今年は番外編「20年安泰。」 コーディネーター・徳永京子氏に聞く

東京芸術劇場の名物企画『芸劇eyes』

東京芸術劇場の芸術監督に野田秀樹が就任したのが2009年。以来、“若手育成”がテーマのひとつとして掲げられ、「芸劇eyes」という企画が生まれた。同シリーズは2009〜2010年の2回開催され、大きな話題を呼ぶと同時に、参加団体自身のステップアップの大きなきっかけとなった。そして今年は5劇団によるショーケース形式での上演となる。コーディネーターとして携わっている演劇ジャーナリストの徳永京子氏に、今年の「芸劇eyes」について聞いた。

水天宮ピット 大スタジオで6月24〜27日に上演

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左から藤田貴大(マームとジプシー)、山本卓卓(範宙遊泳)、二階堂瞳子(バナナ学園純情乙女組)、三浦直之(ロロ)、作者本介(ジエン社)

 今年は「芸劇eyes」の番外編ということになっています。

「4月から芸劇が改修に入り、会場が使えないのでどうしようかと思っていました。2年という短い期間ながら、『芸劇eyes』という名前とコンセプトが浸透し始め、いい流れが生まれていた感触があったので、休止するのはもったいないと。幸い、都の稽古施設である水天宮ピットを芸劇が管理・運営することになっていて、その活用方法のひとつとして利用できることになりました。劇場ではなく稽古場なので日数は限られてしまうのですが、その中でできることを考えまして、いくつかの劇団に集まってもらう短編のショーケースにしましょうということになりました」

「20年安泰。」のタイトルは徳永さんの命名とか。その込められた思いは?

「初年度も2年目も、ある程度の実績や知名度がある劇団、作・演出家の方がプロデュース公演でも活躍されている劇団が多かったんですが、今年は完全に若手に絞り込みました。ではなぜこの5劇団だったのかですが、共通点として、瑞々しい繊細さなど若さ特有の表現と、長い時間を生き抜くであろう強靭な資質を同時に感じたことがありました。コピーが生まれたのは、この劇団の作品を見たことがない芸劇の方たちに説明をしているときに“この人たちがいれば、日本の演劇界はこの先20年、30年、安泰なんです”と言ったことから(笑)。“そういう説明の仕方はあるね”という反応をいただき、そのままタイトルとして使うことになりました」

 その後、大震災があり原発問題も起こったなかで、このタイトルが大きな話題というか波紋を呼びました。

「安全どころか、数百年単位の危険が取り沙汰されるようになりましたからね。ただ、放射能問題がなくても、活動わずか数年の劇団に20年なんて長期の保証をしていいのかと疑問を感じる方はいるだろうな、と予想はしていました。でも“本当かよ?”と疑問に感じることが見てもらうことのきっかけになってもいい。ラインアップには“20年安泰”と言い切る自信がありますし、20年という時間を遠慮なく持ち出せるのは、5劇団の若さの証しでもあります」

 以下、徳永さんに、コーディネイトにあたってのポイントを聞いた。

バナナ学園純情乙女組「男性も女性も女子高生の制服を着て、爆音のなか過激なパフォーマンスをする集団。サブカルの表層を表現に取り入れているので過激さに目が行きがちですが、構成力は高い。見終わったあとに切なくなる物語性が折り込まれていて、二階堂瞳子さんの演出のレベルの高さを感じます」

範中遊泳「かわいいアイテムやキーワードを散りばめている一方、社会に対しての批評性を忘れていない。演劇とアートの結びつけを、作品の立ち上げの段階からやっているのも強みです。山本卓卓さんの作・演出には、愛嬌とふてぶてしさを同時に感じます」

ロロ「どの作品も“初恋以上、恋愛未満”のラブストーリー。作・演出の三浦直之さんは“ボーイ・ミーツ・ガールにしか興味がない”と公言していますが、それが軟弱だったり単色だったりせず、広範に適応させているのがすごいです」

マームとジプシー「リフレインのスピードと緻密さは無二。作・演出の藤田貴大さんは“そのとき、その場所にいた、この人の物語”を、圧倒的なヴィヴィッドさとセピア色の切なさで生み出します」

ジエン社「演出のスタイルは、現代口語演劇の正当な後継者と言うべきドライさ。一方、戯曲に描かれているドラマはとても豊穣です。抑えようとするものとこぼれるものが両立しているのが、作・演出家の作者本介さんの特徴です」

〈芸劇eyes番外編『20年安泰。』〉

【日時】6月24日(金)〜27日(月)(開演は金19時、土日14時/19時、月13時/17時。開場は開演30分前。当日券は開演45分前から発売) 【会場】水天宮ピット 大スタジオ(水天宮前) 【料金】前売り 2000円(整理番号付・日時指定・全席自由)/当日 2500円 【問い合わせ】東京芸術劇場 事業企画課事業係(TEL:03-5391-2115=平日9〜17時45分 〔HP〕http://www.geigeki.jp/