GYM SAGAMI-ONO KREST)武尊(2R2分43秒、KO)ヨーキッサダー・ユッタチョンブリー(タイ/ユッタチョンブリージム)●