【短期集中連載】〈日本で最も歴史の長いプロ格闘技・シュートボクシング40年史〉第14回 シュートボクシングの屋台骨を背負って立つ笠原3兄弟

 来る11月24日、東京・国立代々木競技場第2体育館で創立40周年記念興行「〜SHOOT BOXING 40th Anniversary〜S-cup×GZT 2025」を行うシュートボクシング。プロ格闘技団体として同じ名前では史上最長となる40年という長い歴史を振り返る。(文・布施鋼治)

笠原3兄弟。次男・友希、長男・弘希、三男・直希(左から)(©BOUTREVIEW)

白鳥大珠に判定勝ちの長男・弘希は原口健飛を吞み込むか!?

 2026年は笠原3兄弟の時代が到来!?

 前回、彪太朗と虎矢太の山田ツインズを紹介したが、長男・弘希、次男・友希、三男・直希の笠原3兄弟も、今後シュートボクシング(以下SB)の屋台骨を背負う存在として期待されている。

 3人の中でも、最近評価を爆上げしたのは弘希だろう。11月2日、東京・両国国技館で行われた「GLORY×RISE LAST FEATHERWEIGHT STANDING TOURNAMENT」でRISEスーパーライト級王者の白鳥大珠と激突。「白鳥有利」という下馬評を覆し、延長戦で2度もダウンを奪った末に判定勝ちを収めたからだ。

「僕の長所は気持ち(が強い)部分だといわれている。でも、今回はそれを一度置いて(冷静に)闘った結果、こういう結果になったと思う」(弘希)

 以前はSBの創始者シーザー武志から「弘希は練習しないから」と厳しく指摘されることもあったが、最近は自分の兄弟だけではなく、山田ツインズらシーザージムのプロ全体の音頭をとる形で率先してジムワークに励む。次戦は2017年12月以降VS日本人選手に無敗の原口健飛との一戦が有力ながら、冷静沈着に闘う術を覚えた弘希なら原口を呑み込む可能性も十分にありえる。

 次男・友希はSBの中でもテクニカルに闘うシュートボクサーで、パヌワットGPT、GUMPらRISEのトップところを撃破したことで知られている。まだ期待のホープだった頃にはキックボクサー時代の″神童″那須川天心の胸を借りたことも(2020年7月12日)。

 今年6月21日、横浜で行われた「RISE WORLD SERIES 2025」-61.5kg準決勝では“人獣”中村寛と激突。戦前は「笠原が距離をとって中村を完封するのでは?」という声も多かったが、いざ闘ってみると延長戦で中村のハイキックの前にKO負けを喫してしまった。
「ぶっちゃけて言うと、自分は本戦で負けてなかったと思う。でも、延長戦で勝ち切れなかったことは自分の弱さが出たと思う。もっと強くならなきゃいけない」

 それから5カ月、友希はSB40周年記念興行『SHOOT BOXING 40th Anniversary S-cup×GZT 2025』(11月24日・国立代々木競技場第2体育館)で再起戦に臨む。

 試合順はセミファイナルのひとつ前で、対戦相手はマンモス・ソー・サラッチープ(タイ)。先日、日本大会を開催したONE Championshipでも2度KOで勝っている19歳だ。

 マンモスの選手としての印象を訊くと、友希は「アグレッシブ」と答える一方で、次のように言葉を続けた。「今の僕は誰にも負ける気はしない。(今まで以上に)自分の強みをもっとぶつけて勝ちたい」

 さらに今回の試合のテーマは“忍者”と打ち明けた。ん、忍者? 「前回(VS中村)は機械のように闘っていたので、今回は忍者みたいな動きで戦おうと思い、いま闘い方を改良しながら調整しています」

 三男・直希はプロデビュー戦が“神童の弟”那須川龍心という破格の扱いを受けた19歳。最近は5連勝と波に乗っており、ランキングもSB日本スーパーバンタム級1位とタイトル挑戦まであと一歩のところまでこぎ着けている。今年6月22日の後楽園ホールの定期戦ではタイ人を相手に延長に次ぐ延長という激闘を繰り広げ、結局計6ラウンドも闘ってようやく勝利を手中にした。いまは何事も経験。どんどんいろいろなタイプとやってキャリアを積み上げるべきだろう。

 日々の練習ではふたりの兄や山田ツインズが常に傍らで練習しているので、天狗になどなりようもない。現在のSB日本スーパーバンタム級王者は同門で幼少のときから知っている山田虎矢太。よほどのことがない限り同門対決が実現しないと思われるが、果たしてどうなるか。父は日本人、母はタイ人と微笑の国の国技ムエタイのDNAも体内に宿る笠原3兄弟に注目だ。
(第15回、最終回に続く)