歴史的大停電だって「ケセラセラ」!旅してわかった、スペイン人の陽気さの理由

食、文化、人。語りきれないスペインの魅力

 

 スペイン人は日本人に好意的である場合も多く、今回2週間の滞在のうち、嫌な思いは一度もしなかった。外国人観光客数は世界トップクラスで、多様な人種との交流に抵抗がない人が多いようだ。歴史的背景から、街にはイスラム建築とヨーロッパ建築が自然に混じり合っており、スペインの国民性を象徴している。

フラメンコダンサーとギタリストさえいれば、どこでもショータイム可能

 街によって違った魅力を楽しめるのも、スペインの面白さだ。フラメンコの本場・セビーリャは、スペインの南部にある街ということもあり、陽気さとゆったりしたリゾート感を兼ね備えた“リラクシー”な雰囲気がある。街のそこかしこに流しのギタリストがおり、時にはそこに流しのフラメンコダンサーもやってきて、どこでも情熱的なショーを楽しむことができる。

 

住人が中庭の美しさを見せびらかし合うコンセプトのパティオ祭り

 春には「パティオ祭り」という、中庭の花々を競い合う有名な祭りが開かれるコルドバという小さな街には、メスキータというモスクがある。元々はイスラム教のモスクとして建てられ、その後レコンキスタによってキリスト教の大聖堂として改築されたが、中はモスクとキリスト教会が混ざった、キメラ聖堂なのだ。街にもイスラム街が残っており、独特の雰囲気を楽しむことができる。

 北部の首都・バルセロナはサグラダ・ファミリアがあることで有名だが、カタルーニャ地方ならではの文化が残っている。ゴシック様式の建築が数多く残されており、街の雰囲気は南部の首都とは違った趣がある。学生が多く集まる街でもあるため、ハイブランド街が目立つ南部の都市とは対照的に、アンティーク店や古着屋が多く立ち並び、毎週蚤の市が開かれる。

 新幹線や高速バスも多く走っており、街と街の移動も簡単だ。知らない土地で公共交通機関に乗る時は少し緊張するが、スペイン人は親切な人が多い。駅で困った顔をしていると、たいてい隣にいた人が「どうしたの?」と聞いてくれる。バス移動の時、降りるバス停が分からずあたふたしていたら「そういう時はとりあえずボタン押しときゃいいよ」と、隣にいたおじいさんが降車ボタンを連打してくれた。

どんな日でも街角からは柔らかな音色が聞こえてくる

 食べ物が美味しく、文化が多様で、人が優しい。スペインが観光大国たる所以は、訪れてみればきっと分かるはずだ。夏は暑い国だが、乾燥気味で湿度が低いため、カラッとしていて気持ちいい。夏の旅行の選択肢の一つとして、ぜひ検討してみてほしい。

 

(取材と文・ミクニシオリ)