浅倉カンナがRENAを返り討ち。名実ともにRIZIN女王に君臨【7・29 RIZIN.11】

浅倉も果敢に打撃で勝負(撮影・鬼束麻里)

日本人の女子同士で初のメーンにふさわしい名勝負を展開
「RIZIN.11」(7月29日、埼玉・さいたまスーパーアリーナ)のメーンで行われた「浅倉カンナvs RENA」の一戦は浅倉が3-0の判定で勝利を収めた。大晦日に行われた「女子スーパーアトム級GP」決勝と合わせ浅倉はRENAに2連勝。名実ともにRIZIN女子のエースの座に就いた。

 試合は打撃のRENAとグラウンドの浅倉という図式は変わらないものの、RENAがグラウンドでの対応力が飛躍的にアップ。浅倉もRENAの打撃にひるむことなく対峙するなど、大晦日からともに進化。日本人の女子同士で初めてのメーンという大役にふさわしい名勝負が繰り広げられた。

 試合は何度もタックルからテイクダウンに成功し、腕十字固め、三角絞めと一本を取りに行く動きを見せた浅倉をジャッジ3者が支持した。しかしRENAはテイクダウンを許し、腕を取られても慌てることなく冷静に対処。下からのヒジで反撃するなど最後まで浅倉を苦しめた。

RENAは浅倉の三角絞めをしのぎ切る。グラウンドへの対応力は格段にアップ(撮影・鬼束麻里)

浅倉は「次こそしっかり断りたい」と3度目は明確に拒否
 浅倉は勝利者インタビューで「自分が強くなるスピードよりもRENAさんが強くなるスピードのほうがかなり早くて、今回の試合は凄い焦りました。本当に今回の試合はしっかり気持ちを切り替えてできたと思います。RENAさんはあこがれの選手ですが、超えなきゃいけない選手で、今回とても複雑だったのですが、勝ったからにはもっと上の選手とやりあえるように壁を乗り越えていきたいと思います」とコメントした。

 試合後の会見では「RENAさんの怖さが半端なくて、怖くて仕方がなかった。勝てて良かった。テイクダウンを取れたこともあまり覚えていなくて、やられたことばかり覚えている。自分が強くなるスピードよりRENAさんが強くなるスピードのほうが今回は速くては初めて試合中に焦った」と試合を振り返った。会見場には足をやや引きずって登場したのだが「かなり痛い。右足に足の跡がついているくらい。インローが効いた」と話した。勝負の決め手となったタックルについては「タックルは自信を持っていくことが一番だと思っていた。何度か切られたがそれでも倒せたので良かった」と話した。

 一方RENAは「やってきたことはすべて出し切れた。負けてしまったので悔しい部分はあるが、成長は感じられた。前回よりは良かった」などと試合を振り返り、今後については「ちょっと休みたい。そこから第2章があるのかないのか判断したい」と話した。

 結果として浅倉の2連勝となったが、この日の対戦ではRENAが着実にその差を詰めたことから3度目の対戦にも興味は移るが、浅倉は「もう本当に次こそしっかり断りたい。今回も自分の中で複雑な部分はあった」と明確に拒否の姿勢を見せた。RENAは「すぐにはできないと思うが、私はすごく成長しているので、受けてくれるのなら次は負けないぞ、と思う。でも私もいろいろな選手と試合をしたいし、海外にも挑戦したいという気持ちもあるので浅倉選手にこだわらず、今後どうするかは休んでからじゃないと切り替えはできない。そういうことも考えていったん格闘技から離れようと思っている」などと話した。

下からの石岡の腕十字に冷静に対処する山本(撮影・鬼束麻里)

山本美憂が石岡沙織に判定勝ち
 この日は女子スーパーアトム級の「石岡沙織vs山本美憂」が行われ、山本が2-1の判定で勝利を収めた。

 1R開始早々に石岡の右フックで山本が尻もち、立ち上がった山本の左ストレートで石岡がダウン。短期決戦を予想させたが、ここから2人のこの試合にかける思いが試合をもつれさせる。

 昨年10月にアイリーン・リベラに敗れた試合とは見違える動きを見せる山本は打撃からスムーズなタックルを見せる。グラウンドで上を取り、パウンドを落とすが石岡は下からラバーガードで山本をコントロール。しのいだ山本はサイドを取ってパウンド、そしてヒザを顔面に叩き込むなど反撃も、石岡は下から腕十字を狙うなど互いの持てる技術を出し合い、一進一退の攻防が続く。

 2Rには石岡が柔道仕込みの払い腰できれいに投げ切るも山本はしのいで逆に上を取る。下になってはラバーガードでコントロールする石岡。山本は立ち上がって顔面を踏みつけるなどえげつない攻撃を見せる。石岡はラウンド終了間際にバックチョークを狙うが時間切れ。

 最終3R、石岡は打撃で追い込み組みついては引き込みまたもラバーガードで下からコントロール。左腕を十字にとらえたものの、山本は顔面にカカト蹴りを入れ、しのぐ。ブレイクがかかり、残り時間1分でスタンドからの展開に。ともに最後まで攻め込むが一本を取ることができずゴングとなった。

 試合が終わると2人は抱き合い、長く言葉を交わすと石岡は涙を見せた。

 山本は試合後のマイクで「今までやってきたことが出せた、やっとMMAファイターらしい試合ができたかなと思います」と話した。

試合後、健闘を称え合う2人(撮影・鬼束麻里)

“ママ同士”にしかできない試合
 石岡は試合後の会見で「敗因は最初の一発だと思う。それが効いてしまって力が入らず三角絞めなども極めきれなかった」と振り返った。

 今後については「空っぽ。今は正直、何も考えられない。与えられた役割を必死にこなしていきたい」と答えた。
 
 試合後の涙については「勝っても負けても苦しかった。終わった時に美憂選手に“勝っちゃってゴメンね”と言われた。互いにどういう気持ちで練習しているかが分かるので…。子供に我慢をさせたり、それでも勝ちたいと思ってやっていて…。終わった後は(私は)“おめでとうございます”って言った。自分が勝っても泣いただろうし、負けても泣いたと思う」などと話した。

 山本は試合後のやり取りについては「試合前、私は自分がママであることはあまり言わなかったが終わってみると、ぐっとくるものがあった。石岡選手が試合前に “面白い試合ができればいい”と言ってくれたが、私たち2人はそれができたと思う。だから本当に石岡選手には“ありがとう”と言いたい」と話した。

「RIZIN.11」(7月29日、埼玉・さいたまスーパーアリーナ)

◆第10試合
[RIZIN 女子 MMA ルール : 5分3R/インターバル60秒(49.0kg)※肘あり]
◯浅倉カンナ(判定3-0)RENA●

◆第9試合
[RIZIN MMA ルール:1R 10分/2R 5分/インターバル60秒(60.0kg)※肘あり]
◯堀口恭司(判定3-0)扇久保博正●

◆第8試合
[RIZIN MMA ルール:1R10分/2R 5分/インターバル60秒(93.0kg)※肘あり]
◯イリー・プロハースカ(1R1分41秒、TKO)ブルーノ・カッペローザ●

◆第7試合
[RIZIN MMA 特別ルール:5分3R/インターバル60秒(73.0kg)]
◯五味隆典(1R2分33秒、KO)メルビン・ギラード●

◆第6試合
[RIZIN MMA 特別ルール:5分3R/インターバル60秒(70.0kg) ※肘あり]
●北岡悟(1R1分30秒、KO)ディエゴ・ブランダオン◯

◆第5試合
[RIZIN MMA 特別ルール:5分3R/インターバル60秒(無差別級)]
●シビサイ頌真(判定0-3)ボルドプレフ・ウヌルジャルガル◯

◆第4試合
[RIZINキックボクシングルール(70.0kg):3分3R/インターバル60秒]
◯海人(2R1分22秒、KO)ウザ強ヨシヤ●

◆第3試合
[RIZIN 女子 MMA ルール:5分3R/インターバル60秒(49.0kg)]
●石岡沙織(判定1-2)山本美憂◯

◆第2試合
[RIZIN MMA 特別ルール:5分3R/インターバル60秒(59.0kg)]
●オニボウズ(1R1分6秒、KO)トップノイ・タイガームエタイ◯

◆第1試合
[RIZIN MMA 特別ルール:5分3R/インターバル60秒(70.0kg) ※肘あり]
◯ダロン・クルックシャンク(3R4分13秒、TKO=レフェリーストップ)トム・サントス●