【2018年をぶった斬り!】イギリス人コメディアンBJ Fox「カメ止めと桜田大臣ネタは海外にもウケる」

あなたはどんなニュースを思い浮かべる!? 平成最後の重大ニュースを各界の識者が振り返る

 そろそろ2018年を振り返る時期となってきた。今年もいろいろな出来事があった。海外では南北首脳会談、米朝首脳会談と画期的な出来事が続いたが、国内ではモリカケ問題で安倍晋三首相が窮地に立たされながらも、自民党の総裁選で3選を果たすなどどうにもよく分からない状況が続いている。スポーツ界に目を移すと冬季五輪、サッカーW杯とビッグイベントで日本選手が大活躍したものの、国内では各競技で不祥事が相次いだ。そんな2018年を識者に振り返ってもらった。

BJ Fox(撮影・蔦野裕)

イギリス人コメディアンBJ Fox「カメ止めと桜田大臣ネタは海外にもウケる」

「今年はカンヌ国際映画祭で『万引き家族』がパルムドールを受賞するなど日本の映画界にも良い話題がありましたね。僕も日本映画がカンヌで最高賞を取るなんてすごいと思って見に行きました。最初どんな映画なのかまったく知らなかったから、タイトルを見てファミリービジネスの話かと思って、これがアメリカやイギリスだったら麻薬とか人身売買になるけど日本の場合は万引きなんだ…と思ってました(笑)。実際はとても考えさせられる映画でしたね。あとはやっぱり『カメラを止めるな!』の大ヒット。僕もちょうど『Home Sweet Tokyo シーズン2』の撮影中だったので撮影現場のドタバタにはすごく共感できたし、コメディーとしても国や言葉に関係なく共感できる笑いを描いていて楽しかった。僕はよく日本映画を見に行くんですけど、思えばあまり日本のコメディー映画を見たことが無くて。『シン・ゴジラ』の英語のシーンは面白かったけど、あれはコメディーじゃないし…。コメディーというジャンルは一番大変なんですよね。笑いを取れなかったら即、失敗と言われちゃう。僕もお笑いライブですべることが多いからよく分かるんです(泣)。最初は、外国人が出てきて日本語でネタをするから…という日本人の優しさで笑ってくれるんだけど。最初の2分だけね(笑)。とはいえ僕も別に外国人がお笑いをやる珍しさで笑ってもらいたいわけじゃないし、コメディアンとして長くやっていきたいから本音で笑えるお笑いを目指しています。基本的に毎週、日本語のライブと英語のライブをやっているんですが、疲れるのは英語のライブ(笑)。なぜかというと日本在住の外国人と海外観光客の求める笑いが全然違うんです。よく客席から“お題”をもらって即興ネタをするんですけど、観光客が投げるネタといったら毎回スシ、カラオケ、ウォシュレット…(笑)」

 今年も熱かった日本のインバウンド需要。その陰でこんな苦労をしているコメディアンがいたとは…。

「東京で暮らしている外国人は、日本の労働環境ネタには笑うけど観光客向けのネタには“今さらそれかよ”って感じになるし、僕の英語についてこれない日本人が隅っこでさみしそうにしているし…。僕の印象だと思ったより英語を話せる日本人は多いですけどね、とくに東京は。ただ容赦なく半端ないイギリス人の英語コメディーについてこれるかはまた別なので、チャレンジしに来てもらうのも良いかもしれません(笑)」

 ブラックジョークも得意なBJ Fox。社会や時事ネタまでを取り入れる日本語でのお笑いライブも大人気。

「日本のお客さん向けには、時事ネタもウケるのでよくやります。最近ネタになりそうなのは、サイバーセキュリティー担当の桜田義孝大臣がUSBを知らなかったという話かな。あれは海外でも話題になりました。“穴に刺すんですよね”って…すでにいろんなネタが作られているでしょうね(笑)。イギリスではコメディアンが政治家をネタにするのは鉄板なんです。政治家がトラブルを起こしても彼らはそれをネタに派閥争いをするだけで、本質的な問題解決なんてどうでもいいんじゃないかと思うことがあります。イギリスなんてEU離脱を決めた人たちが今ほとんど党にいなくなっていますからね(笑)。僕らはもっと国の政治や社会のことに関心を持ったほうがいいし、笑いのネタにすれば分かりやすく、自分たちの社会のことだという実感も沸く。僕も、日本の時事ネタにもどんどん挑戦していきたいですね、炎上は怖いけど(笑)。夢はお笑いの殿堂エジンバラ・フェスティバルの単独ステージです!」。

BJ Fox イギリス出身。人気ゲーム『グランド・セフト・オート』のアジア担当としてシンガポールに5年勤務後、日本へ転勤。その後、脱サラしコメディアンや俳優、MCなどとして活躍中。2017年に企画・脚本に携わり、主演したコメディードラマ「Home Sweet Tokyo」(共演・木村佳乃、渡辺哲)がNHK総合にて放映。2018年12月からシーズン2放送。