「あ~、こういう人が書き込んでいるんだ」。立体化させることが誹謗中傷をスルーする一つの方法〈徳井健太の菩薩目線 第135回〉

“サイコ”の異名を持つ平成ノブシコブシ・徳井健太が、世の中のあらゆる事象を生温かい目で見通す連載企画「徳井健太の菩薩目線」。第135回目は、誹謗中傷の対処法について、独自の梵鐘を鳴らす――。

徳井健太

 SNS上での誹謗中傷に対して、どう対処すればいいのか。そんなことを考える機会が増えた。

 記憶に新しいのは、2019年に起きた東京池袋暴走事故の遺族をSNSで侮辱したことで、今年4月に22歳の男性が書類送検された件。

 男性は「炎上商法でやった」「警察沙汰になるとは思っていなかった」という旨を話していたけど、商法という言葉に引っかかってしまう。彼は、誹謗中傷を繰り返して金銭が発生したのか? もちろん、していない。

 ということは、この人は炎上商法の意味を理解していないのに、この言葉を使っているということ。言葉の意味もわからない人が書き込んだ、暴言や非毀によって痣だらけになるなんて、こんなにおかしいことはない。どうしたら、暗闇から突然投げられる石をかわすことはできるんだろうか。

 うちの相方が金曜パーソナリティを務めている『ポップUP!』を見ていたら、

 タレントの紅蘭ちゃんが、“おむつ論争”について見解を述べていた。

 ことの経緯は、紅蘭ちゃんがインスタで3歳の娘さんの写真をアップしたところ、おむつが写っていたことから、「トイレトレーニングさせないの?」、「かわいいのに成長が遅い」などと書き込まれた――というもの。

 さらには、このとき紅蘭ちゃんが胸を強調した服装をしていたため、「母親らしい格好ができないのか?」といった書き込みも散見していた。

 わざわざ人の家に訪問してきて、覆面姿でごみを手渡すなんて、まったくもって理解できない。だけど、こんな人たちに、「そういうことはやめましょう」と言ったところでやめるわけがない。

 書き込み自体を消す、加害者に罰金を課す、いろいろなことが今後は対処法として行われるだろうけど、「やめなさい!」でやむんだったら、とっくにこの手の話は解決していると思う。

 じゃあどうするか。そういう書き込みをしている人たちの実像、実態を映し出して、「知る」ってことが大切なんじゃないかなと思う。

 絶望している人、生活が荒んだ人、はたからみれば幸せそうに暮らしている人……いろいろな人がきっと書き込んでいるんだろう。そういう人たちはどういう部屋に住んで、どんな生活を送っているのか。そんなリアルを知ることができれば、暗闇から飛んでくる正体不明の罵詈雑言の受け取り方が変わって来るんじゃないのかなって。「あ~……こういう人が書きこんでいたのね」なんてわかれば、心に深手を負わなくて済む気がするんだけど。

 どういう人たちが書き込んでいるのか――。俺は、真面目にロケがしたい。ビンボーさんを探してその暮らしをロケする、かつての『銭形金太郎』。 カモを装いイマイ記者が架空請求業者と対峙する『報道特捜プロジェクト』。これまでにもいろいろな実録系バラエティ、情報番組があった。

 実態を探るべく、誹謗中傷を繰り返す人のリアルをロケする番組、見たいと思いません? もちろん、プライバシーは守った上で、生活をのぞかせていただきたい。いろいろな行間がわかると思う。

 YouTube チャンネル『徳井の考察』で生配信をしたとき、「コメントをする際はできれば年齢と職業を書いてください」とお願いしたことがあった。

「徳井つまらない、やめろ」という書き込みがあったとする。

 でもこれが 、

「徳井つまらない、やめろ」(19歳 学生)

 となるや、「まぁ10代の学生だったら面白いものへの感覚のズレもあるし、そう思われてもしょうがないよな」と妙に気にならなくなる。立体化させるだけで、驚くほどイライラしなくなった。 

 仮に、大喜利みたいになったって構わない。

「徳井つまらない、やめろ」(61歳 アラブの石油王)

 気にならないし、「何言ってんだこいつ」と割り切れる。むしろ石油王が見てくれているんだと思って、うれしくなる。

 結局のところ、立体化するだけで、受け取り方って変わってしまう。無効化できる。霧の中にいるから不安になるし、焦ってイライラする。その先になんとなくでも山容が見えているだけで、不安はびっくりするくらいなくなってしまう。

 大事なことは、立体化させるということだと思う。それがネットやSNSといった死角から投げつけられる石つぶてを回避する方法だと思う。どうせやめろといっても止まらない。避けることはできないし、絶対に当たってしまう。だったら、「知る」こと、「見える」ことで石そのものを弱体化させてしまえば、痛みを軽減できる。と思うんだけど。それを確かめるためにも――。

 テレビ局、動画配信製作者の皆さん、上記企画に興味を持っていただけるなら、平成ノブシコブシ・徳井健太まで一報をください。

徳井健太……1980年北海道出身。2000年、東京NSC5期生同期の吉村崇とお笑いコンビ「平成ノブシコブシ」結成。「ピカルの定理」などバラエティ番組を中心に活躍。最近では、バラエティ番組や芸人を愛情たっぷりに「分析」することでも注目を集め、22年2月28日に『敗北からの芸人論』を発売。「もっと世間で評価や称賛を受けるべき人や物」を紹介すべく、YouTubeチャンネル「徳井の考察」も開設している。吉本興業所属。
公式ツイッター:https://twitter.com/nagomigozen 
YouTube: https://www.youtube.com/channel/UC-9P1uMojDoe1QM49wmSGmw