小池百合子のMOTTAINAI 第12回「被災地のがれきの処理は「おたがいさま」の意識で」

小池百合子
 遅い。遅いです。

 何がというと、被災地のがれきの処理です。岩手、宮城、福島の被災3県から排出されたがれきの量は2300万トン。平時の廃棄物処理量の10〜20年分にあたります。

 阪神大震災のど真ん中にいた私は、兵庫県の近隣自治体ががれき処理に協力してくれたことに今も感謝しています。

 思い出が詰まった家々が破壊され、災害廃棄物という無機質な固まりとして積み上げられたさまを見るだけで、精神的にも重苦しいものです。新しい出発をするにしても、がれきが片付かないうちは復興段階に入れません。

 東日本の復興促進のためには広域処理は不可欠です。

 問題は福島第一原発事故の影響を受けたがれきを全国にバラ撒くのではないかという不安です。京都の大文字焼の際に起こった騒動が不安の拡散に輪をかけました。

 先日、政府は食品の安全基準を一般食品で100ベクレルとしました。廃棄物に含まれる放射性セシウムについて再利用の基準も100ベクレルとなっています。そもそも人体にはカリウムなどの放射性物質が含まれており、体重60�sの人なら7000ベクレルは保有しているとされています。

 だから、被災地からのがれきをなんでも受け入れていい、というわけではありません。放射性の高いがれきはそもそも「受けない」ことを明確にしなければなりません。

 大都市で起こった阪神大震災と、津波に洗われた東日本大震災ではがれきの種類も異なります。阪神ではコンクリート系が莫大な量を占め、一方、東日本では住宅の木材が多いといいます。おのずと処理方法も異なります。木材系はバイオマスとして火力発電の材料としても活用できますが、仕分けの手間などを考えると、コスト面での問題も生じます。

 それでも、電力不足という現実を考えると廃材を資源として活用する意味は大きいでしょう。

 また、被災地の自治体ごとに廃棄物の収集を優先したところと、最初から分別という段階を経たうえで、素材別に収集したところがあります。耳にする範囲では、遠回りでも分別から始めた自治体のほうが、結局は全体の処理が進んでいるようです。

 また、津波被害が大きかった地域は必然的に海に面していることから、広域処理では船を輸送に活用しやすくなります。地震で破壊した内陸部は鉄道による輸送となります。

 量、質の両面を考慮し、迅速に決断を下す。

 平時の知恵の蓄積がものをいいます。マイナスからの作業ですが、日本が「おたがいさま」の意識で協力し合いたいものです。

(自民党衆議院議員)