「いま、立ち上がること。つながること」トークショー開催

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 6月18日、都内の会場で、株式会社いろどり代表取締役社長・横石知二氏、NPO法人ファイブブリッジの山田康人氏(宮城県庁職員)、そして『ほぼ日刊イトイ新聞』の糸井重里氏によるトークショーが開催された。

 株式会社いろどりの横石社長は、徳島県上勝町で“葉っぱビジネス”を始め、地元の“おばちゃんたち”を組織する一方、都会から若者を呼び込むインターンシップで、地元の活性化を成し遂げた人物。ファイブブリッジの山田氏は、宮城県庁での勤務で培った人脈、地元の若手経営者らとの人脈などを生かし、東日本大震災で被害を受けた食品関連の中小企業を支援する「セキュリテ被災地応援ファンド」を立ち上げた中心人物の1人。『ほぼ日』の糸井氏を交えた今回のトークショーは、東日本大震災を巡って、“人と人がどうつながるか”をテーマに話が進んだ。

 糸井氏は冒頭、「リーマンショック以来、日本はこのままでいいのか、という不安をずっと抱えてきていた。そこに3.11があり、一歩を踏み出さなければならない時代になった」と語り、さらに「被災地支援のために何かしたいが、どうしていいか分からないという人も多いと思う。しかし、“何もない”という無力感からクリエイティブもスタートすると思う。そこまでハードルを下げて、考えてみたい」と被災地支援を考える突破口を示した。

「セキュリテ被災地応援ファンド」を手掛けた山田氏は、もともと自分が好きだった気仙沼のお店が復活してほしいという「すごく自分勝手な思い」で始めたこと、ツイッターでつぶやいた一言がきっかけでマイクロファンドにつながった経緯を語り、「1人じゃなくて、みんなでわいわい楽しく意見を出し合うことが大切。経験上、ある思いやアイデアを共感してくれる人が1人でもいれば、それはただの独りよがりから脱して、前に進んでいくことができると思う」と、“何かをすること”の秘けつを話した。これを受けて横石氏は、株式会社いろどりが、地元の高齢者に“生きる意義・意味”をもう一度提供することができたという経験から、「何かの役に立ちたい、認められたいという思いは誰でも持つもの。それを支えることができると物事はうまく回る。そのためには現場とかい離してはいけない」と語った。
糸井氏も「多分、自分が“主役”なのではなく“サブ”という中で、動機を見つけることがいいのではないか」と指摘。「自分が主役だと、期間は短いし、すぐにつまんなくなっちゃう。“ほめられたい”という思いはあるかもしれないけど、大拍手ばかりを、大きい通貨単位で求めると何もできなくなっちゃう。ごちゃごちゃしている時代での欲望の持ち方も問われているのかもしれない」と話し、セキュリテ被災地支援応援ファンドが、ファンドという極めて現代的なシステムでありながら、“応援したい”“信じる”という感情的なものに支えられているという有様を指して「今はお金を巡っても“信じる”“信じない”両方の価値観が柱になって、斑状になっている時代。境目の時代になっているのではないか」と話した。
 このトークショーは、糸井氏の言葉を引けば「何かの答えを出すものではない」。「今日ここに来た人たちは、多分、とてもスバらしい人たちだと思います。しかし、スバらしい人たちというのは欠点がひとつあって、スバらしくない人たちに腹を立ててしまうのがいけない。それを少しだけ肝に銘じていただけるとちょうどいい」と軽やかに指摘し、締めくくった。

 トークショーはニコニコ動画、Ustreamでも配信され、ニコ動ではおよそ1万人、Ustは800〜900人が視聴したという。株式会社いろどりのサイトはhttp://www.irodori.co.jp/、セキュリテ被災地応援ファンドはhttp://oen.securite.jp/、ほぼ日はhttp://www.1101.com/home.html。セキュリテ被災地応援ファンドは23日(木)に東京で説明会を開催する予定。