キックボクサー 日菜太

7・18ディファ有明で世界一の男ペトロシアンと対戦

日本の格闘技界が変容の時代を迎えている。ヨーロッパの打撃格闘技プロモーションである「イッツショータイム」の日本支部「イッツショータイムジャパン」が設立された。代表には “キックボクシングの神様”藤原敏男氏が就任。6月13日に行われた設立発表会見では「強い者が勝つ」という至ってシンプルなコンセプトを高らかに宣言した。今年は7月18日のREBELSのディファ有明大会から「カウントダウンシリーズ」と銘打って、提携団体にカードを提供していくのだが、その第一弾として、「日菜太vsジョルジオ・ペトロシアン」のビッグマッチが行われる。ペトロシアンといえば、K-1MAX70キロ級トーナメントで2009、2010年と連覇。現在70キロ級最強と言われる男。一方の日菜太は2010年にK-1デビュー以来、ポスト魔裟斗として日本のキック界を背負っていく逸材と誰もが認める存在だ。

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撮影・神谷渚

 多くのファンや関係者の視線がこの大一番に集まっている。 「最近キックボクシングとかK-1自体にスポットが当てられなくなっているなかで、こういう注目してもらえる舞台で活躍して、また地上波とかいろいろな人に見てもらえるような舞台を作っていけたらな、と思っています」

 責任重大だ。

「もし地上波が今後なくなってしまったら、今の10代の選手とか才能のある選手たちが、他の職業とかスポーツに行ってしまう可能性が凄く高いんです。キックが夢のないスポーツになってしまう。そうしないためにももっとやらなければいけないのかな、という気持ちもあります」

 70キロ級で最強の相手。会見では秘策の存在をほのめかした。

「向こうも凄く研究熱心なタイプなので、どういう展開になるのかはまだ予想がつかないんですけど、こういうふうになったらいいなっていうパターンが3つくらいあります」

 勝ちに徹するのもプロなら、お客さんを満足させるファイトを見せなきゃいけないというのもプロ。こういう難敵と戦うときには、その間で大変だ。

「いつも試合では “見せる”というよりも“自分の力をすべて出す”という気持ちで戦っているんです。いつも自分の力をすべて出し切って、それを周りの人が評価してくれている。だから今回もそれでいいと思います。変に見せるという意識なんて持たないで、自分の力を100%出せればいい」

 高校までサッカー。その後格闘技へ。キャリアはまだ6年。とても短い期間で頭角を現してきた。

「僕はあまりケンカとかしたことがないんで、他の人の試合で結構打たれたりしているのを見て “やめたいな”って思ったりもしないではないです(笑)。僕はそんなに殴られないんですけど、他の人の試合を見ると怖くなるんですよね」

 失神する人もいる。

「そういうのを見ると“うわ、ちょっとやりたくないな”〜とか(笑)」

 でも戦ってしまう。

「なんというか、僕はやるからには一番になりたいと思っていて、やってみたら面白かったというのがキックを続けている一番の理由なんです。あと、チームとして勝つんじゃなくて、個人として勝つというのが僕には良かったんだと思います。もちろん個人の種目といっても周りでいろいろな人がサポートしてくれての個人なんですけど。でも最終的には自分ですべてを決めてやらないと、結果を残せないじゃないですか。勝っても負けても全部自分のせい。周りのせいじゃないんで」

 対ペトロシアン。一番警戒しなければいけないところは?

「すべてにおいて一番レベルの高い選手ですが、何が飛び抜けているかといえば、相手の攻撃をもらわないところ。後はサウスポー同士というのがどう作用するのか、ということですね」

 そのなかでも勝ちパターンは3つくらいあるかな、と。

「うーん…。まあこういう言い方をするのもなんなんですけど、今回は判定でもどんな泥仕合になっても、ギリギリでもいいから勝ちたいですね」

 今回勝ったら、今後はイッツショータイムジャパンが主戦場になる?

「僕は闘える機会といい場所があって強い相手を用意してくれればどこへでも出たいと思っています。今回はたまたまイッツショータイムジャパンという場所であったわけで。まあ…一番はK-1に出たかったんですけど、僕にオファーは何もなかったんで…」

 左ミドルキックを主体とするスタイルは現在のK-1で活躍する選手たちと比べても個性的で試合内容もハイクオリティーなのだが…。

「まあホントにしようがないです。格闘技の世界とかスポーツの世界ってなんでもそうだと思うんですけど、強い者がルールを決めたりすることってあるじゃないですか。だから僕も強くなって、しっかり“こういうことはこうしよう”ということを言えるようになりたいです」

 勝利至上主義と観客論は常に議論の対象となる。

「その選手のキャラにもよると思うんですが、僕は結構本格派だと思うんで、小細工とかするタイプではないんです。逆にコスプレとかする人は、そうやって入場から盛り上げないといけない部分もあると思うんですね。あといろんな面白いことを言って試合前から盛り上げるというのも、そういう人の仕事だと思うんです」

 ふだん格闘技を見ない人に、キックの、日菜太の試合の魅力を教えてください。

「テレビ中継などが凄く少なくなっちゃって、格闘技自体が下がっている今、自分がいろんなところに出て、面白さとか、こんなに頑張っている選手もいることとかを見てもらいたいという思いもあって、今年に入ってからいろんな分野、雑誌などにも出させてもらっているんです。会場に足を運んでもらうことが一番いいとは思うんですけど、それがダメだったらインターネットとかDVDでもいいんで、一回見てもらって、こういう人がいるんだとか、こういうのをやってみようと思ってもらえたらいいなって思っています」

 細かい技術の攻防は初めての人はなかなか分からないかもしれないが、日菜太のミドルキックを見ればキックの凄さ、面白さは大概分かるに違いない。

「取りあえず音を聞くと、蹴りの凄さ、パンチの凄さが分かってもらえると思います。素人の人が一番分かりやすいのって、人がバタッと倒れたりするところだと思うんですが、K-1って最初からそういう分かりやすさがあったから人気が出たと思うんです。最近はだんだんレベルが上がってきて分かりにくくはなっているんですけど、それでも選手は2カ月くらいずーっと練習をして3分3Rにかける思いとかいろんなものを背負ってリングに上がっているので、1回見にきてもらえれば、ファンになってもらえる試合をする自信はあります」

(本紙・本吉英人)

東日本大震災チャリティーイベント“Stand up JAPAN!” REBELS×IT'S SHOWTIME 〜REBELS.8 & IT'S SHOWTIME JAPAN countdown-1〜

【日時】7月18日(月)15時30分本戦開始予定【会場】ディファ有明【問い合わせ】REBELSプロモーション(TEL 03-3397-0752) ※前売り完売。当日券は要問い合わせ。