おばたのおにいさん演じる成り上がり系投資家男子に見る「元非モテこじらせ」が悲しすぎる… 内田理央主演『来世ではちゃんとします2』第3話〈ドラマでしゃべりたい〉

 内田理央主演のドラマ『来世ではちゃんとします2』(テレビ東京、毎週水曜深夜0時40分)。9月1日に公開された第4話では、内田理央演じる性依存系女子の主人公・桃ちゃんこと大森桃江に、なんと恋人ができる。

 第一話で婚活にも失敗し、相変わらず性に奔放な日々を送っていた桃ちゃんの恋のお相手は、5人もいるセフレボーイズの5番手・おばたのおにいさん演じるEくん。Eくんの破産をきっかけに急きょ始まった半同棲生活、うまくいっているように見えたが……⁉︎

イラスト・ミクニシオリ

投資家男子・Eくんの役満過ぎる「こじらせ」

 桃ちゃんのセフレボーイズのうち、大本命は第1話で登場したハイスペ男子・Aくんだ。しかし、Aくんには本命彼女がおり、それを理解した上で都合のいい女を演じてしまっている。Aくんへの本気の本命昇格は絶望的で、上手く恋愛できないやるせなさや寂しさを紛らわせるために、本命の他に4人ものセフレを抱えている……と言っても過言ではない。

 そんなセフレボーイズの中でも、飛び抜けてこじらせていそうなのがEくんだ。Eくんは青春時代、スクールカーストでいえば下層に属していた陰キャだったようなのだが、社会人になって投資を始めてから一気にお金持ちになり、その頃の恨みを晴らすかのように遊びまくっているヤリチン男子なのだ。現在は麻布のタワーマンション住まいで、そのスペックを生かして、青春時代は相手にしてくれなかったハイスペ女子を抱いては「ヤリたい職業の女リスト」にチェックを入れていくのが生きがい……という圧倒的こじらせ男子なのである。

 桃ちゃんも同じく、思春期にろくな恋愛ができなかった反動で、大人になってから「膣モテ」してしまっているこじらせタイプだ。ある意味二人は同じ穴のムジナであり、だからこそ気が合う部分はあるようだ。だからこそ、急きょ遽はじまった同棲生活でも、二人は生活の価値観も合っているように感じる。二人とも育ってきた環境が似ており、ある意味ではお似合いのカップルなのだ。

 

成り上がり系男子がこじらせがちな理由

 ところで、現実にもEくんのような男性はけっこういる。学生時代に作ってしまったコンプレックスというものは、大人になってもなかなかなくならない。人格形成の時期に負う傷というのは本当に大きく、思春期を暗く過ごしてしまうと、大人になってもどこか陰鬱とした空気を纏ってしまう人は多い。

 しかし、学生時代と社会人以降では、ヒエラルキー決定に関わる要素が大きく変わってくる。男子の場合、学生時代は面白いことが言えるだとか、運動神経がいいだけでもてはやされるものだが、社会人になると唐突に、足の速さを披露する場はほとんどなくなってしまう。そんなことよりも仕事ができるかどうか、どのくらい稼げるかというところを最重視されるようになり、暗い思春期を過ごした陰キャ男子も、陽の目を見る機会が与えられるのだ。

 しかし、Eくんは「学生時代から影でコツコツ努力」タイプではなく「投資で一山当てちゃった」ギャンブラータイプだ。一気に自分の身の丈以上の富や、モテという名声を得るようになり、現在完全に天狗になってしまっている状態……。いつの時代も「成り上がり」ほど、自意識をこじらせている場合が多い。もともと持てるものが少なかった分「もうあの頃の自分には戻りたくない」という不安も少なからず抱えており、表面的にはナルシストっぽく見えても、案外あまのじゃくをこじらせていて、深層では自分に自信が持てないままなのだ。自分に自信がないから「ハイスペ女子」「モテ男」「タワマン」と言った、分かりやすいオプションスペックに惹かれてしまう。スペックやお金さえあればモテをキープできると信じて疑わず、女性のことも年収や外見、職業によるレアリティの高さなどで判断してしまいがちだ。

 

傷をなめ合う半同棲、上手くいくのか…?

 一方で、桃ちゃんもEくんに近いこじらせを抱えている。桃ちゃんのセフレボーイズもまた、大企業勤めだったりお金持ちだったりと、キラキラスペックがぶら下がっている男性ばかりだ。地味でモテなかった過去を取り戻すかのように、世間的に価値の高い男性に抱かれることで、自分の価値が高まったかのように感じるのかもしれない。しかしそれはある種、一過性のソフトドラッグ的効果を得ているに過ぎず、結局は実質のない恋愛ごっこに近い。

 だからこそ桃ちゃん自身も、破産して困っているEくんが自分を頼ってきてくれたことに、妙な背徳感を感じてしまったのかもしれない。本命男子は、自分を恋愛対象にはしてくれない。その他のセフレたちとも、わきまえている”つもり”で仮初めの夜を過ごすだけ……。心のどこかでは、そんな生活に納得できておらず「愛されたい」「必要とされたい」と求めてしまっていたのだろう。そんな中「私がいないと生きていけなくなってしまったEくん」にすがってしまった部分もあったのかもしれない。「私がいないとダメな人が好き」なんて、見る目がない人がいいそうなセリフナンバーワンだ。

 しかし前述したように、結局二人は”同じ穴のムジナ”だ。自分の心の穴を埋めようとするばかりで、相手の気持ちをあまり考えていない。だから、差し伸べてくれる手も簡単に振り払って、また自分のほしい「スペック」や「世間体」に向かって、孤独な道を歩いていってしまうのだ。そんな2人だから、半同棲生活だって……どうなったのかは、第4話を見て確認してみてほしい。TVerでは第4話が9月9日01:09まで無料配信中だ。

 

(イラストと文・ミクニシオリ)

1992年、茨城県生まれ。フリーライター・恋愛コラムニスト。ファッション誌編集に携わったのち、2017年からライター・編集として独立。エンタメ・恋愛・ライフスタイルを中心に執筆活動を行う。インタビューや匿名取材、街頭取材経験も多いノンフィクション系ライター。若者恋愛トレンド評論家としてネットTV・地上波バラエティなどに複数回出演。