武尊「MVPはK-1の中心で主役を取る人。取れてうれしい」

「K-1 AWARDS 2018」で悲願のMVP獲得

 K-1の年間表彰である「K-1 AWARDS 2018」が2月1日、東京都内で開催され、昨年、3階級制覇を成し遂げたスーパー・フェザー級王者の武尊がMVPに輝いた。表彰式を終えたばかりの武尊に話を聞いた。

武尊(撮影・蔦野裕)

 MVP受賞おめでとうございます。まずは率直な感想を。

「去年は取れなくて悔しかった。MVPというのはK-1の中心で主役を取る人だと思うので、それが取れてうれしいし、ホッとしました」

 今年はさすがにMVPを受賞できるという手応えはあったのでは?

「今年取れなかったらすねてやろうと思っていました(笑)。今年が無理ならいつもらえるんだろうって」

 昨年は最高試合賞。その時に「来年はMVPを取る」と宣言した。「取りたい」という願望ではなく、「取らなければいけない」という義務感みたいなものになっていたのでは?

「そうですね。取りたいというよりは取らないといけない。取らないと“自分がK-1の中心”とか“K-1を引っ張っていく”とか言えないなって思っていたので、本当にそうですね。取らなきゃ!って感じでした」

 実はAWARDSができて余計なプレッシャーが一つ増えてしまったのでは?

「そうですね。でもいいモチベーションにもなっていますから」

 2018年の一番印象的だった出来事は?

「やっぱり3階級制覇ですね。60kgのスーパー・フェザー級という階級は自分の中でも挑戦でしたので。今もまだ適正とはいえない階級なんですけど、そこでの一発目がトーナメントというのは自分の中ですごい挑戦でした」

 当初対戦相手だった大雅の欠場で直前になってのカード変更。激動の1年を象徴するような1年の始まりだった。

「あれがあったからトーナメントという形になったので、それが火をつけてくれたというところはあるかもしれませんね。あれのせいでK-1のイメージが悪くなったり、初めてのメインアリーナ大会という盛り上がりに水を差されてしまうというのは許せなかったので、元のカードより盛り上げてやろうという気持ちはありました」

 3月10日に開催される「K-1 WORLD GP 2019 JAPAN 〜K’FESTA.2〜」(さいたまスーパーアリーナ メインアリーナ)ではラジャダムナンスタジアムの現役フェザー級王者のヨーキッサダー・ユッタチョンブリーと対戦する。ヨーキッサダーは会見でも自信満々だった。なにかオーラとか雰囲気のようなものは感じた?

「ラジャダムナンの王者って並大抵のことではなれるものではない。その王座に就いているということはそれなりの自信もあるんだろうと思います。ムエタイの選手は日本人に対しては“対日本人” という特別な意識があると思う。逆に日本人選手もムエタイのチャンピオンに対しては“打倒ムエタイ”という意識がある。でもそれはなかなか果たせていないからずっとそういう意識を持っているのかなと思うので、僕が今回、そのイメージを払拭したいです」

撮影・蔦野裕

3・10「K’FESTA.2」で現役ラジャ王者と対戦
「そこを越えれば“K-1最高”ということを証明できる」

 ムエタイの選手とは2016年にヨーセンチャイ・ソー.ソーピットと戦っているが、実績が違う。

「ヨーセンチャイ選手もムエタイでベルトを取った選手なんですけど、それよりも格が上のベルトを持っている選手ですから。試練ではあるんですけど、僕からしたら実現してうれしい試合。そこを越えれば“K-1最高”ということを証明できると思うので」

 ヨーキッサダーの公開練習の映像は見た?

「蹴りは相当重いなと思いました。あと体も頑丈な感じがしました」

 一筋縄ではいかないという思いが強くなった?

「ラジャのチャンピオンとやるという段階でそれは覚悟していたし、そういう並大抵の選手ではないということは分かっていたので、練習を見たからどうということはないですね」

 試合の映像を見るとザ・ムエタイという感じの試合をしており、初めてのK-1ルールでどういうファイトをするのか未知数な気がする。

「首相撲が多い試合ですよね。でも別の試合の映像で蹴りやパンチを打っているところを見たんですが、ラジャのチャンピオンというのは蹴りもパンチも全部できて、プラスムエタイの技術があってなれるものなので、蹴りやパンチは当然警戒しています。ヨーキッサダー選手はヒジが強いんですが、ヒジが強い選手はパンチも強い。打ち方が一緒で当てるところが違うだけですから。なのでパンチはより警戒しています」

 試合が決まり今回もアメリカで練習をしてきた。

「いい練習ができました。ムエタイのチャンピオンにムエタイの練習をして挑んだところで、ムエタイの勝負になったら負けちゃうと思うので、今回はMMA、空手、他のいろいろなキックボクシングのジムにも行って、他の格闘技でムエタイに有効な技はないかといろいろ探ってきました。各ジムで“こういう選手と戦うんだけど、なにか対策になるようなものはないか?”といった感じでいって、そこでいろいろな技術を教えてもらったので、今はその中で自分で使える技を自分の中に落とし込んでいるところです」

 基本的には対戦相手に合わせた練習はしないという。やはり練習の基本は今あるものの底上げがメーンとなる?
「底上げプラス、いろいろな技術や技を増やすということはしてきました。引き出しを増やせば何かあった時に対応できるので」

 所属するKRESTに第2代スーパー・ライト級王者の野杁正明選手が移籍した。一緒に練習することは? なにか刺激を受けることは?

「野杁選手の技術は世界トップクラスなので吸収できることしかないです。“こういう打ち方もあるんだ”といった感じ。ジムには卜部功也選手という世界トップクラスの技術を持っている選手がいるんですが、サウスポーなので真似のできる技術はオーソドックスに比べて少なかったんです。でも野杁選手はオーソドックススタイルなので吸収しやすいですね。勉強になります。でもまだ移籍が発表になったころからしか一緒に練習はしていないので、これからまだまだたくさんのことが吸収できそうです」

 野杁にとっても武尊らKRESTの選手から得るものは大きそう。

「あると思います。これまでの練習環境とは全然違うと思うので、野杁選手がKRESTで練習したらどれだけ強くなるんだろうと思います」

 改めて2019年の目標は?

「全試合勝つことはもちろんなんですが、プラス勝ち方にこだわりたい。そして多くの人にK-1を見てもらうための活動というのも僕がやるべきことだと思うので、そういうこともやっていきたいです」

 昨年12月の大阪大会では試合後に今後の対戦相手についての武尊自身の現在の考えと実現に向けて関係各所に自ら働きかけていたことを明かした。こちらについては、これまでやってきた行動は続けるが、後は相手の返事待ちということでいい?

「そうですね。でもこれは相手の選手だけの問題ではないと思うんです。もし相手の選手が“よしやろう”と言ってくれてもそのまま実現するような簡単なことではないので、僕ら選手はまずは意思を表現し続けていく。ただ“やろうぜ” と言うだけでは実現できてこなかったことで、それではダメだということは僕は分かっています。可能性があればそれに向けて僕自身で動いていくし、これからも率先してやっていこうと思っています」

 目の前の試合に集中したいところで大変なのでは?

「いえ(笑)。注目していただけるのはありがたいです」

 表彰式後の魔裟斗氏らとの囲み会見では最近は人前に出ることが増えたことから普段から節制しており、食生活はもちろん「お酒もやめました」と話していた武尊。詳しく聞くと「Krushのチャンピオンになった時からお酒はやめました」と3年ほど前から遊ぶことも減り、ストイックな生活になっていることを明かした。これはK-1のため、そしてファンに最高の試合を見せるためのこと。そしてさまざまなことをファン目線で考える武尊の考え方の基本は“できないことをできるように言ってしまって後からファンをがっかりさせることはしたくない。それはファンを裏切ることになる”というもの。そんなことも頭の中に入れながら、2019年の武尊の活躍に注目していきたい。 
 (TOKYO HEADLINE・本吉英人)