落語家・柳家三三



4月16日相模大野グリーン落語会出演





若手落語家の中では間違いなく、実力・人気ともにトップの柳家三三(やなぎや さんざ)師匠。真打6年目ながら、独演会のチケットは発売と同時に売り切れる。しかし、“若いのに上手い”、“老成している”、“若手のホープ”と言われる師匠は意外にも超ネガティブだった?!





手柄は自分、失敗は人に。


責任感がなくなったら押しつけがましくなくなった。





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「写真を撮られるなら床屋ぐらいは行きたいなと思っていたんですけど…」と3月6日、鎌倉での独演会を終え、取材場所に駈けつけてくれた三三師匠。床屋に行く暇もないほどの売れっ子落語家なのに、「他人だったら絶対に友達になりたくないですね、自分とは」と言う。





「自分のことが嫌いなんですよ。こいつの落語は面白くないし、人としてもどうかなって…。それは裏を返せばすごくナルシストなんだと思います。今の自分を否定するのは、僕は本当はこんなもんじゃないっていう、なんの根拠もない期待がある。一番嫌いなのは自分で、一番大事なのも自分。まあ、そういうふうに理屈っぽく説明しようとする性格も嫌いなんですけど(笑)」。  





 二つ目のころから巧いと落語通の男性をうならせ、その端正な高座姿が女性にも人気の師匠の意外な告白。





「ネガティブなんですよ。すごく。子どものころは、夏休みが嫌いだったんです。夏休みに限らず長い休みが近づくとどんどん憂鬱になる。休みに入る前の晩が一番嫌でしたね。だって明日起きると、40日ある休みが39日になるんですよ(笑)。楽しいことのはじまりは、終わりに向けてのカウントダウン。それと同じで、今の恵まれた状況が、続くわけない。絶対これは何かの間違いだって思いながら、いつコケても自分が傷つかないように、自分を否定しながら予防線を張っているんです。って、こんな暗い話をして大丈夫ですか(笑)」





 自分がどう思おうが、大人気の落語家であることは、誰もが認めるところだが、ここ数年心境に変化があったとか。





「落語って他のものに比べて高度だというわけではないんですけど、知的な要素を刺激される部分が多いのが魅力だと思います。目に見えない言葉だけを聞いて自分の頭の中で映像を想像する。人から与えられた情報で自分なりに何かを構築して、それを自分で面白く思う。自分でわかった、笑えたっていう時の満足感というか…。ただ与えられたものをそのまま受け取って面白い、面白くないだけじゃなく、聞く人の自由度が高いですよね。好きに想像して下さいって。以前は、自分がイメージした映像や世界を聞いてる人にも全く同じに共有してもらいたかった。そのためには、きちんと表現しなくちゃ、間違いなく伝えなくちゃって。でも最近はどうでもいいやって(笑)。僕がしゃべったことを聞いてどう感じるかは、聞いている人の勝手ですというスタンスになったんです。早い話が楽しくても、楽しくなくても聞く人のせい。でも喜んでもらえたなら、声を大にして言いますね。“きっかけを作ったのは僕です”と。手柄は自分、失敗は人に。責任感がなくなったんで、逆に押し付けがましくなくなったのかも。そしたら不思議なものでお客さんが喜んでくれるようになった。そうなったのは、ここ2〜3年ですけど。追っかけると逃げるし、引くと着いてくる。じゃあ今まで一生懸命やっていたのはなんだったのかって(笑)」。





 どうでもいいと言いつつも、客席を三三ワールドに引き込む芸はお見事。





「自分の勉強のためにやる自主的な独演会は毎月1回、そのほか、企画された独演会に呼んでいただく場合もあります。独演会じゃなくて、誰かの会のゲストとか、いろいろな落語家と共演する会もあります。もちろん寄席にも出ています。自分の独演会だと、お客さんと自分の折り合いの付け方だったりするんですけど、とりわけ個性の強い人たちが集まる会になると自分の中のどの引き出しを開けると、お客さんに楽しんでもらえて、なおかつ自分が損をしないかということを考えます。寄席でも日常でやっていることですけど、ほかの出演者との兼ね合いや流れを考える。ただ流れを壊さないようにだけではなく、流れの中にすっと溶け込みながら、あとあと来たお客さんに思いだしてもらうというか…。なにか引っかかるようなところを作るのが、そういう会の面白いところですね」





 4月16日には、かなり濃いメンバーとの会が行われる。落語界の最終兵器、動物やアニメの人気キャラクターが高座で大暴れする新作派三遊亭白鳥。にこにこした人のよさそうなまん丸な顔で、バッサリ斬りまくる桃月庵白酒。そして最強の二つ目、笑顔の目が笑っていない(と見えることもある)春風亭一之輔。





「無茶苦茶な人(白鳥)と毒の強い2人ですからね(笑)。白酒兄さんは”丸くて悪い人”ね。一之輔さんは”見るからに悪い人”(笑)。で、白鳥兄さんは”ひとり無人の荒野を独走してる人”、以前はですよ。お客さんがポカーンとするような高座もありましたが、いつのころからか聞く人をガッチリつかまえて離さなくなりましたね。めちゃくちゃなようでいて用意周到。本当は1番悪い人かも(笑)」





(本紙・水野陽子)













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相模大野グリーン落語会





【日時】4月16日(土)13時30分開演 【会場】グリーンホール相模大野 【出演】三遊亭白鳥、桃月庵白酒、柳家三三、春風亭一之輔 【問い合わせ】045-212-5555