“サイコ”の異名を持つ平成ノブシコブシ・徳井健太が、世の中のあらゆる事象を生温かい目で見通す連載企画「徳井健太の菩薩目線」。第150回目は、日本のロックバンド「ドレスコーズ」について、独自の梵鐘を鳴らす――。
どういうわけか、わたくしのYouTubeチャンネル『徳井の考察』で、ミュージシャンについて話をすると、皆さん好反応を示してくださる。
THE YELLOW MONKEY、eastern youth――。元々、音楽をやるか、お笑いをやるかで迷っていた10代。NSCに入ったものの、もしあのままギターを弾いていたらどうなっていたんだろう、なんて思うときがある。
だからなのか、『徳井の考察』でミュージシャンに触れるとき、淡い10代の記憶を思い出すこともあって、熱っぽく語ってしまうのかもしれない。お笑いも音楽も大好きだけど、音楽には音楽の不思議な力がある気がする。
芸人のライブを見た、DVDを買ったからといって、そのときの思い出が全体的に浮かび上がるなんてことはないかもしれない。でも、ミュージシャンのライブを見た、 CDを買ったときって、そのときの自分の環境だったり、出来事がぶわっと浮かび上がってくる。初めて買ったCDを覚えている人は多くても、初めて笑った芸人のテレビ番組を覚えている人は、あまりいないよねって。
それだけ思い入れが強い存在。『徳井の考察』で、音楽のウケが良いのもわかるような。
あるとき、ドレスコーズについてお話をさせていただいた。
ドレスコーズは、もともと毛皮のマリーズのボーカルだった志磨遼平さんを中心に結成された4人組ロックバンド。その後、志磨さんのソロプロジェクトとなる。志磨遼平=ドレスコーズなので、西川貴教さんとT.M.Revolutionの関係に近いかもしれない。
どうしても世の中に知ってほしい歌詞がある。音楽がある。もっと知られなきゃおかしい。そんな気持ちから、『徳井の考察』でいかに志磨遼平が作り出す音楽(特に歌詞)が素晴らしいかを熱弁させていただいた。感極まって、泣きながら。
たとえば、『人間ビデオ』。世界最強に良い曲だ。劇場アニメ『GANTZ:O』の主題歌になった曲だから知っている人もいると思う。でも、世の中の認知が足りない。もっともっと話題になっていい。そう思わないとやってられないくらい素晴らしい歌。
俺は、志磨さんに会ったことはない。話したことすらない。だけど、彼が作った音楽の素晴らしさを、勝手に褒めちぎりたかった。もうイタいファンのYouTube配信。
きっとやっちゃいけないことだと思ったけど、どうしても伝えたくて、彼が紡いだ歌詞を勝手に読み上げた。自分のYouTubeチャンネルで、会ったこともないミュージシャンの歌詞を読み上げ、挙句の果てに歌詞の背景を推察して、涙する。怖い人だと思われていなければいいんだけど。
その模様は、『絶対聴くべき名曲たち【ドレスコーズ】【毛皮のマリーズ】』
からご覧いただければ。何度見ても、情緒がどうかしちゃっている。
なのに、後日キングレコードから連絡が届いた。なんでも、ドレスコーズの最新アルバム『戀愛大全』がリリースされるので、志磨さんの歌詞の中からパンチラインだと思われるものを選んでくれないか――というオファーだった。そんなことが起こるんだ。これだから音楽って最高だ。純粋にうれしかった。
ドレスコーズ、毛皮のマリーズの恋愛ソング、あるいは志磨さんが提供したラブソングの中から“志磨しか勝たん”と思うフレーズを募る「#ラブソング志磨しか勝たんパンチライン」。バイきんぐ小峠さんなども参加するその企画内で、僭越ながらパンチラインとプレイリスト、そしてコメントを寄稿させていただいた。
あらためて歌詞を眺めていると、やっぱり志磨遼平は天才だと思った。5~10曲選んでくださいと言われたけど、絞り切れなかったから当然のように上限の10曲フルフルで選ぶ。どれを選ぶか、迷いに迷って、コメントも書いては消して、書いては消して。
なんといっても会ったことがない。もうこちらからの一方的な手紙。そんな気持ちで渡したメッセージ。キモイと思われていなければいいなぁ。