古舘伊知郎『夜ヒット』盟友と昭和音楽祭「“四次元殺法” は忌野清志郎さんにかなわない」

しゃべり手しかない宿命だった男が音楽祭の司会をやる
「タイトルの “スーパーソングブックショウ” というのもいいなと思っていて。ソングブックって今はもうないじゃないですか。中学でギターのアルペジオをやろうと思ったら、本で覚えたりしていた文化が消え失せてしまった。昭和はアナログの時代でアナログのよさがあったよねという思いを込めている。アナログのアナログによるアナログのための音楽祭でもあるんですよ」
楽曲リストで気になる曲を聞くと「全曲楽しみですが」と前置きし「強いて言えば『オリビアを聴きながら』は衝撃的なくらい流行ったし、何だか分からないけどこれを聞くと切ない。あまりにも切なくてつらすぎるから、当時はついふざけて『マリファナを吸いながら』という替え歌を作ったり(笑)。あとは何と言っても『神田川』。四畳半フォークと言われ、数あるフォークソングの中でも僕の中学くらいの頃の圧倒的な曲。“大学生になれば同棲するのが当たり前なんだ” と中学時代に刷り込まれたわけですから」と止まらない。
さらに木崎氏とのエピソードを「腹が立つことに木崎は中学時代からギターがうまかったんですよ。彼は音楽部でバンドを組んで、キングストン・トリオとかPPMとかブラザーズ・フォアを含めたフォークソングをやっていて。1歳下に佐野元春がいて2歳上に高橋幸宏さんがいて、もうちょっと上に細野晴臣さんがいて1歳上にルー大柴もいて。食堂でずっと木崎のバンドが歌ってるのがうらやましくて、気がついたら文化祭で俺が司会ですよ(笑)。その当時からしゃべり手しかない宿命だった、そういう男が年老いてこの音楽祭の司会をやるわけです」と古舘。
「そもそも僕が面白いことを言ってやろうというエネルギー源は、アーティストやミュージシャンの芸術性や芸能性に対する嫉妬が大きい。僕はせいぜい初代タイガーマスクを “四次元殺法” と表現するくらいで、生放送の『夜ヒット』で放送禁止用語を連呼してFM東京の悪口を言った忌野清志郎さんには決してかなわないわけです。同じく司会の友近さんは昭和歌謡に精通し、水谷千重子としても活動している昭和歌謡の好事家ですけど、僕は昭和のただ中を生きてきて、平成・令和は気のせいで生きているだけ(笑)。今回は僕が憧れていた昭和の音楽が凝縮した場でどちらかというと観客側にいたいくらい」