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新たな1年。見る者を、原点に立ち返らせてくれるアート 山本昌男展「BONSAI 手中一滴」

2019.01.18 Vol.714

 モノクロームの静謐で詩的な写真作品やインスタレーションで知られ、海外でも高い評価を得ている写真家・山本昌男の展覧会。

 山本は自らの写真作品を俳句に例えることがあるという。小さいものや些細な出来事を大切にすくい上げ、そこから丹念に光を探してきた山本にとって、最小限の要素を用いて無限の広がりを表すという点で、とてもよく似た表現方法なのだという。

 同じように、限られた空間上に自然や宇宙を凝縮した「盆栽」に対して山本が深い興味を抱いてきたのも、ごく自然なことだろう。日本を代表する盆栽家・秋山実氏と知り合った山本は、近年さまざまな盆栽と向き合い、その静謐にして雄弁なたたずまいを写真に収めてきた。

 曹洞宗の開祖道元は著書『正法眼蔵』に一滴の露にも全宇宙が宿ると記した。同シリーズでも山本は、これまで被写体として切り取ってきた路傍の石や木の根と同じく盆栽と真摯に向き合い、その“小さな宇宙”が発する光をとらえている。
“手の中の1滴”に宇宙の壮大な広がりを感じてみては。

新たな1年。見る者を、原点に立ち返らせてくれるアート「TADANOBU ASANO 3634 浅野忠信展」

2019.01.15 Vol.714

 日本映画のみならずハリウッドや中国など海外にも活動の場を広げる俳優・浅野忠信によるドローイング作品、約700展を紹介する展覧会。

 浅野がドローイングを描き始めたのは、2013年に中国で撮影された映画『羅曼蔕克消 亡史』(2016年、中国にて公開)での、長い待ち時間がきっかけだったという。映画の台本やスケジュール表の裏、ホテルのロゴの入ったメモ帳、薬袋などにボールペンで描き初め、現在までの5年間で描いたドローイングは3634枚にもおよぶ。そこに描かれているのはハードロック的なものから、デッサン、落書き、漫画、アメコミ、抽象など多岐にわたる。撮影の合間の時間つぶしとして始まった浅野のドローイングは、どこまでも自由。一見とりとめがないように見えるが、視点のユニークさやシュールな表現の数々から気づけば目が離せない。ボールペンを走らせる浅野の思考をたどり、その深層に分け入ることができるかのような感覚も刺激的で面白い。

 膨大な数のドローイングに没入し、個性派俳優・浅野忠信の思考をたどりながら、紙とボールペンから無限に広がるアートの可能性と魅力を再発見できる。

1年の終わりと始まりに「自分」と「世界」を見つめてみる「EPSON teamLab Borderles」

2018.12.29 Vol.713


MORI Building DIGITAL ART MUSEUM: EPSON teamLab Borderles

 2018年6月21日にお台場にオープンし、わずか3カ月弱で来場者数50万人を突破した「MORI Building DIGITAL ART MUSEUM: EPSON teamLab Borderless(森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボ ボーダレス)」。11月28日に行われた来場者100万人突破記念セレモニーではオーストラリアから来たNikky Parkerさん一家が記念すべき100万人目として何度も無料で入館できる「Borderlessパスポート(非売品)」を贈呈された。

 日本全国からはもちろん海外からの観光客にも人気のスポットとなった同館。館内の作品はどれも、それぞれの世界を表現しているようでいて、実は作品それぞれの間には境界がない。ある時は作品が“部屋から出て”移動したり、他の作品とコミュニケーションして影響を受け合ったり。境界のないアートに全身を没入させて1万㎡の、複雑で立体的で変化し続ける世界に触れてみて。

近い将来、春画ブームがくるかも!? 現代アーティストが春画とコラボした「nuranura展2018」が開催中

2018.09.19 Vol.Web Original

 葛飾北斎「春画」木版画復刻プロジェクト作品発表を記念して、日本画・木彫・映像・パフォーマンス・墨絵・写真・洋画など、さまざまなジャンルの現代アーティストたちによる「春画」をモチーフとした作品展示会「nuranura展2018」が23日まで、秋葉原のThe 1/3rd Galleryにて開催されている。

 ゴッホ、モネ、ロートレックなど19世紀のヨーロッパの印象派の画家たちに多大なる影響を与えた浮世絵は、今なお国内外問わず、多数の愛好家を生み出す日本を代表する伝統美術。中でも、絵師、彫師、摺師の三位一体の協力体制から生まれる浮世絵木版画において、彫師・摺師の技術が非常に繊細で高度と言われているのが「春画」だ。美人画や武者絵と異なり、男女が絡み合う様子は、非常に複雑かつ繊細な技術が求められるというわけだ。

猛暑からトリップ! おすすめアート展「没後50年 藤田嗣治展」

2018.08.21 Vol.709

 明治半ばの日本に生まれ、80年を超える人生の約半分をフランスで暮らし、晩年にはフランス国籍を取得して欧州で亡くなった画家・藤田嗣治(レオナール・フジタ 1886-1968)の大回顧展。2018年は藤田が世を去って50年目。本展では、日本はもとよりフランスを中心とした欧米の主要な美術館の協力を得てその画業の全貌を展覧。

「風景画」「肖像画」「裸婦」「宗教画」などのテーマを設けて、最新の研究成果等も盛り込みながら、藤田芸術をとらえ直そうとする試み。精選された作品100点以上を展示。中でも、パリのポンピドゥー・センターや、ベルギー王立美術館、アメリカのシカゴ美術館など、欧米の主要な美術館から、初来日作品も含め約20点の代表作が出展。また数年前に修復を終えた大原美術館の《舞踏会の前》や東京国立近代美術館の《五人の裸婦》など、藤田の代名詞ともいえる“乳白色の下地”による裸婦10点以上もそろう。

猛暑からトリップ! おすすめアート展「マジック・ランタン 光と影の映像史」

2018.08.14 Vol.709

 人々が1つの映像を一緒に見るという行為は、いつ、どのように生まれ、我々の社会に定着するようになったのか。近年では、プロジェクション・マッピングやパブリック・ビューイングが広く定着しているが、スクリーンや壁に映像を投影する「プロジェクション」という行為は、映画の発明よりはるか昔に、さかのぼることができる。それがマジック・ランタンと呼ばれる、現代のプロジェクターの原型にあたるもの。

 本展では、映像の歴史を、プロジェクションの歴史という視点から見直し、映像史の新たな側面を照らし出すことを試みる。会場では、同館が所蔵する初期映像史に関するコレクションの中から、マジック・ランタンや映画の誕生以前に生まれた映像装置や資料などを展示。中でも、マジック・ランタンを用いたホラー・ショー“ファンタスマゴリア”に使われた「ファンタスコープ・モルテニ」は世界に4点のみ現存するうちの1点という貴重なもの。 他にも流行とともに多彩なタイプが作られたマジック・ランタンや日本のマジック・ランタンもを紹介。

 また、アジアン・アート・アワード 2018で大賞を受賞した気鋭のアーティスト・小金沢健人による新作も出品。最新技術を使ったプロジェクション・マッピングの現在を体現するインスタレーションに注目を。

マジック・ランタン 光と影の映像史
【会場・期間】東京都写真美術館 8月14日(火)〜10月14日(日)
【時間】10〜18時(木金は20時まで。ただし8/16、17、23、24、30、31は、サマーナイトミュージアム期間中のため21時まで。いずれも入館は閉館の30分前まで)
【休】月曜および9/18、25、10/9(9/17、24、10/1、8は開館)
【料金】一般500円、学生400円、中高生・65歳以上250円
【問い合わせ】 03-3280-0099
【交通】JR恵比寿駅東口より徒歩約7分 恵比寿ガーデンプレイス内
【URL】 http://topmuseum.jp

ナゾなのに「なんか分かる!」話題の展覧会&映画で「縄文」にハマってみた!

2018.07.08 Vol.web original

 縄文と聞いて思い浮かべるものといえば、竪穴式住居、火焔土器、遮光器土偶くらい…という人は多いのでは。1万年近く続いたにも関わらず、実はいまだに多くの謎に包まれている縄文時代。そんな縄文の知られざる魅力に迫る特別展 『縄文―1万年の美の鼓動』が上野の東京国立博物館で開催中。早くも大きな話題を呼んでいる。

世界よ、これがニッポンの神技だ!/12月2日(土)の東京イベント

2017.12.02 Vol.Web Original

 世界も驚く、超絶技巧を持つ日本人アーティストとその作品を紹介する『神の手●ニッポン展』が目黒のホテル雅叙園東京にてスタート。

上野・不忍池が夜に光る!?/11月10日(金)の東京イベント

2017.11.10 Vol.Web Original

 上野・谷中エリアを舞台にした都市型野外アートフェス『TOKYO数寄(すき)フェス 2017』が19日まで開幕。本日10日は15時30分より上野公園 噴水前広場にてオープニングセレモニーを開催する。

週末は子どもを連れてアート体験! 「オトノバ」に「おもしろびじゅつワンダーランド」

2017.08.26 Vol.696

ICC キッズ・プログラム 2017 オトノバ 音を体感するまなび場
 NTTインターコミュニケーション・センターでは“音”を通してアートを楽しむプログラムを開催中。

 人が音を感じるとき、単に聞くだけではなく、目で見たり、振動として感じたり、においとともに感じたりしているもの。一方で、音によって広さや遠さを感じることもある。音を聞いて感じるものは、耳だけではなく他の知覚やこれまでの経験、その場の環境など、総合的に作られている。

 本展では、「オトノバ(音の場)」と題して“耳”だけでなくさまざまな感覚を通じて、また体を使って音を感じられる作品を展示。カラフルなラッパ型のホーンと、パイプなどの部品を自由に組み合わせてオブジェを作り、その長さや部品の多さなどによってパイプを伝わる音が変化する様子を感じることができるスズキユウリの作品(写真)や、香料の入った大小のビンを使って、音楽だけでなく香りを奏でて、音階ならぬ“香階”を感じる『パフューマリー・オルガン』など、ユニークな作品が揃う。作品を体験することで、身の回りの音をこれまでとは違った聞き方、見方でとらえられるようになりそう。“音”について新しい感覚を発見できるかも。※大人のみでの入場も可。

ICC キッズ・プログラム 2017 オトノバ 音を体感するまなび場
【時間】11〜18時
【場所】NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]ギャラリーA
【開催期間】 開催中〜8月31日(木)
【休】月曜
【料金】入場無料
【問い合わせ】0120-144199
【交通】京王新線初台駅東口から徒歩2分
【URL】http://www.ntticc.or.jp/

記録を塗り替えた現代画家・池田学の展示会が東京で開催

2017.07.18 Vol.694

■5年の歳月をかけた大作を展示
緻密な筆で壮大な世界を出現させる作品が印象的な現代画家・池田学。今年1月からは、初となる大規模巡回展『The Pen−凝縮の宇宙−』がスタートし、最初の会場となった故郷の佐賀県立美術館では、来場者数9万5740人と同館の記録を大幅に塗り替え、大きな話題を呼んだ。

現在、開催中の金沢21 世紀美術館でも、学生時代から現在に至るまで、今日までの画業をほぼすべて振り返る約120点を展示し、鑑賞者を圧倒させている。

約7年ぶりとなるミヅマアートギャラリーでの今回の個展では、東京では初公開となる最新作《誕生》を中心に厳選した作品を展示。《誕生》は、縦3メートル×横4メートルという、池田にとって最大サイズの作品。本作は東日本大震災がきっかけとなって制作されたという。構想2年、制作3年という年月をかけて描き上げた、文字通りの大作だ。

満開の花々を抱えた大木が中心にどっしりと構え、圧倒的な存在感でたたずむ。しかしその細部に目を向けていくと、秘められた物語が立ち現れるように、別の風景が見えてくる。

■展示会の詳細について
【開催期間】7月26日(水)〜9月9日(土)
【時間】11〜19時(※日月祝休み)
【料金】入場無料
【場所】ミヅマアートギャラリー(地下鉄 市ヶ谷駅出口5より徒歩5分)
【URL】 http://mizuma-art.co.jp/
【問い合わせ】03-3268-2500

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