プロボクシング 井上尚弥『規格外』【アフロスポーツ プロの瞬撮】

 スポーツ専門フォトグラファーチーム『アフロスポーツ』のプロカメラマンが撮影した一瞬の世界を、本人が解説、紹介するコラム「アフロスポーツの『フォトインパクト』」。他では見られないスポーツの一面をお届けします。

撮影/文章:西村尚己(2024年5月6日 WBA・WBC・WBO・IBF世界スーパーバンタム級タイトルマッチ)
5月6日、東京ドームで行われたプロボクシングの4大世界戦は“規格外”づくしであった。
メインイベントでは、スーパーバンタム級世界4団体統一王者の井上尚弥が元世界2階級制覇王者の
ルイス・ネリに6回TKO勝ちし、王座を防衛。またしても井上は“規格外”の強さを見せつけた。
そして1990年のマイク・タイソン対ジェームス・ダグラス戦以来、実に34年ぶりとなった
東京ドームでのボクシング興行。
会場は4万3千人の観客で埋め尽くされ、日本のボクシング史に残る“規格外”の興行が実現した。
 
一方、試合を記録するフォトグラファーにとっても“規格外”であった。
それは、フォトポジション(撮影場所)からリングまでの距離だ。
フォトグラファーに与えられたフォトポジションは、リングサイドとスタンドの2箇所。
リングサイドで撮影が許可されるのは、一部のフォトグラファーに限られる。
私を含めて多くのフォトグラファーは、観客のスタンド席後方に設けられたカメラ席からの
撮影となったが、広大な東京ドームでは、そこからからリングまでの距離が“規格外”だった。
目測で100mぐらいであろうか。肉眼ではリングに立つ井上は米粒にしか見えない。
アリーナや体育館など従来の大規模会場と比べても、1.5倍から2倍くらいの距離感だ。
専門的な話になるが、焦点距離1200mmクラスの超望遠レンズを使用した場合でも
井上の全身が画面(縦横比2:3)内にすっぽり収まってしまう。
参考までにサッカーやラグビー、陸上競技などのスポーツ撮影で使用する超望遠レンズは400mmクラスが
一般的である。
フォトグラファーとしては少し寂しいが、選手が偉大な存在になればなるほど
撮影条件が厳しくなるのは当然の流れなのだ。
 
歴史的な東京ドーム興行を成功させ、さらなる進化を続けるモンスター・井上。
この先、私たちをどんな“規格外”の世界に連れて行ってくれるのだろうか。
 
 
■カメラマンプロフィール
撮影:西村尚己
 
1969年、兵庫県生まれ。大阪大学大学院工学研究科修了。
人間味あふれるアスリートの姿に魅せられ、学生時代にスポーツ写真の世界と出会う。
大学卒業後は、国土交通省に勤務しながらアマチュアカメラマンとして活動するも
どうしてもプロの世界で挑戦したいという想いが募り、2016年にアフロスポーツに転職。
現在は国内外のスポーツを精力的に撮影し、人間の情熱や鼓動、匂いなど五感で感じとれる作品づくりに励む。
 
2007年 APAアワード写真作品部門 奨励賞
2013年、2015年 写真新世紀 佳作 ほか
 
★インスタグラム★
アフロスポーツ

1997年、現代表フォトグラファーである青木紘二のもと「クリエイティブなフォトグラファーチーム」をコンセプトに結成。1998年長野オリンピックでは大会組織委員会のオフィシャルフォトチーム、以降もJOC公式記録の撮影を担当。
各ジャンルに特化した個性的なスポーツフォトグラファーが在籍し、国内外、数々の競技を撮影。放送局や出版社・WEBなど多くの報道媒体にクオリティの高い写真を提供し、スポーツ報道、写真文化の発展に貢献している。

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