歴史、家族、珍道中、3つの糸が織りなすロードムービー『旅の終わりのたからもの』が堪らなかった!【黒田勇樹のハイパーメディア鑑賞記】

 黒田勇樹です。

 三栄町LIVE「朗読劇『豆知識男VSライフハックガール』」の絶賛稽古中です。

 いろいろと刺激あふれる稽古場となっています。いい作品になりそうな気がしていますので、ご興味のある方はぜひ。

 では今週も始めましょう。

映画『旅の終わりのたからもの』2026年1月16日(金)公開 配給:キノフィルムズ © 2024 SEVEN ELEPHANTS, KINGS&QUEENS FILMPRODUKTION, HAÏKU FILMS

 アウシュビッツ、ホロコーストなど「真っ直ぐに、観られなくなりそうな言葉」が、並ぶ本作。

 ニューヨークで暮らす気難しく頑固な娘と、自由奔放な父親が、父の故郷であるポーランドを巡るというロードムービー。
「効率がいいから電車で行こう」という娘と「ベンツに乗りたいから車を借りよう」と我がままを言う父親。侃々諤々の楽しいやり取りと、故郷を巡っていく旅が続くのですが、後半、アウシュビッツの跡地、現在は「博物館」と呼ばれ歴史遺産になっていますが「博物館?収容所でしょ?」と言ってのける、ニューヨークで育った娘と、実際に収容されていた父親の価値観の違いが、現在と過去のホロコーストに対しての意識の差を明確に表していきます。

 ホロコーストはナチスによる人種差別的な大虐殺を始めとした政策で、アウシュビッツはその時に、非人道的な監禁を行った収容所のことぐらいまでの説明に留めます。相当胸が痛くなる内容なので、詳しく知りたい人は覚悟をしてから、調べて下さい。

 それを巡る中で、少しネタバレになりますが、父親が「ドイツを憎んでいるハズなのに、メルセデスに乗りたがった理由」が、実は方便で「列車で連行されたから乗りたくなかった」

 乗りたくなかった、では済まないでしょうね。地獄のような記憶のフラッシュバックに耐え、娘の「故郷と真実を知りたい」という、衝動に付き合っていた父親像が明らかになります。
そんな仕掛けというか、プロットがたくさん散りばめられていて、気づくごとに胸が締め付けられていくというか。

 家族愛、歴史、そして愉快な珍道中。どの視点で観ても面白いし、それぞれのストーリーの糸が編み込まれ1本の物語を紡いでいるように感じました。

 タイトルの通り、旅の終わりには登場人物たちがたからものを手に入れるのですが、これが物理的なものも精神的なものも全てキラキラしたもので本当に美しかった。
 原題は TREASURE(トレジャー)、つまり宝物とかご褒美みたいな意味なんですがそれを『旅の終わりのたからもの』と、邦題に訳した人天才!

 いわゆる「道連れ」の様な人々との出会いも魅力的で、これが「実話を元にしたストーリー」だと知ると、今すぐ誰かと旅に出たくなる、そして悲しい歴史も、今を生きる人間たちで前向きなものにしていける希望も感じられる素晴らしい作品でした。
親子の珍道中を笑い飛ばしに行くつもりで飛び込めばいいと思います! 皆様、是非劇場へ!

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