コミッショナーが「知らなかった」ですむ話なのか!?

 プロ野球を統括する日本野球機構(NPB)は11日、飛距離を抑えることなどのために平成23年から導入していた統一球を今季から変更していたことを明らかにした。同日、仙台市内で行われた日本プロ野球選手会との事務折衝で統一球について指摘を受け、認めた。

 下田邦夫事務局長は「規定の反発係数の範囲内に収めるため」と説明しているが、実態として今季は昨季より飛ぶ球を使っていることになる。NPBはこれまで「統一球の仕様は変更していない」としていた。

 下田氏の説明によると、昨年までの検査で反発力が基準よりも低い球が目立ったため、製造しているミズノ社に昨夏に修正を指示し、今季開幕から新球を使用していた。公式球の扱いはNPBに一任されていたため、12球団には報告していなかったが、加藤良三コミッショナーと相談しながら対応を進めていた。一方でNPBはミズノ社に対して、統一球に関する問い合わせには「全く変わっていない」と答えるよう指示していた、という。

 統一球は「国際試合での戸惑いをなくす」目的で、加藤良三コミッショナーの肝煎りで導入されたもので、本人のサインまでされている。その加藤コミッショナーは12日に記者会見を開き、変更の事実について「昨日までまったく知らなかった」としたうえで、「不祥事ではないだろうと思う。もし私がその事実を知っていたらその時点で公表しただろうし、すべきだったと思う。混乱を避けるためだったと思うが、結果として隠蔽していたのではないかという報道がなされたことは、私のガバナンスに対する監督不十分だった」と発言した。

 前日の下田氏との発言との食い違いに対しては「私は説明を受けた認識はない」とし、同席していた下田氏も「報告しなかった」と前日の発言を翻した。

 となると、変更は12球団にも報告せず、コミッショナーにも相談せずに事務局だけで決めたことになる。果たしてそんなことがあり得るのか? そもそもコミッショナーがその変更の事実を知らされていないとすれば、コミッショナーとして機能していないことになり、そちらも大問題であるのだが、コミッショナーにはその認識はないようだ。

 この問題を受け、NPBは14日、各球団への事情説明などのために東京都内で12球団代表者会議を開き、第三者機関を設置して問題を調べることを全会一致で決めた。今後、メンバーを選定し、7月10日のオーナー会議までに報告をまとめる。

 記者会見した加藤コミッショナーは第三者機関の調査について「今回の統一球の問題、それについての情報開示の問題、NPBのガバナンス(統治)の問題が検討に含まれる」と、組織の体質にも踏み込むものになると説明。改めて「ファンや選手、関係者に迷惑をかけたことについては大変な失態だった。猛省している」と謝罪したが、進退については「役目を全うしていく」と辞任を重ねて否定した。

 日本プロ野球選手会の嶋会長(楽天)は12日、仙台市内で記者会見し「何も知らされずに今までプレーしてきたのが寂しい。お互いに話し合って答えを出すことが球界にとって大事。知らなかったでは選手もファンも納得しない」とNPBの隠蔽体質を批判した。中畑監督(DeNA)も「トップの人がきちっと説明する必要がある。このままあやふやに終わってはいけない」と注文をつけた。

 飛距離の問題に矮小化すべきではないという声も。田中(楽天)は「国際試合に違和感なく入れるように(統一球を)始めたはず。ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)と日本の球は全然違った。しっかり変えた方がいい。論点がずれている」と疑問を投げかけ、秋山監督(ソフトバンク)は「(公表が)遅い。別に隠すことでもない」と隠蔽を問題視した。