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鴻上尚史インタビュー 「惜しまれて、というのがいいんじゃないですか」

2011.11.28 Vol.532

「ノスタルジーでやるんだったらやる意味はない」

1980年〜90年代の日本の演劇シーンを引っ張る存在であった第三舞台は2001年に「10年間活動を封印する」と宣言した。10年とは長いもので、その間のメンバーの活躍は著しく、第三舞台という名前を忘れさせるほど。いつしか「封印」という言葉を頭の中で勝手に「解散」と置き換えていたファンも多かっただろう。そんななか2010年秋、主宰の鴻上尚史が封印の解除を宣言。復活を待ち望んでいたファンを安堵させた。しかしそんな思いも束の間。年が明けて2011年春、封印解除公演である新作『深呼吸する惑星』(紀伊國屋ホール 11月26日〜12月18日ほか)をもって劇団を解散することが発表された。

第三舞台封印解除&解散公演『深呼吸する惑星』上演開始

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撮影・神谷渚

 1985年に代表作である『朝日のような夕日をつれて’85』で紀伊國屋ホールに初進出。当日券を求め劇場前に長蛇の列ができ、通路にまで座布団でお客を座らせても収容しきれなかった。社会的なブームを巻き起こすきっかけだった。やはり紀伊國屋ホールには思い入れがある。

「第三舞台をやるとしたら紀伊國屋ホールでやるのが一番いいだろうと思っていました。でも劇場は1年半〜2年前くらいには押さえなきゃいけないんですね。そのころは封印解除公演をするかどうか決めていなかったので、短い期間しか押さえられなかったんです。だからサンシャイン劇場や横浜公演をやることになりました」

 10歳年をとって変わったことは?

「筧が別のインタビューで、お客さんが“お、懐かしいな変わってないな”って見ているうちに、気がつくと “お、ここまでやるか。新しい面が出てるな”っていうふうに感じてくれたらいいねって言っていたんですが、そうであればいいなとは思います。完璧に変身することなんか不可能だけど、同窓会とかノスタルジーでやるんだったらやる意味はないと思っているので。いわゆる昔のバンドが再結成して昔の歌しかやらないということだったらあえて今集まってやる必要はない、ということです」

 役者の反応や距離感に変化などは?

「あまり感じないですね。10年を飛び越えて、昨日の続きといった感じで作れました。みんなもびっくりしていましたね。昨日の続きで作っていけることに」

 若い演劇ファンとか演劇人には第三舞台は歴史上の存在となっている。

「特に20歳前後の人にはそう思われているみたい。虚構の劇団のオーディションを受けに来た人で、僕らの芝居を見たことがなくて、大学の教科書の演劇の歴史に載ってましたっていう人がいました」

 そういう見方をしている人たち相手にどう見せるかというのは大変なことなのでは。

「それは昔からなんですけど、やっぱり基本的には自分が面白いと思うものを作るしかない。第三舞台はラッキーなことに喜んでくれる人がついてきてくれたので続けられたんですけど、いつでも“俺はこれ凄く面白いと思うんだけどどう?”って提出して “これ全然面白くないです”って言われる可能性は常にあったし、今もある。でもそれに対して、なんというか下世話な言い方をすると、顔色をうかがっていてもしようがないから、やっぱり自分たちが面白いと思うことを追求するしかない。いざ劇場に行って“どうだー!!”って提出したときに、“全然面白くありません”って言われたら、じたばたしてもしようがない」

 虚構の劇団を立ち上げるときに「プロデュース公演ではできない、劇団というものの存在価値」を上げていた。今回、虚構の劇団ではなく第三舞台でやるということは、明らかに違う何かを出さなければいけない。

「それは本当にね、役者の年齢。つまり虚構の劇団の俳優に子育ての苦労とか書いてもしようがないわけで。親であることのしんどさとかをやらせるのは無理なんです。逆に第三舞台の40代後半の人間に、ある種の自分探しの苦悩とかやらせてもね。まあ中年になってからの自分探しというのもあるにはあるんですけどね。初期の初々しい自分探しのテーマとか書いてもしようがない。劇団に書くということは座付き作家になるということですから、それが一番の違い。だから虚構(の劇団)と同じような若い俳優がいる集団とだったらどうかき分けるのかな、ということになるんだけど、第三舞台と虚構でははなから俳優の年齢が違うので全然重なることはない」

 演劇という舞台は、ここが宇宙と言ってしまえば宇宙になる。でも役者の年齢ばっかりは越えられないということ?

「それは別にいいんです。高校生だって老婆の芝居とかはできます。高校演劇とかを見にいくと老人ホームのお話とかしているわけ。できるんですけど、それはリアルな老婆ではなくて、老婆とは何かっていう抽象的な存在としての老婆なんです。だから老婆の寂しさといっても、老婆の寂しさを通じて実は10代の孤独が見えるというふうに一つ抽象度が上がってくる。だから虚構の劇団で第三舞台の脚本をやることは可能だし40代後半〜50代の脚本をやるのは可能なんだけど、それでは表現する質と中身が変わってきちゃうんです」

 今回の公演を通じて、見てほしい、見せておきたい、伝えたい部分は?

「それは作品を見た人が勝手に受け止めてくれればいいと思います。ただ第三舞台というのは昔から、帰る時に劇場に来る時よりもエネルギーを獲得してもらいたい、劇場に来る時よりも帰るときにより元気になってもらいたい、そういう芝居をしたいなと思っています。今回もそう。メッセージに関してはホントに好きなように受け取ってもらってかまわない」

 返す返すも残念な解散だ。

「でも惜しまれて、というのがいいんじゃないですか」

(本紙・本吉英人)

『深呼吸する惑星』
【上演】新宿・紀伊國屋ホール(11月26日〜12月18日)/KAAT神奈川芸術劇場 ホール(12月28〜31日)/池袋・サンシャイン劇場(2012年1月6〜9日) 【当日券】公演前日12〜14時に電話で予約受付(先着順) チケットぴあ 当日券予約専用ダイヤル 0570-02-9581 【問い合わせ】サンライズプロモーション東京(TEL:0570−00−3337)/第三舞台公式サイト(http://www.daisanbutai.com/) 【作・演出】鴻上尚史 【出演】筧利夫、長野里美、小須田康人、山下裕子、筒井真理子/高橋一生/大高洋夫ほか


本谷有希子の「ショーウィンドウ通話劇」 スペシャルサイトで配信中

2011.11.18 Vol.531
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先日、『ぬるい毒』で「第33回野間文芸新人賞」を受賞した劇作家で演出家、そして作家の本谷有希子の作・演出で10月25日に、原宿・表参道で行われた「ショーウィンドウ通話劇」が現在「050 plus」通話劇スペシャルサイト(http://050plus.com/showwindow/)で配信中だ。

「ショーウィンドウ通話劇」とは俳優の水橋研二と女優の安藤さくらが、それぞれヒロミチ・バイ・ヒロミチナカノ原宿店とコレクトポイント原宿店のショーウィンドウの中にしつらえられた部屋の中からお互いの携帯電話に電話をして展開する会話劇。この日は各15分間の2本のショートストーリーが上演された

2人が演じるのはバイトの先輩後輩。先輩である安藤のエキセントリックな会話に戸惑う水橋。やがて2人の関係に微妙な変化が表れ…。自意識過剰な女性キャラに振り舞わされるちょっと頼りない男性キャラ。まさに本谷有希子ワールド。ショーウィンドウという思わぬ“舞台”で無料で開放された。

もっとも、明治通りを挟んだ2カ所で同時進行で上演されたので、水橋バージョンを見ている人は安藤バージョンを見ることができず、その逆もまた同じく。

というわけで、見逃したバージョンについては同サイトで配信中。

が~まるちょば最新ツアー 無言で笑わす!泣かす!

2011.11.16 Vol.531
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  サイレントコメディー・デュオのが〜まるちょばが、無言で、笑いと感動を渦を巻き起こしている。9月から「GAMARJOBAT SILENT COMEDY JAPAN TOUR 2011」をスタートさせ、各地で公演、この15日には天王洲銀河劇場で東京公演の幕を開けた。

  ステージは、大道芸的なアプローチを取ったストリートパフォーマンスと、ショートストーリー、そして1時間超に渡る長編で構成。

  今回もまた、トレードマークのトランクを使ったパントマイムで会場のアテンションをグッとつかんだと思えば、ランダムに観客をピックアップしていじり倒す。さらには観客をステージに上げて、ごほうびのキャンディーを散らつかせながらパントマイムを“強要”する。すでに彼らの公演を見たことがある人やファンの方にはおなじみのシーンだが、ツアーを重ねるごとに、観客の方々のレベルもアップ。初日となった15日には、会社帰りと思われる背広姿の男性が、指示された以上のことをやってのけ、会場を大爆笑させた。

 彼らの真骨頂でもある長編では、5年半ぶりとなるの新作『Hello Goodbye』を発表。幸せな恋人たち、爆発犯、サイエンティストが絡み合う、切ないストーリー。満面の笑顔で演技しながらも実は身体能力をさりげなく見せ付けている部分や、ほとんど移動していないのに長い距離を走っているように思わせてしまうシーンには感動を覚える。その一方で、彼らがストリートで見せてきたパフォーマンスや、以前の公演で見せたキャラクターを彷ふつとさせるシーンもあって、古くからのファンも大喜びの様子だった。

 たった2人の登場人物が、セリフ1つ放つことなく、観客を笑わせ、きゅんとさせ、感動させる。が〜まるちょばの東京公演は20日まで同所で。詳細はオフィシャルサイト(http://www.gamarjobat.com/)。

『おやすみ、かあさん ‘Night,mother』

2011.11.14 Vol.531
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 1983年度にピューリッツアー賞を受賞した問題作を映画監督の青山真治が演出する。

 人生の選択と尊厳を問う二人芝居。

 登場人物は40歳になる娘ジェシーと60歳になる母。離婚したジェシーには20歳を過ぎた息子がいるが、ぐれて家には寄りつかず、たまに金をせびりに現れるくらい。ジェシーは母と二人暮らし。時計は夜の8時半。夕飯の後片付けが終わり、2人の細々とした日常的な時間があり、10時になるとジェシーは「おやすみ、かあさん」と言って寝室に入る。いつもの毎日だ。ただその夜はいつもとひとつだけ違ったことがあった。それはジェシーがある決意をしていた、ということ。それに気付いた母親は思いとどまらせようとする。しかしそれはかなわずに、ジェシーはいつものように「おやすみ、かあさん」と告げて寝室に入るのだった…。

 母親役に白石加代子、娘役に中嶋朋子。

 取り立ててエンターテインメントな出来事が起こるわけでもなく物語は日常的な会話が淡々と続くだけ。しかしそのひとつひとつの台詞の裏側と、間の沈黙に多くの思いが込められる。真に実力のある役者にしかこなせない作品だ。

【日時】11月26日(土)〜12月4日(日)(開演は月火木金土19時、日水14時。※3日(土)は13時/18時開演。開場は開演30分前。当日券は開演1時間前から発売) 【会場】あうるすぽっと(東池袋) 【料金】全席指定 4500円 【問い合わせ】ジェイ.クリップ(TEL:03-3352-1616=平日10〜19時 〔HP〕http://www.j-clip.co.jp/) 【作】マーシャ・ノーマン 【演出】青山真治 【出演】白石加代子、中嶋朋子


イキウメ『太陽』

2011.11.07 Vol.530
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前回公演「散歩する侵略者」

 作・演出を務める前川の作品は作り物と分かっていても、ストーリーの所々にちりばめられた妙なリアリティーに、思わず「もしや」と前のめりにさせられる。そのストーリーも「こんなことが起こったら怖いな、やだな」というツボを的確に突いてくるので、ついつい中毒になってしまう。

 今回は過去に上演した『双魚』をベースとした作品。「現代の吸血鬼」「二分された人間と世界」という二つのテーマを内包する。

 舞台は世界的なバイオテロで拡散したウイルスによって人口が激減した世界。数年後、感染者の中に奇跡的に回復した人々が現れる。彼らは免疫や代謝において人間をはるかに上回る身体に体質変化していた。しかし紫外線に弱く太陽光の下では活動できないという欠点も併せ持っていた。彼らは自分たちをホモ・ノクセンシス(夜に生きる人)と位置づけ「ノクス」と名乗るようになった。やがて増加したノクスと人間の中で争いが起こり、ノクスが社会の中心となっていった…。

 SF系のお話とタカをくくっていたら、きっちりと描かれた人間関係の機微に思わず考えさせられる。全く油断のできない劇団。

【日時】11月10日(木)〜27日(日)(開演は火〜金19時、土13時/18時、日13時。23日(水・祝)は13時開演。11日と月曜休演。開場は開演30分前。当日券は開演1時間前から発売) 【会場】青山円形劇場(表参道) 【料金】全席指定 前売4000円、当日4200円/プレビュー公演(10日)のみ 前売3800円、当日4000円  【問い合わせ】イキウメ(TEL:03-3715-0940 〔HP〕http://www.ikiume.jp/) 【作・演出】前川知大 【出演】浜田信也、盛隆二、岩本幸子、伊勢佳世、森下創、大窪人衛、加茂杏子/安井順平、有川マコト


日韓共同制作公演『砂の駅』

2011.10.31 Vol.529
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ソウル・国立KBハヌル劇場 ソウル・ワークインプログレス公演にて(撮影・JONGJIN LIM)

「転形劇場」「太田省吾」というキーワードから連想されるのは「沈黙劇」という言葉。

 沈黙劇という手法を生み出した太田の『水の駅』『地の駅』『風の駅』『砂の駅』は「沈黙劇4部作」と呼ばれ、その衝撃も含め、現在まで語り継がれる作品となっている。

 文字通り、俳優は台詞を発しない。非常にゆっくりとした動きと表情で物語を表現していく。ある意味、舞踏のようでもあり、演劇の概念を覆す作品でもあった。

 今回、韓国を代表する女性演出家であるキム・アラの手によって、再びこの作品が上演されることとなった。アラは1988年に韓国で『水の駅』を目の当たりにし、91年の来日時に太田と出会い、その作品観に共感し、その後も交流を続けた。太田は2007年に肺がんで没するのだが、アラは沈黙劇に挑戦することを決意。2009年にソウルで『水の駅』『風の駅』を連続上演。そして今回の『砂の駅』上演となった。日本公演に先駆け、10月には韓国のソウルとプサンで上演。現地でも高い評価を得ている。

 さまざまな方法論を探った末にたどりついた沈黙劇という形態。2011年の今、どのように進化した形の沈黙劇を見せてくれるのか期待が集まる。また転形劇場の中心役者だった、大杉漣、鈴木理江子、品川徹、初演に出演した舞踏家・上杉満代が出演。当時に比べ多くの経験を経た彼らがどんな沈黙劇を見せてくれるのかも注目。

【日時】11月3日(木・祝)〜6日(日)(開演は木・金19時30分、土13時30分/18時、日14時。開場は開演30分前。当日券は開演1時間前から発売) 【会場】世田谷パブリックシアター(三軒茶屋) 【料金】全席指定 一般 S席6000円/A席4000円 【問い合わせ】NPO法人魁文舎(TEL:03-3275-0220 〔HP〕http://www.kaibunsha.net/) 【原作】太田省吾 【演出・構成】キム・アラ 【出演】大杉漣、鈴木理江子、上杉満代、品川徹/ペク・ソンヒ、クォン・ソンドク、ナム・ミョンニョル、クァク・スジョン、ペク・ウンジョン、ソン・ギョンスク、キム・ジソン、オ・ソンテク、イム・ヒョンソプ、チョン・ハヌイ


NYLON100℃ 37th SESSION『ノーアート・ノーライフ』

2011.10.24 Vol.528
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 NYLON100℃、古田新太との企画公演といった舞台での作・演出、ケラ&シンセサイザーズとしてのライブ活動、トークライブなどなど、2011年も立ち止まることなくさまざまなシーンで活動し続けてきたケラリーノ・サンドロヴィッチ。

 今年を締めくくるのは2001年に上演された『ノーアート・ノーライフ』。待望の再演だ。

 パリのカフェに夜な夜な集う「自称芸術家」の日本人たちは、ヒモ同然の生活をしながら、あるいは犯罪で生計を立てながら創作活動を続けんとしていた。この愛すべき男たちの、どうにもならない滑稽な人間模様を描く。

 10年前、ナイロンの主要メンバーに山崎一、温水洋一を客演に迎えた男だけのこの作品は、見慣れた女優たちがいないこともあって、いつものナイロンとは違った雰囲気の作品として、当時も話題を集めた。今回は10年の時を経て、そのときのメンバーがほぼ揃った。作品の雰囲気がどのように変わるのか。今や売れっ子となった俳優たちが10年経ってどのようなたたずまいを見せてくれるのか。

 熟成した味わいと新鮮さが同居した作品となる。

【日時】11月5日(土)〜27日(日)(開演は月火木金19時、土13時/18時、日13時、水14時。※5日(土)は18時のみ。6日(日)は18時開演。8・14・18・24日は休演。開場は開演30分前。当日券は開演1時間前から発売) 【会場】本多劇場(下北沢) 【料金】全席指定 6900円/学生券4300円(チケットぴあのみ) 【問い合わせ】キューブ(TEL:03-5485-8886=平日12〜18時 〔HP〕http://cubeinc.co.jp/) 【作・演出】ケラリーノ・サンドロヴィッチ 【出演】みのすけ、三宅弘城、大倉孝二、廣川三憲、吉増裕士、喜安浩平/温水洋一、山崎一


キラリふじみ・レパートリー新作『あなた自身のためのレッスン』

2011.10.10 Vol.527
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 公共劇場の常識を越えた野心的な作品作りで知られる「キラリ☆ふじみ」。今回は新しい試みである「芸術監督が演劇分野のレパートリーを創造していくプログラム」の第1弾として、清水邦夫の『あなた自身のためのレッスン』を上演する。

 ある市民会館の舞台に記憶を失った男女3人が逃げ込むと、彼らの家族と名乗る男女が現れる。やがて会館に住み込む管理人夫婦も巻き込んで、舞台上で記憶を取り戻させるための奇妙な家族ごっこを演じ始める――。家族再生をテーマに1970年に書き下ろされた作品だ。

 これまでも古典、近代戯曲を独自の解釈で現在にアジャストしてきた多田淳之介。1960年代を背景に当時の「市民会館」に設定された物語をどのような手法で「現在の劇場」によみがえらせるのか。

 池袋から東武東上線の準急で29分。鶴瀬駅からバスで10分強。会社が終わってダッシュで向かえば、十分間に合うか?

【日時】10月18日(火)〜23日(日)(開演は火水金土19時30分、木日14時。開場は開演20分前。当日券は開演1時間前から発売) 【会場】富士見市民文化会館キラリ☆ふじみ メインホール(鶴瀬) 【料金】日時指定・全席自由・整理番号つき 一般3000円/学生・シニア(65歳以上)2000円/高校生以下1000円 【問い合わせ】富士見市民文化会館キラリ☆ふじみ(TEL:049-268-7788 〔HP〕http://www.city.fujimi.saitama.jp/30shisetsu/99kirari/) 【作】清水邦夫 【演出】多田淳之介(キラリふじみ芸術監督) 【出演】宇井晴雄、伊東沙保、猪股俊明、中村まこと、大川潤子、大崎由利子、小田豊


PARCO / USINEC Presents『猟銃』

2011.10.03 Vol.526
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 カナダの天才演出家といわれるフランソワ・ジラールが、日本が誇る文豪である井上靖の『猟銃』を舞台化。そして日本でも指折りの女優・中谷美紀の初舞台作品とあって、注目を集める舞台『猟銃』が3日初日を迎えた。

 中谷は、ある男の13年間に渡る不倫の恋を通して、その男の妻であるみどり、愛人の彩子、そして愛人の娘・薔子の3人の女性を演じる。一人はその不条理を怒りにぶつけ、一人は自らも嘲りながら悲しみとともに力強く、そしてもう一人は井戸の底のように静かに生きていく。この全く異なった3人の女性の愛と憎しみを中谷は体当たりの演技で表現する。

 ジラールは日本でもおなじみのシルク・ドゥ・ソレイユ『ZED』の演出も務めているのだが、中谷の相手役には彼が絶大なる信頼を置くフィジカルアクターで、シルク・ドゥ・ソレイユ『LOVE』のサージェントペパー役などで知られるロドリーグ・プロトーを起用。その抜群の身体能力も見どころのひとつ。

 9月7〜10日にはカナダのモントリオールで初演。客席にはスタンディングオベーションが巻き起こったという。

【日時】10月3日(月)〜23日(日)(開演は月金19時、水日14時、木土14時/19時。※10日(月)は14時開演。火曜休演。開場は開演30分前) 【会場】パルコ劇場(渋谷) 【料金】全席指定 7350円/U-25チケット5000円(25歳以下・当日指定席券引換/要身分証明書/チケットぴあ のみ取扱) 【問い合わせ】パルコ劇場(TEL:03-3477-5858 〔HP〕http://www.parco-play.com/) 【原作】井上靖 【翻案】セルジュ・ラモット 【演出】フランソワ・ジラール 【出演】中谷美紀、ロドリーグ・プロトー


四つ子『四つ子の宇宙』

2011.09.26 Vol.525
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 岩井秀人、江本純子、前田司郎、松井周といえば、それぞれ劇団を主宰し、作品を発表するにとどまらず、外部作品での脚本・演出・役者としての出演、その他多くのメディアでの活動と多忙を極める4人。そんな4人が集まって2週間も公演を打つとはちょっと驚き。

 4人はあらゆる局面でこれからの演劇界を引っ張る存在。そして同世代の演劇人というとライバル意識が凄くて、仲が悪くて…というのは昔の話。いや一部でそういう関係もまだあるかもしれないが…。今回は前田の呼び掛けに3人が意気投合。豪華なそろい踏みとなった。

 作品は一つの物語を4人で書き、演出し、そして演じる。4人が額を合わせて作るのではなく、それぞれがシーンを担当して作るとのことで、果たしてどんなものが出来上がるのか、幕が上がるまで予想はつかない。

 4人が起こす化学反応でいったいどんな作品が生まれるのか? そもそもうまくいくのか? 業界内にあらゆる興味を振りまきながら今日も稽古は続く。会場は小さいからチケットはお早めに。

【日時】10月1日(土) 〜16日(日)(開演は1・10・11・14日19時30分、2〜4日19時、5・7・12日15時/19時30分、8・9・15日15時/19時、16日15時。木曜休演。開場は開演20分前。当日券は開演40分前から発売) 【会場】アトリエヘリコプター(五反田) 【料金】全席自由 前売、当日とも3500円 【問い合わせ】Little giants (TEL:090-8045-2079=平日11〜19時 〔HP〕http://4go.main.jp/) 【作・演出・出演】岩井秀人(ハイバイ)、江本純子(毛皮族)、前田司郎(五反田団)、松井周(サンプル)


吉沢悠インタビュー 感動と刺激の日々

2011.09.26 Vol.525

主演舞台『オーデュボンの祈り』が30日に幕開け

吉沢悠が大活躍だ。主演舞台『オーデュボンの祈り』が30日に世田谷パブリックシアターで初日を迎え、10月からスタートする話題のドラマ『南極大陸』にも出演。舞台に映像に、日々役者魂を刺激されているという。「この秋は、そして今年は自分にとって特別な年になると思う」と本人は目を輝かせる。

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撮影・宮上晃一

「初めてご一緒させていただく方も多いんですけど、みなさん演劇を愛されている方ばかりで、どうしたらおもしろくなるかって建設的な話ができるメンバーなんです。頼もしくて心強い仲間が多いので、リラックスして現場にいられます」

 現在、30日にスタートする主演舞台『オーデュボンの祈り』の稽古中。3年ぶりの舞台に向けて、演じることはもちろん共演者やスタッフとの関わりのなかで、さまざまな刺激を受ける「感動の毎日」を送っているという。

 舞台は、人気作家の伊坂幸太郎による同名の小説が原作。エンターテインメントな舞台に関心を持っていたという吉沢にとってうれしい出会いだった。

「伊坂さんの作品はいろいろ読ませていただいています。個人的な話になるんですが、『ゴールデンスランバー』の映画化の話を聞いたとき、すごくやりたかったんです! 映画を見たら、やっぱり堺(雅人)さんでぴったりだったな、と思いましたけど(笑)。その時は縁がありませんでしたが、今こうして伊坂さんの作品に出会えたことがうれしいです」

 吉沢が演じるのは伊藤という男。IT関連の仕事を突然辞めてコンビニ強盗、気づいたら不思議な島・荻島に連れて来られてしまう。島は長く鎖国状態にあって、不思議な人たちが暮らす。ファンタジックなのだが、言葉や作品の世界観がリアルに心に響く。

「伊坂さんの作家としての初期に生まれた作品だと思うので、ちょっと自分を投影しているところもあるのかな、伊坂さんの頭の中の話なのかな、なんて、みんなで話しています。不思議な世界観もあって難解な部分もあると思うんですが、世の中に出て悩んだり、壁にぶつかったときに誰もが感じることでもあるし、受け入れやすい作品だと思います」

 面白くしたい。その一念で、キャスト・スタッフが一丸となり、稽古に取り組む。もちろん吉沢自身もだ。ただ、主演であることや伊坂作品への挑戦というところで不安もある。

「すでにたくさんのファンがいる作品ですけど、この世界観を知らない人も楽しめるものではなくてはならないと思います。だから今は、生身の人間による演劇という形で、この世界観をちゃんと成立させるための作業をしている段階ですが……難解です(笑)。僕だけではなくて、演出家のラサール石井さんも、脚本の和田憲明さんもすごく悩まれているみたいで、『難しいなあ』って声が稽古場でもよく聞こえてきます。台本もどんどん変わってよくなってきていますし(笑)。そうやって話し合いながら作り上げていくのが舞台の楽しさでもありますね」 

 演劇を愛し、作品を愛する人たちとの共同作業を楽しみながら、新たな発見をする。「映像でも舞台でも一生懸命取り組む気持ちは変わらないけれど、舞台ってやっぱり、僕には挑戦の場ですから」。この作品を経て、吉沢はまた新たな一歩を踏み出しそうだ。

 舞台は、東京を皮切りに、北海道、大阪、宮城と地方を巡る。それと並行して、南極越冬隊員を演じたTBS系ドラマ「日曜劇場『南極大陸』」(日曜夜9時、10月16日スタート)も始まる。

「最近のドラマでは珍しい男くさいドラマになりました。越冬隊員という役どころもあって自然と結束が強くなって、主演の木村拓哉さんを始め、自分のシーンが終わっても、みんな控室に帰らない(笑)。食事も一緒だったんで、本当にずっと一緒でしたよ。そういう現場にいられたことが幸せですね。それに加えて、香川照之さんや堺雅人さんとも共演できたのも大きかった。現場では先輩ばかりだったから、『俺も、そういうことあったよ!』なんてアドバイスをもらったりして、またまた刺激的な現場でしたね」

 現場に恵まれ、刺激のシャワーを浴びながら自分にますます磨きをかける。「この秋、もっと言うと、堤真一さんと共演した『孤高のメス』あたりから、この1年は自分にとって特別な年になると思ってるんです」。吉沢悠の胸は今、期待でパンパンだ。

(本紙・酒井紫野)

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『オーデュボンの祈り』

【日時】9月30日(金)〜10月12日(水)開演は月火木金19時、水14時、土13時/18時、日祝13時。10月4日(火)は休演 【会場】世田谷パブリックシアター(三軒茶屋) 【料金】前売りS席6800円、A席3800円(税込・全席指定)※当日券は開演の1時間前より劇場受付にて発売 【予約・問い合わせ】石井光三オフィス 03-5428-8736(平日12〜19時)


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