台湾でアリ・アスターとついに対面!親日台湾人たちの優しさに涙!

アスター監督登壇Q&Aのチケットはソールドアウト(撮影・取材・文:小林真里)

アリ・アスターと念願の対面&滞在中に“台湾有事答弁”問題が起こるも…

 アスターが登壇するのは当初はこの1回だけの予定だったが、急遽2回追加され、その4日後に別の映画を観に「TITANE」に行ったら、ちょうど『エディントンへようこそ』の上映が終わった後で、アスターがサイン会を行なっていた。ファンがいなくなったタイミングで、ここはチャンスとばかりに図々しくも、実は数日前にも会った、日本から来た映画監督兼映画評論家であることをアリに伝えると、僕のことを覚えていてくれたようで、数分だが話をすることができた。アリの全監督作の徹底解析を書いたことを伝えると、驚いた様子で「それ、読みたいな。どこで読めるの?」と優しく聞かれた。そして今、僕が監督として進めているプロジェクトや、別に計画している重要なプロジェクトの話をしたら、真剣に耳を傾けてくれた。握手をしたら意外と手が大きく、力が強かったので少し驚いた。とてもオープンで気さくでフランクな、それでいて謙虚な好人物だった。対面して話ができて、本当に幸運だった。ちなみに、ひょっとしたらアリは3日間で1000人ぐらいにサインをしたのではないか、そんな国は世界でも台湾ぐらいでは? とも思った。映画祭では、『Flow』のギンツ・ジルバロディス監督もゲストとして招待されていたのだが、彼のサイン会にも数百人のファンが並んでいるのを目撃した。回顧上映が行われ、登壇したレオス・カラックス監督がサイン会を行なったのかは確認しなかった。

 ところで、台湾に到着して数日後に、日本の首相による台湾有事答弁を機に日中関係が悪化、という日本のニュース記事を目にした。が、そのことで現地の友人や知人になにか聞かれたり、街を歩いていてなにか変化を感じることはなかった。台北の後に僕は台湾高速鉄道(THSR)の3日間乗り放題のパスを購入し、台南、嘉義、高雄という3つの街を巡ったのだが、南に向かうほど人はより優しく親切になり、時折日本語で話しかけられたりもした。台北でも、タレントエージェント会社の社長である女性の友人に「私たちは日本が大好きだし、日本のものが大好き」と言われた。台湾や中国で人気の某台湾人若手シンガー兼女優とミーティングをしたときには「J-POPや日本のアニメが大好き。LE SSERAFIMの宮脇咲良が憧れの存在」と告白された。台南に向かう時に、台湾人プロデューサーの友人からは「僕が日本を大好きなように、君も台湾を大好きになってくれたら嬉しい」というメッセージが届いた。すぐに「すでに台湾が大好きだよ」と僕の正直な気持ちを伝えた。また早くあの国に戻りたいな、と心から思う。

小林真里(映画評論家/映画監督)

気さくだったアリ・アスター監督