【インタビュー】cooking songs、フリージャズとポップスと…料理が融合?

「渋さ知らズ」のメンバーであり、自ら主宰するインストバンド「DOBU SOUND SYSTEM」といったフリージャズや即興音楽シーンを中心に活動する高橋保行と「片想い」「ホライズン山下宅配便」といったバンドのメンバーとしていわゆるポップスの分野で活動する伴瀬朝彦が中心となって2016年に結成したフリージャズ・ポップス・バンド「cooking songs」の2nd album『Curry Rice』が6月27日にリリースされた。


 高橋、伴瀬、そしてベースを担当するケイタイモ(WUJA BIN BIN、ex.BEAT CRUSADERS)を加えた3人に話を聞いた。



cooking songsのケイタイモ、高橋保行、伴瀬朝彦(左から)(撮影・蔦野裕)

高橋保行、伴瀬朝彦、ケイタイモが「cooking songs」を緩~く語る

 cooking songsはフリージャズ+ポップスというコンセプトのバンドなのだが、実はここにもうひとつ「料理」というキーワードも加わり、「『音楽』と『料理』をお届けするフリージャズ・ポップス・バンド」というのが一番彼らを表すにふさわしいキャッチフレーズとなる。


 ライブで料理を出しているという。なぜ?

伴瀬「もともとは“cooking song”という企画から始まっているんです。2人で料理を出して演奏をする緩い会合をしようということでやっさん(高橋)が僕を誘ったんです」

高橋「バンドの前はイベントとしてやっていました」

伴瀬「で、2人で始めて。最初は2人で緩~く長~くみたいなつもりで始めたんですけど、やっさんがどんどん人を集めちゃってバンドになっていったという感じ(笑)」

高橋「めっちゃ飽きっぽいんで(笑)」

ケイタイモ「ロールプレイングゲームのように人が集まってましたね」

伴瀬「それで企画名に複数形のsをつけて、cooking songsになった。企画が始まったのが4年前でファーストアルバムを出したのが2年前。2016年の11月」


 料理は2人で? 高橋は元イタリアンのシェフなんだとか?

伴瀬「やっさんは元イタリアンのシェフなんだけど、僕はもともとバイト仲間なんです」

高橋「居酒屋のね」

伴瀬「僕が20歳くらい。やっさんが26歳くらいの時」

ケイタイモ「それってホールで働いてたの?」

伴瀬「調理場です」

ケイタイモ「やすがホールにいたら…」

高橋「それ、無理でしょ(笑)」


 それは何年前の話?

伴瀬「僕が今39歳なので、約20年前」


 その時からミュージシャンとしてのつきあい?

伴瀬「その時、僕はミュージシャンではなかったので」

ケイタイモ「へー」

高橋「大学生だよ」

伴瀬「ギターを弾き始めたくらい。やっさんにいろいろな音楽を教えてもらって、染まっていったというところはあります」

ケイタイモ「歌も? 歌は歌ってなかったの?」

伴瀬「歌は高校の文化祭で…ボウイをやったとかそんなレベル(笑)」

高橋「ボウイとかジギーは絶対にやるでしょ」

伴瀬「ボウイ世代。ユニコーンとかボウイとか?」

高橋「いや、ユニコーンはやらなかった」

ケイタイモ「俺らはユニコーンやったよ」

高橋「あ、そう?」

伴瀬「2人は同世代じゃなかったでしたっけ?」

高橋「いや、一緒だけど。俺たちはユニコーンはやらなかったな。千葉だからかな…」


 イタリアンのシェフをやっていたのは?

高橋「僕はその居酒屋の前に千葉にある店で5~6年やってた」


 ミュージシャンをしながら?

高橋「楽器をやり始めたのは、コックを始めて3年くらい経ってからかな。DJとかもやっていました。ベースを弾いていて、バンドがなくなって。コックやりながらDJをやったりしていました」


 ケイタイモは? 後にバンド入り。

ケイタイモ「もともと何で知り合ったんだっけ?」

高橋「結構前だったんだけどね。多分最初はどっかのマッサージ屋だと思うんだよね」

ケイタイモ「え? マッサージ屋?」

高橋「祖師ヶ谷大蔵かどっかの」

ケイタ「おお(笑)」

高橋「池澤がライブやっててさ。それを見に行った時が初めてだと思う」

ケイタイモ「池澤というのは今cooking songsでドラムを叩いている奴。俺が別でやっているバンドのドラムなんです。それで会いに行った時に…」

高橋「いたんだよ(笑)」

ケイタイモ「でも冷静に考えたら一番最初は友人の結婚パーティーに渋さ知らズが出ていて、その時に会ってる。そのときの印象は飲んだくれのドブ親父みたいな感じ(笑)」

高橋「今よりひどいな…。俺、だんだん良くなっているんだよ」

ケイタイモ「分かったよ…(笑)。まあ、やすはプライベートはしっちゃかめっちゃかだからね」

高橋「そうだよ、そのときは寂しいから知り合いのライブ行きまくってたの」

伴瀬「イベントを始めたころに寂しいことがあったから、ホントにしみる歌ばっかりできちゃった」

ケイタイモ「歌詞がね、ホントに…」

伴瀬「だから申し訳ないけど、バンド的には良かった(笑)」


 cooking songsというバンド名と今回のアルバムのポップなイラストからはそんな悲しいことは想像できない。

ケイタイモ「確かに」

高橋「そう?」

ケイタイモ「これはもう、その悲しい感じ、出していこう」

高橋「もう出ないんだ。慣れちゃって(笑)」



常にリラックス(撮影・蔦野裕)

客席もジャズ的なノリとポップス的なノリが融合

 今回の「カレーライス」というタイトルはどこから?

伴瀬「僕の知り合いの奥野俊作という映画監督が『カレーライス』という作品を今年の頭に作ったのですが、映画のタイトルがすでに決まっている段階で僕に音楽制作を頼んできたので、そのままのタイトルで『カレーライス』を作ったんです。そして“よければ録音もcooking songsでお願いします” というありがたいお話をいただいたので、cooking songsで演奏してお返しした。ちょうどセカンドアルバムをどうしようかというときだったので、それに乗っかってしまえということになったんです」

高橋「エンケンさんが亡くなったときでもあったんだよね」


 バンドのウェブサイトのライブリポートのページを見ると、演奏の写真に混じってとても美味しそうな料理の写真も載っている。

高橋「荻窪にあるベルベットサンでは毎月、俺と伴瀬でイベントの『cooking song』をやっているんです。別のライブハウスなんかではプラス500円でプレートにして料理を出したり、CD購入のオマケで料理をあげたりとかしています」


 食と音楽をこよなく愛しているという感じがする。

高橋「両方好き。他に趣味がないですから」


 料理も食べられるとなると、客層も普通のライブとは違いそう。

ケイタイモ「俺はファーストアルバムの直前くらいにバンドに入ったんだけど、お昼のイベントというのはあまりやったことがなかったんで新鮮だった。まず一つは、自分の子供が幼稚園の時だったんで、お母さんたちが来てくれる土壌があるんだなって思いました。今まで俺が活動してきたのが基本、夜なんで、そうなってくるとどうしても若いお客さんしかいない。だけどこのバンドに入って、子供のいるお母さんやお父さんに訴えかけるチャンスみたいなものが結構転がっていたんだなって気づきました。そこに食を付け足すことによってもっと門戸が広がるじゃないですか。なるほど、確かにこれは面白いなとは思いましたね」

伴瀬「昼にやると子連れの方はたくさん来てくれますね。さすがに夜は子連れは来ないですけど」

ケイタイモ「ベルベットサンでやっているバンドということで、他のライブハウスでやる時でもジャズ方面のお客さんも来るよね」

伴瀬「結構まぜこぜになっている感はしますね。女性のお客さんも多いし」

高橋「だから大丈夫ってちょっと思っている。俺はずっとフリージャズをやっていたんだけど、俺たちより音楽に詳しい頑固なおじさんとかしか来ないことが多いんですよ」

伴瀬「この前、新宿のピットインでライブをしたときに、お客さんのノリとしてジャズ的なノリとポップス的なノリが融合してる感じがあった。例えば、ソロ終わりに拍手がある。それはジャズ的なマナー。だけど、マナーばかりともいえない感じになっている。演歌みたいに歌終わりにも拍手が鳴る。そういうものが全部融合されちゃって、至るところで拍手が起こるみたいな感じ」


 ここでプロデューサーのノイズ中村氏が乱入。

ノイズ「それこそ本当のジャズの形だと思うんですよ。本場では本当に気持ちがいいから拍手をしていたのが、日本ではソロが終わったら拍手するというのが定例になってしまった。そうなったものをcooking songsはもう一度、気持ちが良くなったから叩くというように戻した。例えばサックスの上運天さんがいいソロをしたら“うわー”、ベースのケイタイモさんがいいソロをしたら“うわー”、伴瀬さんがいい歌を歌ったら“うわー”ってなる」

高橋「俺は?」

ノイズ「なんかいいところありましたっけ?(笑)」

伴瀬「それがなぜかピットインで起こる。ほかの箱ではなくピットインでそういうことが起きる状態になっている」

ノイズ「ピットインで起こるのは、あそこが50年、妥協なくジャズのファンに本物のジャズを見せて歴史を作ってきたから。だからあそこには本当にいい客がいるってこと」

伴瀬「ピットインに来たことがなかったポップス界隈のお客さんが“一度来たかった”って言っていましたね」

ノイズ「ジャズのお客さんはソロ終わりに拍手をするのが基本なんだけど、ジャズマナーを知らないポップスのお客さんはいいと思ったら素直に拍手するから、客層がいろいろ混ざりあうことでジャズ側のお客さんも気づくところが出てくる」

ケイタイモ「ここで拍手してもいいんだなって」

伴瀬「そういう状態がすごくいいと思う」


 いろいろな意味で新しいバンドの在り方を感じる。

ケイタイモ「大きな話になっちゃうけど、バンドが売れるのって大変じゃないですか。ひと昔前は音楽だけやっていれば良かったんだけど、今はそういう時代じゃない。餅は餅屋の時代は終わった。だからいろいろ考えなければいけないし、逆にそうすればいろいろ面白いことができるなって気がする」

高橋「続けるために音楽以外にも何かをする。それはやりたいからなんだけど」

ケイタイモ「料理があることで、お客さんのほうも選択肢が増える」

高橋「でも、それを許せるようになったのは年を取ってからだよ」

ケイタイモ「プライドが邪魔する部分があるんだよね。分かる」

高橋「意外に許せねえんだよな、若い時は」

ケイタイモ「そうも言っていられない時代だからね」


 音楽にもそういう波がやってきた?

高橋「想像力がマックスに来ちゃったんだよ、多分。音楽でもアートでも一本やりだと違うことが想像できなくなってくる。今は多分そういう時代。2つのことをやって、そこに何かのフラストレーションでもパワーでもいいからぶつけるみたいな。まあ、俺はアートという言い方は嫌いなんだけど」

ケイタイモ「お前と初めてユナイトした気分(笑)」

高橋「たまに言ってるよ(笑)」


 ライブの写真などを見ていると、すごく楽な雰囲気が出ている。大人のバンドといった感じ。

高橋「じじいってことすか?(笑)」

ケイタイモ「俺も意外に大人のバンドだなって、今日ここで思いました」

伴瀬「やっさんはギャグを言おうと思った瞬間に一気につまんなくなる(笑)。そのまま素直にしゃべれば一番面白いのに、サービス精神を見せたところで残念ながら途端につまんなくなる」

ケイタイモ「考えちゃうと駄目だね」

ノイズ「サービス業に向いていない」

高橋「基本的にサービスする気ないからな」

ケイタイモ「今から面白いこと言うぞ感がすごく出てるの」

高橋「マジで? いつもお前らに言われるんだけど、俺全然分からない(笑)」

伴瀬「ホントそうだから」


 緩いという意味でもなく、楽しんでいる。押し付けがない。

高橋「押し付けたらバンドメンバー辞めちゃうもん。俺、すげえ気にしてるからね」

ケイタイモ「俺は昔のバンドでメジャーとか経験しているんですね。で、ある程度の実績も残したけど、やっぱ『売れる=幸せ』じゃない。それは言い切れる」

高橋「マジか」

ケイタイモ「ホントに自分の精神衛生上いいものでないと、“俺、なにやってるんだろう”って思うよ」


 ちなみにケイタイモはかつてBEAT CRUSADERSで活躍。現在はこのcooking songsとは別に自身のバンド「WUJA BIN BIN」でも活動中。


『売れる=幸せ』じゃないというのは経済の中に組み込まれていくから自分の意思とか関係のないものもやらなければいけなくなるとか?

ケイタイモ「例えばですけどね。売れているバンドの中にも好き勝手できている奴らもいるんですけど、音楽以外の悩みが多かった」



公園ではもっとリラックス(撮影・蔦野裕)

8月18日の富山からレコ発ライブスタート

 フリージャズとポップスというものの相性というのは?

高橋「フリージャズの世界は意外に人をあきらめない性質の人が多い気はする」

ケイタイモ「だからお前が今まで生き残ってんだよ」

高橋「それはあるな(笑)」

ノイズ「そんななかで一番難しいポップスと融合させようとしているしね」

高橋「融合というか、ただ歌ものを作りたかったんだよ」

ケイタイモ「この2人が作る曲はやっぱりすごいですよ」

高橋「やった。褒めてもらった」


 なぜ歌ものを?

高橋「歌いたかったんですよ、子供の歌を。一曲だけ歌いたくて。そもそも泉邦宏さんとやっていた時に、“歌ものもいいな”って思った。曲は作っているんだけど歌えないから誰かに歌わせようと思って伴瀬を呼んだんですよ。俺の曲をこいつに歌ってもらおうと思っていた」

ケイタイモ「そういう成り立ちなんだね」

高橋「でも1枚目の時はやっつけでもいいからやんねえとやべえって思ってた。せっかくいいメンバー入れたんだからって」

ケイタイモ「ん? どういうこと?」

高橋「やっつけでもいいからとにかく1枚目を録れば、バンドになるじゃん」

伴瀬「とにかく形にって!」

ノイズ「この考え方が極めてジャズ的。ポップスは熟考に熟考を重ねて、何度も録りなおして何日もかけて、いくらでもお金をかける時代ではないけれども、すごく考えたうえで作品を出すんだけど、ジャズって思い付きでぱっと作っちゃう。“とりあえず録っちゃえ。記録として出しちゃえ。”って。そういう感覚」

高橋「1枚目は後ろはなんにも意識していなかったから。特にピアノとギターは。まあ適当にやってれば埋まるべ、って(笑)。今回のアルバムって、おれ的には超ポップなんだけど、あまりがさつじゃないと思う。そこは学習したんだよ」

ケイタイモ「物理的にいうと、ファーストアルバムの時は連絡不行き届きというか、そういうところがあって…」

高橋「取りあえず来てよ、って」

ケイタイモ「いろいろ用意の悪さが露呈してドタバタだったんです。で、今回はちゃんと1枚目の反省を踏まえて、下準備はたくさんしたよね」

高橋「やったやった。ライブでもやっていたし」

ケイタイモ「レコーディングの当日、俺は海外から帰ってきて成田から直で行ったんです。やっているうちにアガってきて“躁”になっちゃって、家に帰ってからも眠れなくなっちゃった。手前味噌ですけど、すげえものができてるなって感じがしました」

高橋「相当すごいのできちゃったよ(笑)」


 この夏はレコ発ライブで各地を回る。

ノイズ「まず8月18日に富山に行ってイベントやります。東京のアンダーグラウンドシーンをよく呼んでいるオーガナイザーがいて、その方は基本ヒップホップやノイズシーンなんかをブックしてるんですが、cooking songsを快く呼んでくれました。対バンには”優河”さん。そして名古屋に行って、“Gofish”という名古屋の顔的なシンガーソングライターが対バンです。そこではGofishと似てない屋ヒグ〜さんとカレー対決もやります」


 どんなカレー?

高橋「分かんないです。音楽と一緒で、だいたい迷っているんですけど」

ケイタイモ「へー、その時になってみないと、なんだ」


 カレーもいろいろなレパートリーが?

高橋「全然ないです」

伴瀬「意外とインド的なカレーは作らないですよね」

ノイズ「僕、カレーが大好きなんですけど、やっさんの作った欧風カレーが一番美味しかったなぁ。5~6年前くらいに作ったやつ。欧風カレーでは、あれがいまのところ人生ナンバーワン」

高橋「あれジャワカレーめっちゃ使ったけど(笑)」

ノイズ「名古屋から帰ってきて8月22日に渋谷WWWでワンマンがあります。アルバムにゲストボーカルで参加してもらったmmm(ミーマイモー)が、ゲストで来てくれます。そして、やけのはらさんとceroの高城晶平さんがDJで参加してくれます。カレーの出店には、いま人気急上昇中の高円寺にある”ネグラ 妄想インドカレー”が来てくれて、やっさんとあいがけカレーのコラボレーションをします」

高橋「これ集客どうするの?」

ノイズ「がんばるんですよ」

高橋「超胃が痛いんだから、こういうの」

ノイズ「そのあと、8月24日に広島ヲルガン座にて”中ムラサトコ×タカダアキコ×Ren”と対バンし、8月25日に大阪CONPASSにて wanna eat Curry というカレーと音楽のイベントとコラボ企画をやります!対バンには”THE YAKETY YAKS” 、大阪の有名カレー店がズラリ出店!こちらにもネグラさん参加してくれます」


 ここにもカレーは出すの?

高橋「出します」

ノイズ「8月26日のツアーファイナルは、知多市 花とふれあい公園で開催される音楽フェス「UMEJAM 2018」へ出演します。出演者は、outside yoshino、永原真夏+SUPER GOOD BAND、OBRIGARRD ほか。と入場無料とは思えないラインナップなので県外からもぜひ遊びに来てもらいたいです」

伴瀬「どの公演も良い企画ばかりなので、近郊にお住まいの皆さんご来場いただけましたらうれしいです」


 2nd アルバム『Curry Rice』には特典としてマグネットシールがついてくる。これにはレシピと音源のQRコードが載っていて、高橋保行がイベントで提供している料理のレシピなどを公開。音楽のほうは高橋と伴瀬が日々作っている音源が気まぐれに更新される。2nd アルバムの特典ではあるが期間は決めずに緩く続けていくという。マグネットなので、冷蔵庫にでも貼って、cooking songsの料理と音楽で自宅のキッチンをライブハウスにしてほしいということらしい。またレシピサイトの「クックパッド」にてレシピを公開中なので、料理から音楽に!という新しいパターンの出会いを経験できるかも。(本紙・本吉英人)



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