なんてかわいいのだ。ああ、なんて、なんて、なんて。

『今日も一日きみを見てた』著者:角田光代

「四年前、ひょんなことから角田家にやってきたアメショーのトト。人生にはじめてかかわった猫は、慎重でさみしがり屋で、辛抱づよく、運動音痴—」。帯で紹介されているように、作家の角田光代による猫エッセーは、人生で初めて飼う事になった、猫との4年間を綴ったもの。


 きっかけは、2008年に漫画家の西原理恵子と仕事をした折、突然「うちの猫がこども産んだら、ほしい?」と聞かれたこと。飼うとしたら犬だろうと思っていた作者だが、旦那さんが大の猫好きだったこともあり、猫を飼うことを決意。トトと名付けられたその猫は来て3日もたつと、自然に角田家の猫になったという。そして「もっと躊躇とか、戸惑いとか、ないのだろうかと心配になるくらいである。そして私は、猫という生きものにいちいち驚かされることになる」と書く。その言葉通り、トトの日々の行動に驚き、感動し、時には涙する毎日が、愛に満ち溢れた文章で綴られる。


 人懐っこく、取材などで見知らぬ人が大勢詰めかけて、カメラを向けても平気。それどころか、カメラ目線でポーズを決めるトト。夫婦どちらかが留守のときは、留守側のテーブルマットの上に座り、2人ともがいるときは、真ん中の位置で香箱を組み、話の輪に加わっているトト。そんな発見をするたびに、作者は思う。「わたしのBC(Before Cat)とAC(After Cat)はまったく異なる世界になってしまった」と。もはやトトのいない生活は考えられないとう角田の愛がダダ漏れの極上猫エッセイは、すべての猫好きにおススメの一冊。



【定価】本体1100円(税別)【発行】KADOKAWA